チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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160 彼はようやく…

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「ところで大公の事なんて呼んだらいいかな?王様って言いたくないんだよね、なんかイメージ悪くなっちゃって」

「聖王国の王であらせられれば、王位についたものは全て何代目の聖王と呼ばれるのが一般的ですが…」
「聖などと…仰々しい。皆にはヴェッティ王と呼ばせておる」

「んー、じゃぁ上様とか…」

「なんだいそれは?」
「なんですかそれは?」

「ダメか…、じゃぁ大王様」

「アッシュよ…お前は大公のままで良い…」


退位して王子に座を譲ったら大御所様って呼ぼう。絶対呼ぼう、ぴったりだ。




そうして僕たちは姫部屋へ。
ユーリから言い出すとは意外だったけど柘榴の在庫を確認したいとは…良からぬ含みを感じる。


「お姫様こんにちわ。ヘンリックさんもこんにちわ。体調はどうですか?」

「お陰様で大丈夫ですわ。時折強い激痛が全身を襲いますけどあの果実は全てを癒してくれますの。」

「ねぇお姫様。僕はね、本当は姫と王子にもリッターホルムに来てもらいたい。呪いの解除が終わるまで、教授も子爵も、大公だってホントは目の届くところに居てほしいんだ。でも僕が不安だから、そんな理由でみんなを縛っていいわけないよね。それに大公はもう王様になっちゃったし…王様が王都を離れるわけにはいかないしね…」

「ミーミル様…、そのお気持ちとても嬉しゅうございます。ですがわたくしここを離れたりは致しませんわ。実はヴェッティ王よりその提案はありましたの…。ですが兄ケネスはここに残ると即答しました」

「王子が…?」

「自分は次代の王である、王の居場所は王城だ。そうおっしゃられて…。父王により疲弊したこの国を元気にするのが自分の役目だ、そうも言っておりましたわね。だからって提案なさるのは娯楽施設ばかりで…ふふ、頼りない王太子ですこと。ですがわたくし、今以上にもっと学んでそんな兄を支えていきたい、そう考えておりますの。」

「私もその場で聞いたから間違いないよ。すぐに脱走するのが玉に瑕だがその時は真剣な顔で話しておられた。」

「ケネスがそんなこと…、ちょっと見直した。ノールさんもきっと喜ぶよ…」

「ミーミル様、あなた様の解呪このシグリット信じておりましてよ。きっとわたくしに未来を下さると信じております。」

「責任重大だ!でも大丈夫。僕はプレッシャーに強い男だからね!言ったでしょ、姫の乗った船は泥船じゃなく豪華客船だって」


「豪華客船とは何だい?」


しまった。この国には海が無かった。船と言えば川に浮かべる小さな手漕ぎ船しか馴染みがない…、豪華客船どころか帆船だって知ってるんだか知らないんだか、う~んと、え~と、そうだ!


「南北を隔てる川、あの川をお客さんや荷物を乗せて自在に遊覧する大きな船のことだよ。手漕ぎじゃなくて風力を利用して行ったり来たりするんだ。」

「リッターホルムの新事業かい?客船…興味深い…」

「あとは企業秘密、内緒だよ。ねぇユーリ」
「え?あ、ああ。秘匿事項だ。…?」


し、新事業が出来てしまった…。だがこれも渡りに船だ。船だけに。何しろ僕の頭の中では『木造帆走船デジタル資料』が今か今かとその出番を待っている。
…リッターホルムの開拓による木材の使い道が出来てしまった。けどこれは大きな事業になる…。せっかく王都に居るんだ。何なら大公かコーネイン侯爵辺りも巻き込んで…一攫千金のチャーンス。






そんな皮算用にウハウハしながらあっという間に3日は過ぎた。

コーネイン侯爵は新事業にノリノリだったしユングリング侯爵はバナナの生産地に名乗りを上げた。耳が早い…


「帆船の件は私が主導しよう。君にこれ以上負担はかけられない。計画の概要を頼む」

「コーネイン侯爵はこの案件ヘンリックさんに任せるんだって。あと半年で学術院も卒業だからって…、だからね、これは新世代の幕開けになるんだよ」

「そう、新世代…。必ず迎えねばならない」
「ユーリ…」




そしてユーリは来週ついに元老院会議へ初参加となる。半数は入れ替わった新興貴族でユーリに対し決して優しくはないのだが…

「この程度立ち回れなければ到底魔女とは遣り合えない」

そこにいるのはきりっとした公爵閣下。愁いを帯びなくてもユーリはカッコいい…







「アッシュ君、父上にくれぐれも気を付けるよう…」
「分かってる。よく言っておくから」


今日ノールさんはヘンリックさんと一緒に学術院に出張だ。
カレッジの意義をレクチャーしたりカレッジの働き手をリクルートしたり、ついでに工学の教授に帆船の簡易設計図も見せたりして…。ノールさんだけでは心もとないけどヘンリックさんが要るなら100人力だ。

子爵のことが気掛りみたいだけどショーグレン家ばかり狙われるってこと無いと思うんだよねぇ…。確率論だよ?


そしてやってきた聖神殿。ゴクリ…その剣を目の前にしてやや緊張が隠せない。





「ミーミルよ、これが共鳴したと言う呪われた剣、〝森の住人の剣”でございます。」
「そしてこっちが〝敵を貫く剣”だ。このどちらとも共鳴しておる。うむ…」


森の住人の剣?何やら遠回しに言ってるけど…これはアレだよね?攫われて監禁されて無理やり鍛刀させられたドワーフが怒りのあまり罠を仕込んだって言う…因果応報的な神話の剣。

でもこの敵を砕く剣ってのは知らないなぁ…ああ!もしかして、これあれかっ!指輪の…

WEB小説の常連投稿者「名前を言ってはいけないあの人」は、かなりクレイジーな中つ国に住民票を置くホ〇ワーツの学生だった。
きっとこの設定は彼の仕業だ。

とはいえ元ネタのままってことは無いな多分…ふぅん…それにしても魔剣か…


「どうだアッシュ、何か知っておるか。お前は妙な事に詳しいからな」

「妙って…まぁね。確かにこの剣も知らないとは言わないよ。これはドヴェルグが怒りに任せて作ったっていう魔剣で…」

「ドヴェルグ…とな?」
「ああ、ドワーフの昔の呼び名…的な?」

「同じ刀工がうったと聞いておりますが、ドワーフが作った剣だったのですかな。なれば教授の剣も同じドワーフによるものでしょうか?」

「同じ?ああ、確かに〝ダインの剣”もドワーフ…が…、ドワーフ?」


「「「まさか ⁉」」」

「ど、どうされたお三方…ミーミルよ、何が…」


北の賢者を殺めたうえに武器の材料にすべく連れ帰ったという悪いドワーフ…もしや…諸悪の根源っ…!


「し、子爵…、この二本の剣からは何が見える?」
「む…、おお!これらの剣もまた教授の元に行きたがっておりますな…」


魔剣に好かれる質なのか教授は…。そんな訳あるかっ!


「この二本は教授でなくダインの元に行きたがってるんだよ。つまりこの三本は…」

「ドワーフに殺められた北の賢者が宿っておる。そうだなアッシュ?」
「そ、素材がエグい…」


教授は大司教様の許可を得てその剣を三本並べて見せた。するとその剣は青白く発光し、剣先はまるで涙のようにきらりと光った。


「教授、剣が喜んでおります…ようやく会えた、そう言って泣いております…」

「大司教様…、これを僕に、それから教授に見せてくれてありがとう。」
「ミーミルの望みは私の望みなれば…」

「なら…現在進行形で渇望してる僕の望みもわかるかなぁ?」チラリ

「………その剣は教授に差し上げましょうぞ…」

「やったぁ!大司教様最高ー!」
「おおおっ!なんと光栄な!」




ユーリ以外にも効くとは思わなかったな…




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