チートな転生農家の息子は悪の公爵を溺愛する

kozzy

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118 彼の手にしたもの…

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全てが整えられた清潔な部屋。ムーディーなキャンドルも消え去っている…。ヴェストさんが片付けてくれたのか…。ああ、もう申し訳なさすぎて、なんて言ったらいいものか…。

「ほらアッシュ、ここにきて少し休んで。今日は大変だったろう?」
「ありがとユーリ…」


一体今日だれが一番僕の気持ちを大変にしたのか、分かっているのかいないのか、何事も無かったかのように僕を気遣ってみせるユーリ。
そうは言ってもこうして、ユーリに背中を預けてのんびりするのは悪くない。
なんだかんだで前世の願いが二つ叶った。
合コンに参加する事と恋人を作って大人の階段上る事。恋人どころが一足飛びに夫夫になってしまったが…。

しかしさっきまでの妖しさはどこへやら、非常にまったりした雰囲気…、ああ、ヴェストさんは換気もしていってくれたのか。甘い匂いはもうしない。
あの甘い匂い、ユーリのスキル…。

とんでもないスキルだ。あの甘い匂いに包まれて僕はずっと夢心地だった。現実感の無い、頭はポワポワしてるのに体中に血が巡った心臓はドキドキして、地に足のつかない、まるでディズ〇ーランドにいるような不思議な時間を感じてた。…ディズ〇ー行ったこと無いけど…多分そう。だってあそこは夢の国。


「そうとも、アッシュが言うよう何でも経験値は必要だ。何度かすればきっと持続力も…、ゴホン、私たちにはこれから共に過ごす多くの時間がある。必要なら毎日毎晩…、むしろこれは二人で積み重ねていくべき課題!」


鼻息荒く何言ってんだか…。毎日毎晩?はぁぁ?こっちの身にもなってほしいよ。まだズキズキ痛いっていうのに、まったくもう。勉強するならもっと痛く無いよう、なにかこう…他に方法なかったの?プンプンって、…あれ、勉強?


「ねぇユーリ。そう言えば気になったんだけど勉強って何?いつの間にこんなエッチな勉強したの?ノールさんじゃないよね。ノールさんがこんなこと…教えるはずがない。家にそんな心当たり…」


そうだとも!うちのメンバーときたら顔は悪くないのに、中身が残念過ぎてどう考えてもそっち方面ダメそうな、いいや、それ以前にそういう事に興味の薄そうなのしか居ない!一人を除いて。でもその一人はまだチェリー…


「それは…」
「…あれを教えたのは誰!? ねぇ!そこんとこはっきりさせようか!」

「あ、いや…」

「ユーリっ!ま、まさかその人と…こっ、このっ、このユーリの浮気者っ!」

「ヘンリックと浮気などするものか!違うこれは口頭で、あっ」
「ヘンリックさん…、あー!だから最近やたらベッタリ…、なっ!じゃぁヘンリックさんは全部知ってて…」

「…」


何もかも知られている…。今夜何をどうしたか…○○ピー○○ピーして○○ピーしたこともっ!あ、ああ…最悪だ…。
はっ!あの憐れみを含んだ表情はそういう意味かっ!

一度ユーリには守秘義務についてコンコンと言い聞かせねばなるまい!!





とは言え、済んでしまったことをいつまでも引きずるのは男としてどうかと思う。
まぁべつに現場見られたわけでもあるまいし…、見られ…

うん?もしや…へんなフラグ踏んでたりしないよね?

ザクロ!ナッツが持ってきたザクロっ!隠しカメラとか仕込んであったりしないよね…まさかね。
いやいや、この世界にカメラとかまだないから。ないない。僕ってば考えすぎ…。それもこれも今日一日の衝撃が凄すぎて判断力が…

…でも一応確認だけ…

ん?あれ?…黄色い柘榴?いいや!あれは…黄色なんてもんじゃない。こ、ここ、これは…!

まさしく黄金色こがねいろ!!


「アッシュ、もっとこっちにお」
「ちょっとどいて!ユーリ邪魔だってば!見えないっ!」

「邪魔…」
「あ、うそうそ、ごめん。そうじゃなくて。柘榴がね。黄金色に輝いててね。この間と全然違ってね…。ほ、ほら見て凄いでしょ?でもなんで?」

「君が言ったんじゃないか。私の〝熟成”、君のために磨いておけって。それにさっきだって君を私で一杯にしてって、そう言ったのも君だよ?どう?随分良さそうだったよね?「良く出来ました」って言ってくれたけど、どうかな?スキルは合格かい?」
「わーわーわー!何言ってんのっ!そ、その件は後で。後で話し合おう。それより…」


そ、そりゃ、良いか痛いかって言ったら僅差で良かったけど今はそれどころじゃ…

黄金色に輝く柘榴…。こ、これが完成形の黄金の林檎…?ユーリのエッチなスキルで熟成した柘榴…。中は…、

パカリ…

くらっとするくらい甘い完熟の匂い…。この間と違う、妖しく輝く小さな実…。

「どれどれ、一粒…」パクリ。

ふぉぉぉ!痛みが引いた!何の痛みって?聞かないでよ、そんなの。


「か、完成した…。王家の呪いの対処薬…」

「ふぅん…。だが私と君の子供をみすみす渡すのは気が進まないな。これを寄越せというならそれ相応の対価が必要だ。」
「子供って…。果物相手になに言ってんの?ユーリ頭大丈夫?だいぶんウェディングハイが悪化して…それか初夜のショックで…」

「だってそうだろう?あの種は発芽の出来ない死んだ種だった。それを発芽させたのは君のスキルで、その赤い実を熟させたのは最大まで高めた私のスキルだ。二人の強い想いが無ければこれはここに存在し得なかった。だから二人の子供だと言ったんだ」




目から鱗とはこのことだ。
そうだ。この柘榴は〝種子創造”が無ければけっして芽吹くことは出来無かった。そのうえ、このユーリの〝熟成”が無ければ、永遠にただの赤い柘榴のままだった。

僕とユーリの想いが交差しなければ決して手に入らなかった黄金の林檎…。夢の国で成熟した、僕たち以外、誰も見つけられない秘密の果実。そうか…、そうだったのか…。これは二人の…愛の結晶!


「しょ、初夜で子供が出来た…」


疲れすぎて非常に頭の悪い発言をしている気がする…。とにかく…、今日はもう頭が回らない…。
こんなエッチな実が姫の薬かと思うと甚だ申し訳なさを感じるが、…こればかりはあきらめてもらうしかない。


「ユーリ、寝よう。もう寝たい。達成感はあるけど…もう明日にしよ?話も何もかも、もう終わり」
「そうだね。今日はさすがに疲れた、…アッシュ?」
「ぐー…すー…」



「ふふ、子供みたいだ。お休みアッシュ、いや、お休み私の伴侶…私のベターハーフ…」







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