君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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最終章「久遠」

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「それに先輩は部長だろうとなかろうと、権力を振りかざすような人じゃないですよね?」

 神近くんはそう言いうなり、僕をちらりと上目遣いで見つめてくる。

「えっ……うん……まぁ……」

 そんな風に言われてしまうと、さすがに「これからは僕の言うことを聞いてもらうからね」だなんて言えなくなってしまう。

 言葉を濁す僕に「ですよね。じゃあ、早くその山のピースつなげてください」と言って神近くんが、僕に指示を出す。何かが可怪しい。

「なんだかうまい具合に、誘導されてる気がするんだけど……」

 恐る恐る僕が訴えかけると、神近くんがやや不機嫌そうに眉を顰める。

「いいですか。先輩は入部したばかりで、パズルのパの字も分かっていないじゃないですか。
それなのに的確な指示が出せると言うんですか? それに先輩は俺に何度も迷惑をかけているじゃないですか。そのことはなかったことになっているんですか?」

 最もな意見に、僕はぐうの音も出ない。

「それに先輩、知ってますか? この学校、結構出るんですよ」

「……出るって何が?」

 何となく答えは分かっていても、僕は聞かずにはいられなかった。

「この棟の一階の男子トイレ。あそこの窓から男の人が――」

「わー、もうわかったから!」

 僕は思わず耳を塞ぐ。あまり使うことのないトイレでも、想像しただけで怖い。それに、そんな怖い場所が身近に潜んでいるなんて、考えたくもないし知りたくもなかった。

「先輩、安心してください。これから先、何度取り憑かれようとも俺が祓ってあげますから」

 パズルを繋げている僕の微かに震える指先を、神近くんの手のひらでギュッと包まれた。神近くんの少し照れたようなはにかみに、僕はさっきまでの疑問や怒りが霧散してしまう。

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