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最終章「久遠」
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しおりを挟む二学期が始まると、怒涛の日々がやっと落ち着きを取り戻してきた。
あの事件からしばらくの間、家族の誰しもがどこかギクシャクした空気が漂っていた。それでも二学期が始まれば、いつも通りの生活が少しずつ戻り始めてくる。
来年から本格的な受験が始まる僕は、修学旅行という学校生活の一大イベントに胸を弾ませながらも、将来何をしたいのか全く思いつかずにいた。
「神近くん。僕って、何に向いてると思う?」
放課後の部室で進路の紙を目の前にして、僕は頭を抱えていた。
「そんなの知りませんよ。自分のことなんですから、自分で考えてください」
パズルに視線を落とし、気怠げに神近くんが言い放つ。
「そんなことより、もうすぐ部活動予算折衝会があるので先輩出てください」
大事な将来の進路なのに、「そんなこと」で済ませてしまう神近くんにムッとしつつ「なんで僕が」と口を尖らせる。
「なんでって、鐘島先輩に取り入れることが出来るのが、先輩の唯一の取り柄じゃないですか」
「部長は神近くんでしょ!やだよー」
僕は泰明と友達の話を思い出し、すっかり怖気づいていた。部活動予算折衝会は、今後の部の予算が決まる大事な会だった。部にとっては死活問題となるので皆必死だ。
死にものぐるいの部員たちの訴え虚しく、数名の生徒会役員 に「こんなに道具は必要ないだろ」「部員に対して部費が多すぎる」「実績もないくせに贅沢だ」とありとあらゆる言葉で尋問されるという噂があった。
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