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第七章「虚像」
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しおりを挟む「そ、そんなことないですよ! すごく楽しかったです」
驚いてそう返すと、お兄さんはなら良かったと微笑んだ。
「あの女の子はね、僕の元彼女でもあるんだ」
「えっ……」
僕はあまりの衝撃に絶句してしまう。そんな僕の様子に、お兄さんも困ったような笑みに変わった。
「智代があんな感じだからさ、僕がいろいろと相談に乗ってたんだ。そしたら付き合う事になってね」
「奪ったって……ことですか……」
僕はかすれた声で呟くと、お兄さんは小さく笑う。
「人聞きが悪いなぁ。別に奪ったわけじゃないんだ。付き合うってことは、お互いに気持ちがないと無理な事だろう。たとえ僕が一方的に迫ったのだとしても、彼女がそれを拒めばいい話なんだからね」
「でも……神近くんはショックだったんじゃないんですか?」
たとえ彼女が神近くんではなく、お兄さんを選んだのだとしても、神近くんの気持ちをもっと考えるべきなんじゃないかと思ってしまう。
「智代はそうなんだと言うだけで、怒りもしなければ泣きもしなかったよ。もともと彼女のことなんて、好きじゃないかったのかもしれないね。もしかすると彼女もそれが分かっていたから、僕の方に来たのかもしれない」
お兄さんの言うことを、僕はどこまで信じたらいいのか分からなくなっていた。少なくとも、あの女の子が神近くんの元カノで、お兄さんの元カノでもあることは間違いない。
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