君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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第六章「帰省」

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「……ごめん。何でもない」

 もう一度お礼を言った僕に、神近くんが深い溜息を吐き出した。

「しょうがないですね」

 何がしょうがないのかと訝しむ僕に、神近くんは襖から手を離すとなぜか押し入れを開け始める。

「何するの?」

「何って、一人で寝れないから俺を引き止めたんじゃないんですか」

 たじろぐ僕を尻目に、神近くんは並べるように布団を敷いていく。

「……良いの?」

「怖いんでしょ? 先輩の唯一の取り柄は素直なところなんですから、泣きついてくれば良いじゃないですか」

 言い方に少し語弊があるけど、あながち間違いではなく僕は黙り込む。

「さすがに布団一枚に、二人で寝てるの見られたら親も変に思いますから」

 そう言ってサッサと神近くんは敷いた布団に横になってしまう。

「神近くん……いろいろとありがとう」

 僕も布団に横になり、薄い掛け布団を首元まで引き上げる。

「早く寝てください。明日も早いんですから」

 神近くんの言葉に素直に頷く。神近くんがやっぱり優しい。嬉しさから掛け布団から手を出して、神近くんの布団に手を伸ばす。

 手のひらを這わせ、神近くんの手にそっと触れる。眠いせいなのか、神近くんの手は少し熱い。ぎゅっと握ると、神近くんは何も言わずに握り返してくれたのだった。

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