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第六章「帰省」
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しおりを挟む僕は縮こまって、神近くんの様子を伺う。神近くんはキョロキョロと周囲を見渡し、障子を開いていく。さっきよりも明るい月明かりが部屋の差し込み、影の正体であろう大きな木が風によって揺れていた。
「この障子に映っていたんですよね?」
首だけ振り返った神近くんの眠そうな表情が、月明かりによって照らし出される。
「……うん。でも、気のせいかもしれない」
僕は遠慮がちに申し出た。それなのに神近くんは窓ガラスを開けると、首を出して周囲を見渡していく。そこまでして貰ったところで何も無かったら、神近くんに悪い気がしてしまう。
「大丈夫そうですね」
神近くんは怒っている風でもなく、淡々とそう言うと窓ガラスと障子を閉めていく。
「ごめんね。こんな事で起こしちゃって……」
「別にいいです」
そう言い残して神近くんは欠伸を噛み殺しつつ、部屋を出ようと襖に手をかけた。
「か、神近くん!」
僕は思わず神近くんを引き止める。大丈夫だと言われても、一人で寝るのはさすがに怖い。
「なんですか?」
「あのさーー」
そこまで切り出して僕はハッとして、口を噤む。さすがにこれ以上の我儘を言うのは、許されないような気がしたのだ。
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