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第六章「帰省」
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しおりを挟む寝苦しさから寝返りを打つと、窓の外に通じる障子が目に入る。ぼんやりとした月明かりが青白く障子を照らし、木々が左右に揺れているよな陰を落としていた。部屋がかすかに明るいのも、月が綺麗に出ているからかもしれない。
遠くの方から聞こえてくる夏の虫の声が、静まり返っている部屋の中で響き渡っている。自宅の自室だと、たまに遠くから聞こえてくる車の走り去る音ぐらいだ。
障子に投げられた揺れる影をぼんやりと見つめていると、なんだかその影が心なしか大きくなっていくように感じられた。途端に心臓がバクバクと打ち鳴らし、やばいどうしようと頭が真っ白になる。
見間違いなどではない。やっぱり影がどんどん大きくなっていく。怖い、怖すぎる。僕は震える体を何とか立ち上がらせると、廊下へと繋がる襖を開く。
万が一、見間違いで大事にするのは忍びなくて、僕は障子の方を見ないようにして襖を閉め、その足で神近くんの部屋に向かう。暗い廊下を音を立てないように慎重に進み、何
とか一番端の部屋に辿り着くと静かに襖を開く。
中は僕の部屋よりは少し暗かったが、間接照明のお陰で神近くんの寝姿を見つけることが出来た。そろそろと近寄り、「神近くん」と言って小声で呼びかける。
なかなか起きないので、今度は体を揺すって声をかけると「……なんですか?」と不機嫌に体を起こしていく。
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