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第一章「代償」
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しおりを挟む神近くんと別れた僕たちは、少しだけ日の落ちてきた校庭をトボトボと歩いていく。
「何でそんなに不機嫌なの?」
さっきから口を噤んだままの泰明に、僕はわけも分からず後ろから追いかける。いつもなら僕のペースで歩みを合わせてくれるはずが、今は僕の三歩前にいた。
「……別に不機嫌じゃない」
やっと歩みを止めて振り返った泰明は、言葉とは裏腹に明らかに不機嫌さを滲ませている。
「不機嫌じゃん。ああ、そっか、ごめん……巻き込んじゃって……」
僕は泰明の隣に並ぶと、伺うように背の高い泰明を見上げる。
神近くんの挑発的な態度は、確かに見るに堪えないものではあった。泰明が怒るのは無理はない。苦手な人間と長時間一緒だったのだから、不機嫌になっても仕方がないことだろう。それを僕のためにと、我慢して付き合ってくれたのだ。
「それは別に構わない。元はといえば俺が言い出した事なんだから」
泰明の表情が少しだけ和らぎ、今度は僕の歩調に合わせるように歩き出した。
「お礼に奢らせてよ。昨日、お小遣い貰ったから財布が潤ってるんだよね」
嘘だったがこうでも言わないと、泰明は気を使って断るだろう。それでなくとも、今も遠慮がちに「いや……いいから」と言って断ろうとしてきた。
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