君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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第一章「代償」

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「鐘島先輩。異論はありますか?」

 神近くんは了承を取るかのように、泰明に視線を向ける。泰明は不服そうな顔で僕を見つめてくるも、僕が頷くと「佐渡が良いなら」と渋々と言った様子で呟いた。

「じゃあ、ここからは鐘島先輩は手出ししないでください。まじで危ないですから」

 そう言いつつ、神近くんは四隅に置かれている盛り塩を回収し始める。

 何故わざわざそんなことをするのか僕には分からない。そんなことより僕は緊張のあまり、思わずへたり込んでしまう。

「大丈夫か?」

 泰明が近寄ろうとするのを僕の前にしゃがみ込んだ神近くんが、手を出して牽制する。

「先輩。こっち見てください」

 神近くんの声に、僕は顔を上げて神近くんを見つめる。茶色く、綺麗な瞳には青ざめている僕の情けない顔が映し出されていた。

「自分をしっかり持ってくださいね」

 そう言って僕を抱き寄せると、背中を強く叩かれる。その力強さに僕は思わず、うめき声を漏らす。

「ゆっくり息を吐いてください」

 言われたとおり、僕は息を吐き出していく。途端に体が軽くなり、血の気が戻るように体が熱くなる。

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