双子の転生先は双子でした

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Chapter 2

66*人違い

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この日、彼はアレキサンダー殿下から頼まれた書類を抱え財務部へと向かっていた。
自他とも認める殿下の腹心として、熱い信頼を得ている。

そんな彼が、たまたま目にした光景は、すぐさまアレキサンダー殿下へと伝えられた。
いや、自ら速攻で伝えに行ったのだ。
頼まれたはずの書類を、出さないままに…


いつも通り、書類を片手に殿下の執務室を出て長い通路を歩いていた。
この城は、入り組んだ仕組みになっている為、正直分かりづらい。
目的地である、財務部へ行くまでにも何度も曲がる必要がでてくる。
何個めかの、曲がり角を曲がった際にその声は聞こえてきた。

『私と、結婚…さい!…幸せにします!』

途切れ途切れではあったが、これは求婚の言葉ではないだろうか。
この王城内で、しかも大勢が移動する通路で、こんな熱烈な求婚をしたのはいったい!?そして、その相手は誰だ!?
湧き上がる好奇心に従い、その声の方へと歩いていった。
そして、求婚している相手に驚き、求婚されていた相手を見てさらに驚いた。

花束を掲げ膝をつく彼は、第七近衛部隊のハリス・ルタリオス。
ルタリオス伯爵家の次男と言えば、まだ少年の様な甘い顔立ちの優男に見えるのだが、剣術の腕前が抜群に良く騎士団とのトーナメント戦では常に上位に名を連ねる強者だった。

そして、そのギャップに心惹かれた令嬢たちは数知れず、連日熱い視線が彼へと向けられている。

そんな彼が、こんな公の場で求婚した相手。

その相手が、まさか殿下が心を許しているアシュリー嬢だなんて…

殿下になんとお伝えすればいいのだろうか。

とりあえず、一部始終を見たのち財務部の事など綺麗サッパリ忘れて、急いで殿下の執務室へと向かった。



アレキサンダーは、肩で息をしながら慌てた様子で戻ってきた、己の腹心である部下を見て何か問題が起きたのではないかと眉をひそめた。

「殿下~っ!たっ、大変ですっ!」

普段、冷静沈着な彼らしくない様子に少しばかり不安がよぎる。

「何があった?」

それが!と、話し始めた彼の言葉に、アレキサンダーの頭の中は真っ白になった。

(結婚だと…!?)

彼は、とても簡潔に話をしていた。

 『アシュリー嬢がハリス・ルタリオスに求婚されました!』と。

もちろん、これが見たままの事実であり、これで間違い無いのだが…

この世界では、基本的に"求婚"する貴族はほぼいない。何故なら、殆ど親の勧めによる"婚約"となるからだ。
その為、平民の間で盛んな求婚を貴族が行うなど、イレギュラーすぎるのだ。
そして、その場合はほぼ成功するのだから、報告を受けたアレキサンダーの顔色が変わるのも無理はないだろう。

しかし、まだ話は終わっていない。
彼は、肝心なところをまだ伝えていなかったからだ。

ルタリオスが、で求婚してしまった事を…。


そう、ハリス・ルタリオスが以前あの場で目が合った相手とは、アシュリーではなくナタリーの事だったのだ。
アシュリーが、身に覚えがあったのはあの時あの場で、ナタリーが驚いて話してきたからだった。

『たまたま目があったからペコッてしただけなんだけど…顔真っ赤だった』

そう、ハリスとは初めて登城したあの時、目が合った彼のことだった。

その為、先程の求婚された際に、しっかりと間違いだとは伝えていたのだ。

『それは、私ではなくナタリーの方ですね』と。

すると彼は、みるみる顔を真っ赤にして何度も謝罪の言葉を繰り返していた為、アシュリーも『大丈夫ですよ』と、謝罪を受け入れていた。
間違えての求婚は、彼のプライドを傷つけてしまうのではと危惧したのだが、彼は本当に優しい人らしく、自分のことよりアシュリーを案じて謝り続けていた。


と!その一連の話を、アレキサンダーにもしっかりと報告したはずなのだが…
目の前の殿下は、真剣な表情で何かを考えている様にも見えるが、どこかうわの空の様にもみえていた。普段側に支えている腹心の彼から見ても、もはや話の続きは記憶にすら残っていないだろう。
その証拠に、殿下はすぐ様、相手の素性をより細かく調べる様指示を出されたのだ。
腹心の彼は、その指示に素直に従った。

彼は、嬉しかったのだ。

アシュリーが、断っていたと報告しているにも関わらず、完全に思考をアシュリーへと傾けている殿下の様子に。

常々、もう伴侶など必要ない!と話していた殿下をここまで夢中にさせる相手がいることに。

そんな、主人思いの部下たちは、アレキサンダーの様子をみて動いたのだった。
殿下の腹心をはじめとした従者達は、確信していた。
殿下は"恋をしている"のだと…
そして、その様子を喜んだ従者達は、兄である陛下にまで報告をしにいってしまった。

もちろん、弟大好きな陛下は報告を聞くと、なんとか婚姻にまで持ち込ませようと動き出す。

それがまた、大きな火種をうむとも知らずに…

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