70 / 105
Chapter 2
65*一目惚れ
しおりを挟む
「私と、結婚してください!」
王城の通路で、突然熱烈な求婚を受けることになるなんて、誰が想像しただろうか。
しかも、全く知らない男に。
*
ツッコミどころ満載!
とでも言える程、それは突然だった。
前回と同様、姉と共に兄の執務室へと向かっていた時だった。
忘れているかもしれないが、双子は幼い頃の経験から辺境伯家の騎士団に入れられ鍛えられているのだ。その為、己へ向けられた敵意や殺気などの危機察知能力は、特に鍛えさせられていた。
しかも、前世での視野の広さも加わり、他者からの視線には特に敏感にわかるようになっていた。
そんなアシュリーが、気づかないわけがない。
一定の距離を保ちつつ、城内に入って早々舐め回すような視線をおくり着いてくる相手を。
エリザベスと会話をしながら、少しだけ視線をずらせば、ほんのりと頬を赤らめた騎士が柱の影からこちらを覗いていた。
初めは、エリザベスのストーカーかと思い警戒したのだが、途中からどうもあの視線の先にいるのは自分なのだと気がついた。
とりあえず、殺気は感じられなかった為、様子をみることにしたのだが…
いよいよ、兄の執務室まで目と鼻の先といったところで、後ろから声をかけられたのだ。
それが、冒頭の求婚である。
さっきまで、持っていなかった花束を抱えて、目の前で膝をつき、まるで映画のワンシーンのような…"The プロポーズ"をしてくれたのだ。
前世のSNSでよく見た、サプライズプロポーズ的なソレは、恋人や意中の人からであれば最高に嬉しいだろう。感動するだろう。驚きのあまり泣いてしまうかもしれない。
しかし!!!
全く知らない男性からであれば、どうだろうか?
もちろん、素直に嬉しい!と思う人もいるかもしれないし、お友達から始めましょう!と、いう人もいるかもしれない。
逆に、突然の求婚に驚きと僅かな恐怖心を感じる人もいるかもしれないし、戸惑い不安を感じる人もいるかもしれない。
因みに、アシュリーは限りなく後者だ。
むしろ、中身が由佳である以上、突然出てきて跪き「結婚してくれ」と言われた時点で…
『いや、お前誰だよ!』
と、突っ込まなかっただけ偉いと褒めてやりたい。
王城の、しかも近衛団長室前の通路でのやり取りの様子は、瞬く間に広がっていった。
そして、その場に居合わせた誰もが、固唾を飲んでその様子を見守っていた。
下手に返事をすると、後々面倒くさい事になるかもしれない。
アシュリーは、慎重に言葉を選ぶ必要があると考えていた。
そんな中、アシュリーを代弁するかの様に、凛とした声が響く。
「失礼ですが、貴方様のお名前をお聞きしてもよろしくて?」
まるで、アシュリーを守るかの様に姉のエリザベスが一歩前に出たのだ。
そして、相手に名を名乗るように促した。
エリザベスの鋭い視線の中、目の前の男はハッとしたように挨拶をはじめた。
「っ!大変失礼いたしましたっ!
私は、第七近衛部隊所属、ルタリオス伯爵家が次男ハリスと申します。
以前、アシュリー様とここで目が合った際に一目惚れしました!
夜会では、お兄様である団長と出席されており、現在婚約者はいないと伺っております。
是非、私と結婚して下さい!必ずや幸せにしてみせます!」
名を名乗り、そのまま熱の籠った告白を聞いたアシュリーは、少し考える様に首を傾げた。
アシュリーが気になったのは、彼の言った"一目惚れ"に関してだ。
彼のいう『ここで目が合った』とは、間違いなくこの場所だ。アシュリーも、なんとなくだが覚えがあった。
しかし、一つだけ確実に違うことがある。
それは、目が合った相手がアシュリーではないという事だった。
(もう、どこから突っ込めばいいのか分からない…)
アシュリーは、面倒くさそうにため息をついた。
王城の通路で、突然熱烈な求婚を受けることになるなんて、誰が想像しただろうか。
しかも、全く知らない男に。
*
ツッコミどころ満載!
とでも言える程、それは突然だった。
前回と同様、姉と共に兄の執務室へと向かっていた時だった。
忘れているかもしれないが、双子は幼い頃の経験から辺境伯家の騎士団に入れられ鍛えられているのだ。その為、己へ向けられた敵意や殺気などの危機察知能力は、特に鍛えさせられていた。
しかも、前世での視野の広さも加わり、他者からの視線には特に敏感にわかるようになっていた。
そんなアシュリーが、気づかないわけがない。
一定の距離を保ちつつ、城内に入って早々舐め回すような視線をおくり着いてくる相手を。
エリザベスと会話をしながら、少しだけ視線をずらせば、ほんのりと頬を赤らめた騎士が柱の影からこちらを覗いていた。
初めは、エリザベスのストーカーかと思い警戒したのだが、途中からどうもあの視線の先にいるのは自分なのだと気がついた。
とりあえず、殺気は感じられなかった為、様子をみることにしたのだが…
いよいよ、兄の執務室まで目と鼻の先といったところで、後ろから声をかけられたのだ。
それが、冒頭の求婚である。
さっきまで、持っていなかった花束を抱えて、目の前で膝をつき、まるで映画のワンシーンのような…"The プロポーズ"をしてくれたのだ。
前世のSNSでよく見た、サプライズプロポーズ的なソレは、恋人や意中の人からであれば最高に嬉しいだろう。感動するだろう。驚きのあまり泣いてしまうかもしれない。
しかし!!!
全く知らない男性からであれば、どうだろうか?
もちろん、素直に嬉しい!と思う人もいるかもしれないし、お友達から始めましょう!と、いう人もいるかもしれない。
逆に、突然の求婚に驚きと僅かな恐怖心を感じる人もいるかもしれないし、戸惑い不安を感じる人もいるかもしれない。
因みに、アシュリーは限りなく後者だ。
むしろ、中身が由佳である以上、突然出てきて跪き「結婚してくれ」と言われた時点で…
『いや、お前誰だよ!』
と、突っ込まなかっただけ偉いと褒めてやりたい。
王城の、しかも近衛団長室前の通路でのやり取りの様子は、瞬く間に広がっていった。
そして、その場に居合わせた誰もが、固唾を飲んでその様子を見守っていた。
下手に返事をすると、後々面倒くさい事になるかもしれない。
アシュリーは、慎重に言葉を選ぶ必要があると考えていた。
そんな中、アシュリーを代弁するかの様に、凛とした声が響く。
「失礼ですが、貴方様のお名前をお聞きしてもよろしくて?」
まるで、アシュリーを守るかの様に姉のエリザベスが一歩前に出たのだ。
そして、相手に名を名乗るように促した。
エリザベスの鋭い視線の中、目の前の男はハッとしたように挨拶をはじめた。
「っ!大変失礼いたしましたっ!
私は、第七近衛部隊所属、ルタリオス伯爵家が次男ハリスと申します。
以前、アシュリー様とここで目が合った際に一目惚れしました!
夜会では、お兄様である団長と出席されており、現在婚約者はいないと伺っております。
是非、私と結婚して下さい!必ずや幸せにしてみせます!」
名を名乗り、そのまま熱の籠った告白を聞いたアシュリーは、少し考える様に首を傾げた。
アシュリーが気になったのは、彼の言った"一目惚れ"に関してだ。
彼のいう『ここで目が合った』とは、間違いなくこの場所だ。アシュリーも、なんとなくだが覚えがあった。
しかし、一つだけ確実に違うことがある。
それは、目が合った相手がアシュリーではないという事だった。
(もう、どこから突っ込めばいいのか分からない…)
アシュリーは、面倒くさそうにため息をついた。
4
お気に入りに追加
325
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした
think
ファンタジー
ざっくり紹介
バトル!
いちゃいちゃラブコメ!
ちょっとむふふ!
真面目に紹介
召喚獣を繰り出し闘わせる闘技場が盛んな国。
そして召喚師を育てる学園に入学したカイ・グラン。
ある日念願の召喚の儀式をクラスですることになった。
皆が、高ランクの召喚獣を選択していくなか、カイの召喚から出て来たのは
リビングメイルだった。
薄汚れた女性用の鎧で、ランクもDという微妙なものだったので契約をせずに、聖霊界に戻そうとしたが
マモリタイ、コンドコソ、オネガイ
という言葉が聞こえた。
カイは迷ったが契約をする。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる