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妖編
5.客の隣で♡
しおりを挟む「うわ……」
「朱鷹様?」
げぇ、と朱鷹が嫌そうな顔で山を見る。嫋はなにを見ているのかわからず、不思議そうに首を傾げた。
「また来たのかよ」
「また? どなたですか?」
「藍狐っつう俺の知り合い。はぁ……たまに俺の食料を盗みに来るんだ、アイツ」
藍狐。その名を聞いた時、嫋の肩が強ばる。腰を触られ、流されるまま彼と口付けをしてしまったことを思い出す。
「嫋、娘子?」
「はっ……ぁ、はい……」
じわ、と口の中で唾液が溢れる。
「顔赤くなってるぞ、かわい……」
嫋の赤くなった頬を見て、朱鷹は思わず嫋の唇を奪う。嫋は朱鷹の肩に腕を回し、れろ、と互いの舌を絡めた。
朱鷹に口腔内を犯されながら、チラリと山の方を見る。
彼に触られた腰が、じくじくと甘く疼いていた。
「や、食べ物ない?」
「ねぇよ」
しばらくして、藍狐が朱鷹の屋敷へと姿を現した。やはり例の如く食料目当てだ。いつものやり取りをしたあと、今気づきましたという風を装って嫋に視線を向ける。
「こんにちは、嫋ちゃん」
「……!」
「はぁ?」
嫋はにこりと微笑んだが、朱鷹の横を離れることは無かった。
「なんだ? 会ったことあんの」
「うん。きみに嫁入りした日に初めて会って、数日前食糧盗みに来た時が2回目」
「ふぅん……」
ぎろり、と赤黒い目が嫋を睨みつける。やたらと山の方を気にしていた理由を察し、朱鷹はこの後しっかり話を聞かなければならないと舌打ちする。
「なに、何怒ってるの?」
ただ嫋と知り合いとしか言っていないよね、と藍狐は目を白黒させ、朱鷹の怒りの真意を探ろうとする。
「別に。お前にゃ関係ねぇよ」
「はぁ? まぁ、そりゃ夫婦だってのに勝手に会ったのは悪かったけどさぁ」
ブーブーと文句を垂れるが、それ以上は何も言わなかった。
多少ギスギスした空気になりながらも、少しずつ嫋は二人のことを聞き出すことが出来た。
古くからの知り合いで、二人とも種族ではみ出し者だった時、一緒に狩りをしてなんとか生きながらえていたのだとか。
とはいえ、妖であり動物でもある彼らには「友人」という概念はなく、あくまでお互いは顔を知っている他人、という訳だ。
「人間には、少し理解のしにくい関係性なのですね」
嫋は首を傾げ、茶を藍狐の前にだす。
「わ、ありがとうね嫋ちゃん。こいつ、ほんと1回も茶出したことないから嫌なっちゃうよ」
「ふふ、そうなのですね」
「家にある茶は嫋専用なんだよ!」
夜が更ける頃、藍狐が帰ろうとすると朱鷹が引き止める。曰く、「泊まっていけ」と。
珍しい誘いに藍狐がパチリと目を丸くする。
朱鷹の寝室の横の部屋を藍狐が使うことになり、たらふく晩飯と酒を腹に収めた藍狐はぐっすりと眠りにつく。
「おやすみなさいませ」
「嫋、そうじゃないよなぁ?」
「……ッ」
掛け布団を持った手は捕らえられ、そのまま朱鷹が腕を引っ張って引き寄せる。
どさり、と寝台の上に押し倒される。嫋は怯えた目で朱鷹を見上げた。嫋の艶やかな黒髪が寝台に広がり、こんな時にも朱鷹は見惚れてしまう。
「……あいつが気になるのか?」
「……」
「娘子?」
「と、隣でお休みになっていますから、今夜は……」
「チッ」
否定しない嫋に苛立ち、舌打ちする。嫋は露骨に怯え、朱鷹にぎゅっと抱きついた。
恐怖で頭が回らず、震えながら朱鷹に縋り付く。
「娘子、俺何回も言ったのにな。相公がいながらほかの雄にうつつを抜かすとはなぁ」
「ぁっ、ご、ごめんなさ……朱鷹様、嫋が奉仕致しますから……どうかお許しください」
やたら優しげな笑みを浮かべる朱鷹に怯え、嫋は泣き出しそうな顔でキスをした。
「んっ……お許しください……嫋は藍狐様になにも───」
「俺の前で他の雄を呼ぶな!」
「あっ!」
嫋の袍を脱がすことすら煩わしく、内衣と中衣を残したまま下着だけをずり下ろした。
「やっ、やめて、やぁ……んっ……ぁっ♡」
「喜んでる癖に……!」
香油を塗り、指を1本、2本と嫋の中に入れる。絡みつく肉襞を振り切って前立腺を叩くと、嫋は甘く鳴いて脚を開いた。
嫋を膝立ちにさせ、壁に押し付ける。冷たい壁が嫋のやわい頬を押し潰す。
両手を壁につかせ、逃げられないよう手首を朱鷹が握る。押し付けられた壁の先では、藍狐が寝ている。
ずぷ、ぬ゛ぷぷ……
「はふっ……くぅん……」
手は壁に押し付けられ動かせないので、嫋は唇を噛んで声を抑える。頬は赤く染まり、眉尻が垂れる。
膝を折った嫋の股の間に朱鷹が脚を入れるため、自然と嫋の股は媚びるようにズルズルと広がる。
(これ、無理やりされてるみたいで好きかも……♡)
ごちゅんっ♡
「ぁう゛っ!?」
ゆっくりと挿入されていたのに、半分を過ぎたら亀頭で奥を殴られた。嫋は腹の衝撃に肩を跳ねさせ、思わず一際大きい嬌声をあげる。
「やめっ♡ ぉ、ぉ゛っ♡ 聞こえてっ、ッ~♡ しまいま゛ずぅっ♡」
「聞かせりゃいいだろ……っ」
(起きちゃう……物みたいに扱われて喜んでるの、知られちゃう……♡)
「ああ……そうだ、もう面倒くせぇから隣の部屋で交尾するか」
「はひっ!?♡」
持ち上げられ、足が宙から離れる。朱鷹の歩くペースに合わせて嫋の結腸口が突かれ、嫋は力なく足を揺らす。
藍狐の部屋の扉を開けると、嫋は泣きながら朱鷹の胸に顔を隠した。
藍狐は幸い酒のおかげで起きることはなかったが、嫋は藍狐の美しい寝顔を前に、犬のような体勢で突かれ続けた。パンパンと肉のぶつかり合う音が部屋に響く。
とちゅッとちゅッとちゅッ♡
「なんでこいつが気になるんだよ、なぁ」
「かっ、かっこよかった、あっ、からぁっ♡」
「かっこよくて、ッ、気持ちよくしてくれる人だったら、股開いちゃうのか?」
バチンッッ♡
朱鷹が嫋の尻を叩く。柔い尻は赤く染まり、嫋はその刺激に思わずきゅぅッとナカを締め付ける。
「ぃ゛ッ♡ ぁひっ、そうですっ♡ ごめっ、ごめんなざい゛っ♡」
「俺の娘子は面食いの阿婆擦れだな、ぁッ」
謝罪を口にするたび被征服欲が満たされ、甘い痺れが嫋の脳と心を支配する。
にへら、と間抜けな笑みを浮かべながら、腹を殴る朱鷹の肉棒に揺さぶられていた。
ガクガクと震える腕を地面に放り、顔を床に押し付けられながら、嫋は涙でぐちゃぐちゃの顔で朱鷹に謝り続ける。
朱鷹は嫋の頭を撫でながら考える。もう何回も交尾したのだし、もう少し奥まで入れてみるのもいいかもしれない。
結腸口を突いてもその奥を強請らないということは、まだ嫋はその奥の快感を知らないのだろう。
やっと嫋を支配するための切り口を1つ見つけた朱鷹は、機嫌良く嫋のへその上をトントンと軽く叩いた。
翌日、藍狐は飲みすぎで痛む頭を抑えながら、朱鷹らのいる縁側へと向かう。
朱鷹には何も言われなかったが、嫋にはよそよそしく挨拶をされるだけだった。
キスをした時の追いすがるような視線からして、朱鷹が見ていない時にコンタクトを取ってくると思っていたから意外だ。
目すら合わせようとしない嫋に首を傾げながら、朱鷹の肩を肘でつつく。
「なに、機嫌いいじゃん」
「別にぃ。適当なもんやるから、さっさと帰れよ」
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