【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-

双葉 鳴

文字の大きさ
328 / 497
4章 お爺ちゃんと生配信

289.お爺ちゃんと特捜天空調査隊!①

しおりを挟む
「はいこんにちは。最近プロデュース業も頑張ってるアキカゼです。そして──」

「あっ」


 スズキさんに話を振ろうとした時、ちょうどサハギンの着ぐるみに身体を入れてるところだった。
 もちろんヤラセである。打ち合わせ通りの茶番というやつだ。

 一度吹っ切れたら彼女の方から提案してきた。
 おかげでリリーとして問いかけても「なんですかハヤテさん」と問い返すようになった。計算通り、ほくそ笑む。

 無論ナイスボート宜しく急いでカメラを上に回して空の風景を写し、少ししてから元に戻す。
 どうやら準備は整ったようだ。着ぐるみに袖を通したスズキさんがどこから取り出したのかカンペに準備OKと書き込んで持ちあげていた。


「少しアクシデントが起きたようですが、皆様大丈夫でしたでしょうか?」

【一瞬冒涜的な何かが見えた気がする】

「気のせいだよ。今日も助手のスズキでお送りしまーす」


 スズキさんは鯛のボディに早変わりしてカメラの前に登場した。今や飛ぶ鳥を呪い殺す勢いの新世代アイドルとして名を馳せている彼女が一緒についてきてくれるので賑やかしは十分だ。


【魚の人はやっぱりその姿が一番】
【美少女全否定されてて草】

「あっちの姿は事務所を通してもらわないとダメなので。ね、プロデューサーさん?」

「その通り。アイドルとしての彼女は専門チャンネルでの配信を待ってください。本日はプライベートなのでいつもの姿でお送りします」

「いえーい」


 シャカシャカとマラカスを鳴らしながらペッタンペッタンステップを踏み出すスズキさん。


【こっちの姿の方がくっそノリノリなの笑う】
【いくらでも詰れるからこっちの方が好き】
【やっぱり美少女だと躊躇しちゃうもんな】

「ちょっとちょっと、うちの助手をあんまりいじめないでよ。より自由に動き出すじゃないですか」

【手綱握ってないんだ?】
【助手とはいったいなんなのか?】

「自称です」

「別に呼んでなくても来るようになったね。追い返すのもアレだから一緒にいてもらってる。そんな関係さ」

【草】
【アキカゼさん、身内に辛辣過ぎない?】
【可愛さ余って憎さ100倍かな?】
【身内になり過ぎて多少の無茶も許せる関係なんかな?】
【分からなくもない】


「さて今回のゲストはこちら!」

「俺はムッコロ。一応鳥類旅行記のクランメンバーだ」

「お初にお目にかかる。私はササライ。ムッコロ氏と同じく鳥類旅行記に席を置くもの。宜しく頼む」


 以前空の旅に同行してくれたジュウシマツの野生種ムッコロ氏と、鳶の野生種ササライ氏である。


「今日はこのお二人とのんびり空の旅に出かけようと思います。このお二人はどうしても空撮したい場所があるそうなのだけど、その度に何かに阻まれる感覚があるにだという。今回はその謎に迫っていくよ。なのでここから先は空を飛べる前提です。落っこちても自己責任で。ね、スズキさん?」

【置いてこうとしてて草】

「僕の背泳ぎが唸る時が来ましたね!」

【それは魅せる水泳法で魚類として大きく間違ってる】
【そもそも鳥類と一緒に魚類が空を飛ぶってシュールだな】
【間違えて食われそう】

「は、身の危険!?」

「いや、こんなでかい魚食えないから」

「然り。歯がない故丸呑みも厳しかろう」

「セーフ?」

「さて、そろそろ出かけようか」

「はーい」


 空歩で一段づつ階段を登るように空を上がっていく。
 その姿にコメント欄は盛り上がっていた。
 スズキさんは尾鰭を揺らしながらついてきている。
 本当にペットみたいだ。
 リードがつけられるんならつけてみたいという気になる。
 ペットとか飼った事ないけど。


「なんですか?」


 そんな風に思っていたら、視線に気がついた彼女が訪ねてきた。


「なんだか今のスズキさんペットみたいだなって。いっそつけてみる、首輪?」

【草】
【魚をペットにするって発想www】
【辞めてあげて! 中の人女の子だから】
【自分でプロデュースしたアイドルなんやで?】

「残念ですけどリードは持ってきてません」

【オッケーなのかよwww】
【お互いにボケあっててツッコミ不在なのがまた】

「それは残念。今度その赤い鱗に似合う首輪とリードを選んでおくよ」

「楽しみにしてます!」

【これどこまで本気で言ってるんだ?】
【両方とも冗談だと思いたい】


 一足先に上空へと上がっていた御二方と合流し、真上から見た地上の風景を視聴者へお届けする。


【うわ、高っ】
【これを足場なしで登ったのは流石】
【鳥はともかく人と魚も上がれるもんやなって】

「みんなも天空の試練を頑張ればできるようになるよ。まずは雲の上に乗るところからだ。正直私もそこからスタートしたからね」

【雲の上に乗れるけど、泳げないから二の試練難しいです!】

「頑張って泳ごう」

「今なら魚人に強制進化できる青いドリンクも市場にあるよ!」

【ダイレクトマーケティングすな】
【でもそのドリンク、十日間地上での生活台無しにするでしょ?】
【それどころか飲むと確定で<深きもの>になるよな?】
【それ飲む奴は実質狂信者だから】
【ファンの獲得に健気ですね】
【ファンの第一条件が魚人になる事なのは草】
【だから狂信者って呼ばれるんやで?】
【狂信者になったおかげで毎日が楽しいです!】
【狂信者になったあと彼女ができました!】
【どこぞの詐欺広告のような提携文出すな】
【その彼女、背鰭付いてそう】
【付いてますが何か?】
【↑ここまでテンプレ】


 わちゃわちゃとしたコメントに返答をしながら私達はのんびりと空をお散歩する。休憩場所は雲の上にしよう。
 そう考えつつもなかなか見当たらない。おかげで非常に空撮が捗っているよ。風の流れが早いとかではないのに不思議だね。


【今どこら辺まで来た?】
【スタート地点がどこかわからん】

「スタートはフォークロアの山脈を抜けた先にある山道だよ。まっすぐ歩けばファイべリオンだね。そこをフォークロア方面へと逆戻りしてる形だ。つまりは山の方へと移動中だよ」

【だから山脈が多く映ってたのか】
【空撮見るの初めてだから新鮮】
【本来なら鳥類にのみ許された特権やしな】
【堕ちたら死ぬデメリットもあるが】
【アキカゼさんの打ち立てた成果でそれも緩和されたよな】
【その割に空撮少なくない?】
【好き好んでスカイダイビングする奴は居らんやろ】

「えっ?」

【えっ?】
【アキカゼさんの意外そうな顔www】
【空飛ぶ条件を満たした奴らに限ってそれを活かしてないからそんな顔にもなるよ】
【陣営入りする過程にしか考えてない奴多過ぎ問題】
【実際陣営入りしたあとジョブの検証が楽し過ぎてな】
【精巧超人もジョブの検証ばっかしてるよ】
【あれば便利程度なんやろな】

「勿体無い。それがあれば隠されたお宝だって見つかるのに。そんな考えに至るならそろそろアキカゼランドは辞めにしようか」

【待って待って待って! まだ陣営入り終わってないから】
【今までの期間何してたの?】
【こんなに長い期間運営してくれてるのに】
【ランクCのクランだという事を忘れそうになる開催期間】
【時間帯が合わない奴だっているでしょ】
【健全な時間しか運営してないからな】
【深夜組は涙目よ】
【普通のテーマパークとしても優秀だからそれのみを目的として行ってる奴らもおるで】

「別に私のクランが手綱を握らなくても後続が出てくるでしょ。そういう下地は作ったからね。あとはどのように運営するかだよ。私たちのやり方は赤字前提だから真似しない方がいいぞ。全部担当のポケットマネーから捻出されるやり方だ。給与を与えてないから好き勝手やった結果がアレだね」

【無給で働かせてたのか】
【え!? 自腹であの規模のヒーローショーを!?】
【脚本は?】

「中の人」

【リアルバラすな】
【マジかー、そういう繋がりがあるか】
【本当にクラメンに超人しかいなくて草生え散らかすわ】
【最近狂人も増えましたよね?】
【どこに向かってるんだ】

「足の向いた方にだよ。さて、雑談はここまで例の空域に着いたようだ」


 足元には先ほどまで見かけなかった雲が密集して積乱雲を作り上げていた。自然現象にしてはどうにも歪だ。


「なんだか綿飴みたいですね、美味しそう」

「スズキさん、綿飴知ってるんだ?」

「お祭りの屋台で売ってる奴ですよね? 過去のデータベースで見たことあります」


 博識だね。中の人がいるならともかく、この子はNPCなのに。いったいどの程度まで情報獲得許可が出ているのか気になるところだ。


【綿飴知ってる世代だったのか?】
【知らない奴の方が多そう】
【あれ苦手な奴もいるよな】
【あくまでも縁日で食べるイメージあるわ】
【なんもない日だとそこまで特別でもないけどな】


 意外なところで綿飴談義に火がついてしまう。
 しかし意外な場所から反応がある。それがゲストの御二方だ。


「失礼、アキカゼさん。あそこに雲があるのか?」

「ムッコロ殿、どうやらそのようであるな」

「え、お二方には見えないのですか?」

「少しだけいやーな予感がしますね。まるで鳥類の視覚を誤魔化すような、そんな類の魔術を感じます」

「魔術……もしかしなくても、魔導書関連?」

「おそらく」


 今度こそのんびりとしたおさんお気分になると思ったのに、どうも魔導書関連は私を放っておいてくれないらしい。
しおりを挟む
感想 1,316

あなたにおすすめの小説

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...