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4章 お爺ちゃんと生配信
274.お爺ちゃんと釣り人の集い⑥
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それからゲーム内時間で9日間、配信を続けた。
私達的には楽しい催しだったのだけど、どうも視聴者からは困惑の色が強いメッセージを多く頂く。
【俺たちは一体何を見せられているんだ?】
【アキカゼさんの配信だから見てたのに、気がついたら名状し難い何かをおこなっていた】
【いいや、アレはもっと冒涜的な何かだぞ!】
などなど、打ち込まれるコメントは要約すると理解不能であるかの様に騒ぎ始める。
ただ深海の特産品だったりご飯をいただいて飲んで騒いでいただけなんだけどね。
それでも人間のままでその様子を見てるだけの彼らはひどい混乱に陥って居た。
配信失敗かな、と思ったけど私からすればコレほどの経験はないと思う。
だってファストリアの奥に隠されて居た文明の切れ端ではなく、ここには生きた証明があるのだから。
お陰で私は二つの派生スキルと称号、種族進化先が生えた。
まずはスキルから。
一つ目は『鰓呼吸』
体験的に種族を強制変更したおかげで、これがスキルとして行える様になった。
意外なことに『低酸素内活動』から生えてきた。
私はともかくルアーさんやカイゼルさんは喜んでたね。
もう一つは『深海適応』
『水圧耐性』からさらに派生したスキルだ。
単純に体を覆う粘膜が海の底と空雄のものに一新される様だ。
そして称号が<深きもの>
この称号は特定の種族と友好を結ぶともらえるものらしい。
とりあえずこれを持ってればいつでも竜宮城に出入りできる様だ。
最後に種族進化先にマーマンが現れる。
もしかしなくてもマーマンに強制的にされたからロックが外されたのだろうか?
だとしたら他の種族にも変更できる可能性も生まれてくるかも知れないね。
それはそれで夢が広がると思う。
でも私は人間の姿が気に入っているからね。
当分はこのままでいさせてもらおうか。
そして最終日。
私達が魚人でいられる最後の日がやってきた。
人間に戻ったからと別れる必要はないのだが、やはり水棲系のNPCから他所者を見る様な目で見られるのは憚れる。
9日間も楽しくやってきたからね。
別れの儀式くらいはやっておきたい。
竜宮の都の皆さんから盛大に見送ってもらい、私達の10日間は様々な思い出を残して終えた。
過去最大の配信期間だったこともあり、良くも悪くも新鮮なものだった。
数日間の出来事を振り返りながら雑談をしていく。
あの竜宮城、オツヒメさんが作ったものらしいよ。
でもそれが最終目的じゃなくて、目的のための仲間集めのための街らしいんだ。
その目的とは、深海に眠る都市の復活に尽力しているらしい。
その目的地は今まで認識できなかったのに、ハイドラに進化した瞬間に認識できる様になったとか。
アトランティスの遺跡の他にそんな遺跡があるなんて知らなかった。
≪ルルイエだっけ? オツヒメさんの復興させたい街って≫
≪そう聞いてますね。使命だって言ってました。あの子があんなふうに一つのことにのめり込むのは珍しいので僕も協力してあげるつもりです≫
【やめて!】
【その都市の復活だけはやめろ】
【その人起こしちゃダメーー】
≪視聴者さんはやめて欲しそうだけど?≫
≪僕達を止めたかったら海底に来てください。話はそこからだ!≫
スズキさんがコメント欄に啖呵を切りながらドヤ顔する。
コメント欄も対抗する様にそのネタで盛り上がっていた。
どうもネタ的に人類と敵対してるっぽいね。
ゲーム内に人類は数えるほどしかいないけど。
≪それでですね。実は今回の宴に参加したおかげで進化先に彼女と同じ種族が出てきたんですよ≫
≪へぇ≫
≪今の僕と、大きくなった僕。ハヤテさん的にはどっちがタイプですか?≫
≪うーん、あんまり大きくなられるとうちの小さなクランハウスには収まらないなぁ。でもスズキさんが進化したいというのなら私は止めないよ? 進化ってクランに縛られるものじゃないでしょ?≫
≪そうですね。じゃあ僕はこのままでいます≫
≪良いんですか?≫
≪なんだかんだこのボディも気に入ってますから。それにハヤテさんは僕に強さを求めてない。だから良いんです。進化しちゃうとそういうのも求められちゃうかなーって≫
≪私はクラメンさんと遊べればそれで良いんだけどね。どうも他のクランでは違う様だね≫
【耳が痛い】
【そもそもクランの目的なんてプレイヤーがどうするかなんだよな】
【攻略だって楽しいだろ?】
【それを楽しめない奴に強制する面もあるじゃん?】
【最初は楽しかったけどノルマができて楽しめなくなったなぁ】
≪ノルマなんてあるんだ。うちは特に設けてないよね、スズキさん?≫
≪聞いたこともないですね。お金も払えって言われたことないですよ≫
【なにーー!?】
【アキカゼさんのクランて借金しまくってるイメージあったのに】
【飛空艇で数十億使ったって昔話されてる時も?】
≪ないですよ?≫
≪趣味の投資にクラメンさんを巻き込めないよ。そこは私のポケットマネーでなんとかしました≫
【かっけーー】
【どうすればそんなにお金貯められるんですか?】
【戦闘しないから装備代がかからないだけだぞ?】
【戦闘してるんだよなぁ】
【戦闘できないビルドでも戦闘できるとはこれ如何に】
≪お金はいつの間にか貯まってたからね。どうやって貯めるかと聞かれても上手く答えられないよ。ただ、そうだね。もっと広い視野で仲間を信じること。そうやって結んできた絆を軽んじないこと。私はクラメンさんに自由にさせていた。その結果が見返りとして返ってきたのだと思ってる≫
≪と、言いつつ見返りなんて期待してませんよね?≫
≪当たり前じゃない。元々このクランがフレンドさんやご近所さんと一緒に楽しく遊ぶために作ったものだし、それ以外のなにものでもないよ?≫
≪だから居心地がいいんですよねー。ここほど上下関係がなく和気藹々としているクランも珍しいと思いますよ≫
【いいなー】
【実際クラマスになればわかるけど、こんなクランはアキカゼさんとこぐらいだからな?】
【そうそう。クランマスターのやる事は絶対! だなんて言うのは論外だけどクラン運営費だってタダじゃないんだし、マスターがイベント開催してかないとクラメンが飽きてやめてっちゃうし繋ぎ止めるのもやっとだよ】
≪ウチは優秀なクラメンさんがいてくれるのでお金には困ってないからね。その優秀なクラメンさんがどこにも所属できない問題児ばかりなんだけど≫
≪と、一番の問題児が申しております≫
≪スズキさん!?≫
【速攻クラメンにダメ出し受けてら】
【魚の人、ブーメランだぞ?】
【この人が一番の問題児だろ】
≪ひひひ≫
【分かっててやってるからタチ悪いんだよなー】
と、ある程度泳いで来たところで魚人化の効果が切れて人間に戻る。
≪おかしいね、人間に戻ったのに鰓呼吸できるんだけど≫
≪それ≫
≪スキルで取ってしまったから特にマーマンになる必要性は感じないな≫
≪ですよねぇ≫
【マーマンになると体が乾いたらダメになるんだっけ?】
【デメリットしかねーな】
≪しかしアキカゼさんを呼んでから予想外のことが立て続けに起きて、びっくりだ≫
≪本当にな。イベントも何もなく釣りして終わると思ってたのに≫
≪私もですよ≫
海面が見えてきた。
ざばりと防波堤の近くに浮き上がり、そのままジャンプして防波堤に登った。
「はい。地上に無事到着しました。当時はあんな長旅になるなんて思ってもいませんでしたが、いい経験をさせて貰いました。おかげで私のスキル派生も50になってとうとうランクBに上がれます。と、言っても上げませんけどね」
「おめでとうって言っていいのかわからんが、取り敢えずご苦労さん」
「ありがとうございます。ルアーさんも私の配信に付き合わせてしまってすいません」
「いや、あんな経験はそうそうできるもんじゃねぇから得難いものだぜ? な、サブ?」
「ですねぇ。鰓呼吸が生えたので今度泳いで浮島見つけて釣りでもしてみます。今までは落ちたら終わりだって感覚の方が強かったですが、今はもう海は守ってくれるものって意識の方が強いですから」
【一度魚人になると考え方変わるのかもな】
「そうかもね」
【そのイベントって釣りしまくれば生えてくるの?】
「生えねぇな。俺ぁ、β組だがあんなの初めてだぞ」
「私だって知りませんよ」
そこで防波堤に足を出してぶらぶらさせてるスズキさんを見た。私の視線に気がついて、つぶらな瞳を向けてくる。
「なんですか?」
「いや、今回のイベント発生の条件てスズキさんだったのかなって」
「かもしれませんね~。でも僕はハヤテさんの配信を近くで見にきただけですし?」
「あれは生き地獄だった」
【草】
【いつまで経っても釣れない状況で正面で変顔しながら浮き沈みされてたら集中できるものもできなくなるのは仕方ない】
「えっ」
【魚の人にとっては平常運転やで?】
【本当の変顔は九の試練の暗闇の中で急に浮き出るアレだよ】
【あれはクッソ笑ったわ】
「僕、ハヤテさんのお邪魔でしたか?」
「いやいや、とても助かったよ。スズキさんが場を和ませてくれたから一向に釣れないと言う放送事故にもなりうる場面も見事乗り切ることができたし。よくぞ来てくれた、ありがとうね」
「そっか。お役に立てたんならよかったです。あ、家族に呼ばれたんで今日はここまでにしておきます。ではまた」
そのまま海の中にチャポンと消えてログアウトする。
「それじゃあスズキさんもログアウトした事ですし、今回の配信はこれまで! ルアーさん、カイゼルさん。この度はありがとうございました」
「おう、また釣りしたくなったらいつでも来い。それまで竿はあんたに預けとく」
「宜しいのですか?」
「その代わり、次会う時までに腕は磨いてこいよ? それによっちゃあ船釣りも楽しそうだ」
「精進いたします」
「お達者で。次の配信も楽しみにしてます」
「うん、ではお疲れ様でした」
「「お疲れ様」」
【お疲れ様ー】
【88888】
【次回は何が来るんだろ】
【分からん】
【趣味枠らしいけど】
【今回は釣りに見せかけた冒涜的なアレだったしな】
【次も無事に終わらせられるんだろうか?】
【何かあるのは間違いない】
【アクシデントを呼ぶ男】
私達的には楽しい催しだったのだけど、どうも視聴者からは困惑の色が強いメッセージを多く頂く。
【俺たちは一体何を見せられているんだ?】
【アキカゼさんの配信だから見てたのに、気がついたら名状し難い何かをおこなっていた】
【いいや、アレはもっと冒涜的な何かだぞ!】
などなど、打ち込まれるコメントは要約すると理解不能であるかの様に騒ぎ始める。
ただ深海の特産品だったりご飯をいただいて飲んで騒いでいただけなんだけどね。
それでも人間のままでその様子を見てるだけの彼らはひどい混乱に陥って居た。
配信失敗かな、と思ったけど私からすればコレほどの経験はないと思う。
だってファストリアの奥に隠されて居た文明の切れ端ではなく、ここには生きた証明があるのだから。
お陰で私は二つの派生スキルと称号、種族進化先が生えた。
まずはスキルから。
一つ目は『鰓呼吸』
体験的に種族を強制変更したおかげで、これがスキルとして行える様になった。
意外なことに『低酸素内活動』から生えてきた。
私はともかくルアーさんやカイゼルさんは喜んでたね。
もう一つは『深海適応』
『水圧耐性』からさらに派生したスキルだ。
単純に体を覆う粘膜が海の底と空雄のものに一新される様だ。
そして称号が<深きもの>
この称号は特定の種族と友好を結ぶともらえるものらしい。
とりあえずこれを持ってればいつでも竜宮城に出入りできる様だ。
最後に種族進化先にマーマンが現れる。
もしかしなくてもマーマンに強制的にされたからロックが外されたのだろうか?
だとしたら他の種族にも変更できる可能性も生まれてくるかも知れないね。
それはそれで夢が広がると思う。
でも私は人間の姿が気に入っているからね。
当分はこのままでいさせてもらおうか。
そして最終日。
私達が魚人でいられる最後の日がやってきた。
人間に戻ったからと別れる必要はないのだが、やはり水棲系のNPCから他所者を見る様な目で見られるのは憚れる。
9日間も楽しくやってきたからね。
別れの儀式くらいはやっておきたい。
竜宮の都の皆さんから盛大に見送ってもらい、私達の10日間は様々な思い出を残して終えた。
過去最大の配信期間だったこともあり、良くも悪くも新鮮なものだった。
数日間の出来事を振り返りながら雑談をしていく。
あの竜宮城、オツヒメさんが作ったものらしいよ。
でもそれが最終目的じゃなくて、目的のための仲間集めのための街らしいんだ。
その目的とは、深海に眠る都市の復活に尽力しているらしい。
その目的地は今まで認識できなかったのに、ハイドラに進化した瞬間に認識できる様になったとか。
アトランティスの遺跡の他にそんな遺跡があるなんて知らなかった。
≪ルルイエだっけ? オツヒメさんの復興させたい街って≫
≪そう聞いてますね。使命だって言ってました。あの子があんなふうに一つのことにのめり込むのは珍しいので僕も協力してあげるつもりです≫
【やめて!】
【その都市の復活だけはやめろ】
【その人起こしちゃダメーー】
≪視聴者さんはやめて欲しそうだけど?≫
≪僕達を止めたかったら海底に来てください。話はそこからだ!≫
スズキさんがコメント欄に啖呵を切りながらドヤ顔する。
コメント欄も対抗する様にそのネタで盛り上がっていた。
どうもネタ的に人類と敵対してるっぽいね。
ゲーム内に人類は数えるほどしかいないけど。
≪それでですね。実は今回の宴に参加したおかげで進化先に彼女と同じ種族が出てきたんですよ≫
≪へぇ≫
≪今の僕と、大きくなった僕。ハヤテさん的にはどっちがタイプですか?≫
≪うーん、あんまり大きくなられるとうちの小さなクランハウスには収まらないなぁ。でもスズキさんが進化したいというのなら私は止めないよ? 進化ってクランに縛られるものじゃないでしょ?≫
≪そうですね。じゃあ僕はこのままでいます≫
≪良いんですか?≫
≪なんだかんだこのボディも気に入ってますから。それにハヤテさんは僕に強さを求めてない。だから良いんです。進化しちゃうとそういうのも求められちゃうかなーって≫
≪私はクラメンさんと遊べればそれで良いんだけどね。どうも他のクランでは違う様だね≫
【耳が痛い】
【そもそもクランの目的なんてプレイヤーがどうするかなんだよな】
【攻略だって楽しいだろ?】
【それを楽しめない奴に強制する面もあるじゃん?】
【最初は楽しかったけどノルマができて楽しめなくなったなぁ】
≪ノルマなんてあるんだ。うちは特に設けてないよね、スズキさん?≫
≪聞いたこともないですね。お金も払えって言われたことないですよ≫
【なにーー!?】
【アキカゼさんのクランて借金しまくってるイメージあったのに】
【飛空艇で数十億使ったって昔話されてる時も?】
≪ないですよ?≫
≪趣味の投資にクラメンさんを巻き込めないよ。そこは私のポケットマネーでなんとかしました≫
【かっけーー】
【どうすればそんなにお金貯められるんですか?】
【戦闘しないから装備代がかからないだけだぞ?】
【戦闘してるんだよなぁ】
【戦闘できないビルドでも戦闘できるとはこれ如何に】
≪お金はいつの間にか貯まってたからね。どうやって貯めるかと聞かれても上手く答えられないよ。ただ、そうだね。もっと広い視野で仲間を信じること。そうやって結んできた絆を軽んじないこと。私はクラメンさんに自由にさせていた。その結果が見返りとして返ってきたのだと思ってる≫
≪と、言いつつ見返りなんて期待してませんよね?≫
≪当たり前じゃない。元々このクランがフレンドさんやご近所さんと一緒に楽しく遊ぶために作ったものだし、それ以外のなにものでもないよ?≫
≪だから居心地がいいんですよねー。ここほど上下関係がなく和気藹々としているクランも珍しいと思いますよ≫
【いいなー】
【実際クラマスになればわかるけど、こんなクランはアキカゼさんとこぐらいだからな?】
【そうそう。クランマスターのやる事は絶対! だなんて言うのは論外だけどクラン運営費だってタダじゃないんだし、マスターがイベント開催してかないとクラメンが飽きてやめてっちゃうし繋ぎ止めるのもやっとだよ】
≪ウチは優秀なクラメンさんがいてくれるのでお金には困ってないからね。その優秀なクラメンさんがどこにも所属できない問題児ばかりなんだけど≫
≪と、一番の問題児が申しております≫
≪スズキさん!?≫
【速攻クラメンにダメ出し受けてら】
【魚の人、ブーメランだぞ?】
【この人が一番の問題児だろ】
≪ひひひ≫
【分かっててやってるからタチ悪いんだよなー】
と、ある程度泳いで来たところで魚人化の効果が切れて人間に戻る。
≪おかしいね、人間に戻ったのに鰓呼吸できるんだけど≫
≪それ≫
≪スキルで取ってしまったから特にマーマンになる必要性は感じないな≫
≪ですよねぇ≫
【マーマンになると体が乾いたらダメになるんだっけ?】
【デメリットしかねーな】
≪しかしアキカゼさんを呼んでから予想外のことが立て続けに起きて、びっくりだ≫
≪本当にな。イベントも何もなく釣りして終わると思ってたのに≫
≪私もですよ≫
海面が見えてきた。
ざばりと防波堤の近くに浮き上がり、そのままジャンプして防波堤に登った。
「はい。地上に無事到着しました。当時はあんな長旅になるなんて思ってもいませんでしたが、いい経験をさせて貰いました。おかげで私のスキル派生も50になってとうとうランクBに上がれます。と、言っても上げませんけどね」
「おめでとうって言っていいのかわからんが、取り敢えずご苦労さん」
「ありがとうございます。ルアーさんも私の配信に付き合わせてしまってすいません」
「いや、あんな経験はそうそうできるもんじゃねぇから得難いものだぜ? な、サブ?」
「ですねぇ。鰓呼吸が生えたので今度泳いで浮島見つけて釣りでもしてみます。今までは落ちたら終わりだって感覚の方が強かったですが、今はもう海は守ってくれるものって意識の方が強いですから」
【一度魚人になると考え方変わるのかもな】
「そうかもね」
【そのイベントって釣りしまくれば生えてくるの?】
「生えねぇな。俺ぁ、β組だがあんなの初めてだぞ」
「私だって知りませんよ」
そこで防波堤に足を出してぶらぶらさせてるスズキさんを見た。私の視線に気がついて、つぶらな瞳を向けてくる。
「なんですか?」
「いや、今回のイベント発生の条件てスズキさんだったのかなって」
「かもしれませんね~。でも僕はハヤテさんの配信を近くで見にきただけですし?」
「あれは生き地獄だった」
【草】
【いつまで経っても釣れない状況で正面で変顔しながら浮き沈みされてたら集中できるものもできなくなるのは仕方ない】
「えっ」
【魚の人にとっては平常運転やで?】
【本当の変顔は九の試練の暗闇の中で急に浮き出るアレだよ】
【あれはクッソ笑ったわ】
「僕、ハヤテさんのお邪魔でしたか?」
「いやいや、とても助かったよ。スズキさんが場を和ませてくれたから一向に釣れないと言う放送事故にもなりうる場面も見事乗り切ることができたし。よくぞ来てくれた、ありがとうね」
「そっか。お役に立てたんならよかったです。あ、家族に呼ばれたんで今日はここまでにしておきます。ではまた」
そのまま海の中にチャポンと消えてログアウトする。
「それじゃあスズキさんもログアウトした事ですし、今回の配信はこれまで! ルアーさん、カイゼルさん。この度はありがとうございました」
「おう、また釣りしたくなったらいつでも来い。それまで竿はあんたに預けとく」
「宜しいのですか?」
「その代わり、次会う時までに腕は磨いてこいよ? それによっちゃあ船釣りも楽しそうだ」
「精進いたします」
「お達者で。次の配信も楽しみにしてます」
「うん、ではお疲れ様でした」
「「お疲れ様」」
【お疲れ様ー】
【88888】
【次回は何が来るんだろ】
【分からん】
【趣味枠らしいけど】
【今回は釣りに見せかけた冒涜的なアレだったしな】
【次も無事に終わらせられるんだろうか?】
【何かあるのは間違いない】
【アクシデントを呼ぶ男】
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