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五章
閑話_愚直な思い①
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イベント当日、三上泰明と木下太一の二人は雄介の屋台そっちのけでバザーの品に目を奪われていた。
自分たちの作付けしていた野菜の完成形、むしろ理想形にコツなんかを聞いて回ったのである。
すっかり話を聞くのに夢中になった二人は、雄介の屋台に合流するところで怪しい影を見た。
いや、気がついたのは泰明の方だけだ。
「木下、ちょっとこっちきてくれ」
「あん?」
合流して腹一杯雄介のメシを流し込むつもりでいた太一が訝しむ。話を聞いて、だからどうしたみたいな態度で聞き返す。
「着けられてる?」
「厳密には阿久津達、かな。奇妙な視線を感じないか?」
「俺にゃさっぱりわかんねぇわ」
泰明の言葉に、太一が首を傾げた。
剣士と魔法使い。
直感重視の剣士の泰明に比べて、太一は一撃必殺に重きを置く魔法使い。
敵を見つけ次第慎重に距離を測るのが得意かそうじゃないかの差であった。
「正直さ、阿久津ってああいう奴だから不要に敵意を買うんだよ」
「え、そうかぁ? 俺は阿久津ほどお人好しを見たことないが」
泰明の指摘に太一は眉を顰める。
想像する阿久津雄介は極度のお人好しで、そのお人好し具合で多くの人々を籠絡する人たらしである。
そんな相手に敵意を抱く相手がいると言われてピンとこないのだ。
「お人好しだからこそ、今までそれで仕事をしていた人達が阿久津にとって替わられてみろ。その場所は俺のだぞ、ってならないか?」
「要するに嫉妬ってわけか。まぁそう考えたらあいつ手当たり次第なところあるしな、恨み買ってても仕方ねーわ」
「そこなんだよ。本人が強いから取り合わないが、あいつは要らない敵を作る傾向にある。あいつに救われてきた俺たちはそれを黙って見ていられるか?」
「まぁ無理だな。あいつの曇ってる姿なんて見たくねぇよ」
「で、だ。俺とお前で秘密裏に片付ける。コレで万事解決だ」
「要は暴力ってことね? そういうのは卒業するって話じゃなかったのか」
太一の正論パンチに泰明はグッと口を噤む。
「俺はあいつに借りがあるんだよ、そいつを返すだけだ」
「そういうことにしといてやるよ」
太一を天誅パーティに誘うことができたと同時に何か大切な信頼を失った気持ちになる泰明は、影に潜んでる人影の背後に回り込んで肩にポンと手を置いた。
音もなく近寄られた事を今気づいた相手はわかりやすいくらいにびっくりして振り向く。
「覗き見なんて感心しないな。誰に雇われた?」
「三上、その口頭だとヤクザの因縁と取られてもおかしくないぞ?」
「……お前は。少し黙っててくれないか?」
「へーい」
なんとも言えずに相棒を見て、格好がつかないものだなと前髪を掬い上げる。
「何者だ!」
「人に聞く前に、自分から名乗るのがマナーだろ?」
「そんなマナーなど知らん。この姿を見られた以上、生かしておけん!」
素早い斬撃。横凪の剣閃が泰明を襲うが見てから余裕で回避する。なんなら太一はしゃがみ込んで拳を武器を持つ利き腕に叩き込んだ。
「ぐっ!」
「握りが甘いぜ、それと目の動きでどこを狙ってるか丸わかりだ!」
ほくそ笑む太一と余裕の表情を浮かべる泰明に、襲撃者は子供だからと追い払うという考えから手練れに向けるものへと変化させる。
「ようやく本気になってくれたみたいだな」
「まぁ、俺らの見た目ってそこら辺のガキと変わらんし油断したってしゃーないだろ?」
16歳はこの世界において大人になったばかりの子供に毛が生えた程度のもの。
泰明達の装いはまだ甘えが抜け切ってないものなので襲撃者も相手にするほどでもないと考えての甘い攻撃だった。
が、泰明と太一は単独でかつての厄災四龍を討伐している実力の持ち主である。
対人戦もムーンスレイの勇者との模擬戦でコレでもかというほど体験している。
その上でステータスはオール80万を越えていた。
それでも専用の武器を持たず、バザーの品を手に提げているだけである。普段着と言われたらそれまでだが、見た目から歴戦の猛者感は微塵も滲み出ていないのである。
本人たちもまるで臨戦態勢を取っておらず、ただそこら辺を歩いてる村人Aくらいの装いだった。
「どうやら侮っていたのはこちらの様だ。ここは引くとしよう、幼き戦士よ」
そう言って掻き消える様にその場から消えた襲撃者。
傍目には。
「普通に走って逃げたな」
「すごいカッコつけてた割にただ早く動いただけだったな」
動体視力がずば抜けてる二人だからこその評価。
逃げ帰った方角を目で追いながら、コレからどうしたもんかと頭を悩ませ、すぐに思考の隅へ追いやった。
「時間の無駄だったな。阿久津と合流して美味い飯食おうぜ?」
「そうだな。俺も少し小腹が空いた」
グゥと小さく訴える自分の腹を抑え、泰明は雄介と合流するその時、大勢の人々を率いた女性がまさに合流予定先に不正を訴える目撃に居合わせてしまった。
それが濡れ衣だと二人はわかるが、どうにも今回の異世界での騒動は雄介に優しくない気がすると頷きあう。
「もしかして、大昔のことすぎてみんな阿久津からの恩を忘れてるからの暴挙か?」
「それもありそうだ。あいつ自体がもうそれに慣れすぎて感覚麻痺してるところもあるけどな」
まぁグーラ戦を潜り抜けた奴だ、と二人して苦笑する。
あの戦いでなすすべもなくやられた二人だからこそ、絶望的な実力差を実感しながらも最後まで輝寝ずに挑み続けた雄介を誇らしく思っている。
と、同時にもう闘いに与しなくても良い様に陰ながら見守るつもりであった。
「で、どうする?」
「背後関係を洗うか」
「そこまでする必要あるかぁ?」
太一は泰明の責任感を面倒くさそうに払った。
今はもう乱世ではない。無理に戦う必要はないのである。
首を突っ込むのは構わないが、自分を巻き込むなと言わんばかりの太一であった。
さっき結んだ協定は早くも崩れそうになっている。
口約束など所詮そんな物だ。
「じゃあ牛丼奢る」
「それなら考えてやっても良いかな」
二人は知らない。
この世界に牛も豚も存在しない事を。
その奢りの約束はこちらでの事か、はたまた元の世界でのことか。
明確な約束を取り付けずに結ばれた約束を元に、近くの屋台で聞き込みを行った。
審査員なら誰でも食べ放題。
コレがこのイベントの趣旨なので、空腹を満たしながら向こうで騒いでるのはどこの誰かと尋ねてみる。
「ありゃあウチの母ちゃんだ。店を手伝わないでどこ行ったかと思えば」
「なんか不正だーって騒いでますけど」
「確かにあそこの屋台の店主は若いくせに随分と禁制品に詳しい。怪しいには怪しいが、不正と訴えるにゃ弱いぜ。逆にこっちはその手があったか! って感心させられることばかりだ。料理ってのはコレだから面白いよな」
「この芋を蒸した料理もうまいっすよ?」
「だろう? ウチの看板メニューなんだ。焼くのや煮るのと違って無駄に繊維を傷つけないことによってふっくらとした味わいになる。このまんまでも美味いが、俺はこいつをこんがりと揚げ物にしたってわけよ。カリカリの衣とほっくり、とろりの融合。俺はそこに料理の美学を見たね!」
ふかし芋ならぬ蒸しコロッケだ。
コロッケと違うのはその工程。
程よく塩味を効かせたジャガイモを蒸してホクホクにした後素揚げする。
コロッケというより揚げジャガイモだが、少ない備品でコレを仕上げられる事に感嘆する二人。
育ち盛り故に味よりも量。
満腹度が高いジャガイモは特に働き手に喜ばれる逸品である。
ここにバターと醤油があれば最高なのだが、大豆が禁制品の時点で醤油の製法は雄介しか知らず絶望的。
もっと美味い食い方があると知っててもそれを教える術のない二人組。
二人して生産者の卵であり、飯事情に関しては食う専門であるからだ。
あらかた腹を膨らませ、事情を精査すれば単純なことだった。
「どうもおばさん達の早とちりっぽいな、コレ」
「もしくは雄介を脅威と見て排除すると決めたかだな」
「なんだかなぁ、料理人同士で通じ合ってるっていうのに、お手伝いしてる方が早とちりしてりゃ世話ないぜ」
「無理もないと思うぞ? 稼ぎ主の進退の危機だ。ここで勝つか負けるかで今後の生活に大きく影響する。木下、お前がその立場だったらどうする?」
「流石アルバイトを三つ掛け持ちをしてる奴は見るところが違うな。まぁ雄介がウチの親父のライバルとして現れたと考えたらどうにかしてその仕事から手を引いてもらうとか動くかもな。あ、俺おばさん達のこと言えねーじゃん。そっか、そういう事か」
「自分の生活を守るためと考えたら無理もないんだよ。雄介はそこら辺考えずに動くから」
「敵を作りやすい?」
「敵というよりは恨みを買いやすいよな。今となっては勇者の肩書きも使えないだろ?」
「あいつらその肩書きを使ってた覚えもないだろ」
「そう言えばそうだな」
じゃあなんとかなるのか?
だなんて考えてる二人の前に上空より降り立つ馬鹿でかい鳥が一匹。
「お前達、グルストンの勇者だな? 一つ手合わせ願おうか!」
「あ、ライトリーのおっさん!」
その姿を見た太一が久しぶり、と手を挙げるが。
当の人物は首を傾げて「お前は誰だ?」と聞いてきた。
「おい、木下。お前この人と本当に知り合いなのか?」
「お前も知ってるだろ? 狐耳のノヴァさん」
「ああ。じゃあこの人も本ムーンスレイの将軍?」
それにしては……品格があまりにも欠落している。
泰明は当時の記憶を思い返して、あまりにも似つかない姿に頭をパニックに陥らせた
「いや、この人三歩あるくと約束事とか平気で忘れるから。相変わらずだなーって」
「フン、我を知っているということはグルストンの勇者で違いないな? ならば今一度手合わせを願おうか! 我は強者に飢えている! さぁ、戦おうぞ!」
「いやいやいや、いきなり押しかけてきて手合わせとは随分と勝手だな」
「そうなのか?」
「おい、木下。この人話が通じないぞ? 全然会話が噛み合う気がしないんだが!」
こういう人なんだよ。
そんな切り返しに当時外交としてやってきたノヴァはまだマシな方だったんだなと今から頭の痛い泰明であった。
自分たちの作付けしていた野菜の完成形、むしろ理想形にコツなんかを聞いて回ったのである。
すっかり話を聞くのに夢中になった二人は、雄介の屋台に合流するところで怪しい影を見た。
いや、気がついたのは泰明の方だけだ。
「木下、ちょっとこっちきてくれ」
「あん?」
合流して腹一杯雄介のメシを流し込むつもりでいた太一が訝しむ。話を聞いて、だからどうしたみたいな態度で聞き返す。
「着けられてる?」
「厳密には阿久津達、かな。奇妙な視線を感じないか?」
「俺にゃさっぱりわかんねぇわ」
泰明の言葉に、太一が首を傾げた。
剣士と魔法使い。
直感重視の剣士の泰明に比べて、太一は一撃必殺に重きを置く魔法使い。
敵を見つけ次第慎重に距離を測るのが得意かそうじゃないかの差であった。
「正直さ、阿久津ってああいう奴だから不要に敵意を買うんだよ」
「え、そうかぁ? 俺は阿久津ほどお人好しを見たことないが」
泰明の指摘に太一は眉を顰める。
想像する阿久津雄介は極度のお人好しで、そのお人好し具合で多くの人々を籠絡する人たらしである。
そんな相手に敵意を抱く相手がいると言われてピンとこないのだ。
「お人好しだからこそ、今までそれで仕事をしていた人達が阿久津にとって替わられてみろ。その場所は俺のだぞ、ってならないか?」
「要するに嫉妬ってわけか。まぁそう考えたらあいつ手当たり次第なところあるしな、恨み買ってても仕方ねーわ」
「そこなんだよ。本人が強いから取り合わないが、あいつは要らない敵を作る傾向にある。あいつに救われてきた俺たちはそれを黙って見ていられるか?」
「まぁ無理だな。あいつの曇ってる姿なんて見たくねぇよ」
「で、だ。俺とお前で秘密裏に片付ける。コレで万事解決だ」
「要は暴力ってことね? そういうのは卒業するって話じゃなかったのか」
太一の正論パンチに泰明はグッと口を噤む。
「俺はあいつに借りがあるんだよ、そいつを返すだけだ」
「そういうことにしといてやるよ」
太一を天誅パーティに誘うことができたと同時に何か大切な信頼を失った気持ちになる泰明は、影に潜んでる人影の背後に回り込んで肩にポンと手を置いた。
音もなく近寄られた事を今気づいた相手はわかりやすいくらいにびっくりして振り向く。
「覗き見なんて感心しないな。誰に雇われた?」
「三上、その口頭だとヤクザの因縁と取られてもおかしくないぞ?」
「……お前は。少し黙っててくれないか?」
「へーい」
なんとも言えずに相棒を見て、格好がつかないものだなと前髪を掬い上げる。
「何者だ!」
「人に聞く前に、自分から名乗るのがマナーだろ?」
「そんなマナーなど知らん。この姿を見られた以上、生かしておけん!」
素早い斬撃。横凪の剣閃が泰明を襲うが見てから余裕で回避する。なんなら太一はしゃがみ込んで拳を武器を持つ利き腕に叩き込んだ。
「ぐっ!」
「握りが甘いぜ、それと目の動きでどこを狙ってるか丸わかりだ!」
ほくそ笑む太一と余裕の表情を浮かべる泰明に、襲撃者は子供だからと追い払うという考えから手練れに向けるものへと変化させる。
「ようやく本気になってくれたみたいだな」
「まぁ、俺らの見た目ってそこら辺のガキと変わらんし油断したってしゃーないだろ?」
16歳はこの世界において大人になったばかりの子供に毛が生えた程度のもの。
泰明達の装いはまだ甘えが抜け切ってないものなので襲撃者も相手にするほどでもないと考えての甘い攻撃だった。
が、泰明と太一は単独でかつての厄災四龍を討伐している実力の持ち主である。
対人戦もムーンスレイの勇者との模擬戦でコレでもかというほど体験している。
その上でステータスはオール80万を越えていた。
それでも専用の武器を持たず、バザーの品を手に提げているだけである。普段着と言われたらそれまでだが、見た目から歴戦の猛者感は微塵も滲み出ていないのである。
本人たちもまるで臨戦態勢を取っておらず、ただそこら辺を歩いてる村人Aくらいの装いだった。
「どうやら侮っていたのはこちらの様だ。ここは引くとしよう、幼き戦士よ」
そう言って掻き消える様にその場から消えた襲撃者。
傍目には。
「普通に走って逃げたな」
「すごいカッコつけてた割にただ早く動いただけだったな」
動体視力がずば抜けてる二人だからこその評価。
逃げ帰った方角を目で追いながら、コレからどうしたもんかと頭を悩ませ、すぐに思考の隅へ追いやった。
「時間の無駄だったな。阿久津と合流して美味い飯食おうぜ?」
「そうだな。俺も少し小腹が空いた」
グゥと小さく訴える自分の腹を抑え、泰明は雄介と合流するその時、大勢の人々を率いた女性がまさに合流予定先に不正を訴える目撃に居合わせてしまった。
それが濡れ衣だと二人はわかるが、どうにも今回の異世界での騒動は雄介に優しくない気がすると頷きあう。
「もしかして、大昔のことすぎてみんな阿久津からの恩を忘れてるからの暴挙か?」
「それもありそうだ。あいつ自体がもうそれに慣れすぎて感覚麻痺してるところもあるけどな」
まぁグーラ戦を潜り抜けた奴だ、と二人して苦笑する。
あの戦いでなすすべもなくやられた二人だからこそ、絶望的な実力差を実感しながらも最後まで輝寝ずに挑み続けた雄介を誇らしく思っている。
と、同時にもう闘いに与しなくても良い様に陰ながら見守るつもりであった。
「で、どうする?」
「背後関係を洗うか」
「そこまでする必要あるかぁ?」
太一は泰明の責任感を面倒くさそうに払った。
今はもう乱世ではない。無理に戦う必要はないのである。
首を突っ込むのは構わないが、自分を巻き込むなと言わんばかりの太一であった。
さっき結んだ協定は早くも崩れそうになっている。
口約束など所詮そんな物だ。
「じゃあ牛丼奢る」
「それなら考えてやっても良いかな」
二人は知らない。
この世界に牛も豚も存在しない事を。
その奢りの約束はこちらでの事か、はたまた元の世界でのことか。
明確な約束を取り付けずに結ばれた約束を元に、近くの屋台で聞き込みを行った。
審査員なら誰でも食べ放題。
コレがこのイベントの趣旨なので、空腹を満たしながら向こうで騒いでるのはどこの誰かと尋ねてみる。
「ありゃあウチの母ちゃんだ。店を手伝わないでどこ行ったかと思えば」
「なんか不正だーって騒いでますけど」
「確かにあそこの屋台の店主は若いくせに随分と禁制品に詳しい。怪しいには怪しいが、不正と訴えるにゃ弱いぜ。逆にこっちはその手があったか! って感心させられることばかりだ。料理ってのはコレだから面白いよな」
「この芋を蒸した料理もうまいっすよ?」
「だろう? ウチの看板メニューなんだ。焼くのや煮るのと違って無駄に繊維を傷つけないことによってふっくらとした味わいになる。このまんまでも美味いが、俺はこいつをこんがりと揚げ物にしたってわけよ。カリカリの衣とほっくり、とろりの融合。俺はそこに料理の美学を見たね!」
ふかし芋ならぬ蒸しコロッケだ。
コロッケと違うのはその工程。
程よく塩味を効かせたジャガイモを蒸してホクホクにした後素揚げする。
コロッケというより揚げジャガイモだが、少ない備品でコレを仕上げられる事に感嘆する二人。
育ち盛り故に味よりも量。
満腹度が高いジャガイモは特に働き手に喜ばれる逸品である。
ここにバターと醤油があれば最高なのだが、大豆が禁制品の時点で醤油の製法は雄介しか知らず絶望的。
もっと美味い食い方があると知っててもそれを教える術のない二人組。
二人して生産者の卵であり、飯事情に関しては食う専門であるからだ。
あらかた腹を膨らませ、事情を精査すれば単純なことだった。
「どうもおばさん達の早とちりっぽいな、コレ」
「もしくは雄介を脅威と見て排除すると決めたかだな」
「なんだかなぁ、料理人同士で通じ合ってるっていうのに、お手伝いしてる方が早とちりしてりゃ世話ないぜ」
「無理もないと思うぞ? 稼ぎ主の進退の危機だ。ここで勝つか負けるかで今後の生活に大きく影響する。木下、お前がその立場だったらどうする?」
「流石アルバイトを三つ掛け持ちをしてる奴は見るところが違うな。まぁ雄介がウチの親父のライバルとして現れたと考えたらどうにかしてその仕事から手を引いてもらうとか動くかもな。あ、俺おばさん達のこと言えねーじゃん。そっか、そういう事か」
「自分の生活を守るためと考えたら無理もないんだよ。雄介はそこら辺考えずに動くから」
「敵を作りやすい?」
「敵というよりは恨みを買いやすいよな。今となっては勇者の肩書きも使えないだろ?」
「あいつらその肩書きを使ってた覚えもないだろ」
「そう言えばそうだな」
じゃあなんとかなるのか?
だなんて考えてる二人の前に上空より降り立つ馬鹿でかい鳥が一匹。
「お前達、グルストンの勇者だな? 一つ手合わせ願おうか!」
「あ、ライトリーのおっさん!」
その姿を見た太一が久しぶり、と手を挙げるが。
当の人物は首を傾げて「お前は誰だ?」と聞いてきた。
「おい、木下。お前この人と本当に知り合いなのか?」
「お前も知ってるだろ? 狐耳のノヴァさん」
「ああ。じゃあこの人も本ムーンスレイの将軍?」
それにしては……品格があまりにも欠落している。
泰明は当時の記憶を思い返して、あまりにも似つかない姿に頭をパニックに陥らせた
「いや、この人三歩あるくと約束事とか平気で忘れるから。相変わらずだなーって」
「フン、我を知っているということはグルストンの勇者で違いないな? ならば今一度手合わせを願おうか! 我は強者に飢えている! さぁ、戦おうぞ!」
「いやいやいや、いきなり押しかけてきて手合わせとは随分と勝手だな」
「そうなのか?」
「おい、木下。この人話が通じないぞ? 全然会話が噛み合う気がしないんだが!」
こういう人なんだよ。
そんな切り返しに当時外交としてやってきたノヴァはまだマシな方だったんだなと今から頭の痛い泰明であった。
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