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132話 私がお父さんです 3
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殴った。年齢の数だけ殴った。
感情を乗せて殴った拳を、老紳士は全て受け止めて、それでも無傷でその場に立っている。
ステータスによる格差ゆえか、それともまた別の何かだろうか?
老紳士は不動で、それゆえに末恐ろしい。
ミィちゃんのスキルも全く通用してない様だった。
「気は済んだかね?」
「済むものか! 俺たちを今まで散々放っておいて、何が親か!」
「なぜ彼はここまで怒りを露わにしているのか。キュリエ、分かるか?」
本当に俺たちの怒りが理解できないように、老紳士、自称父親は困惑している。
『わかりません』
「だろうな、私もだ」
迷宮管理者に人間の心理がわかるものかよ。
わかっていて当然の感情すら持ち合わせていないのか?
だから親でありながら子供を蔑ろにできるのか?
どっちにしろ親失格だ。
俺の周囲にいた父親は、もっと子供達を思って行動していた。
「人は、親子は、一人で生きて行くことはできないのよ。あなたが平気でも、私たちはそうじゃない!」
ミィちゃんも思うところがあったのだろう。
過去を思い出し、もっと寄り添ってくれたならと感情を吐露する。
「言っている意味が分からんな。まるで一人で生きてきたように聞こえるが?」
本当に何も知らないらしい。
なぜこんなに訴えかけてるのか興味も湧かないように老紳士は困惑している。
それでよく父親だのと言えるものだ。
「一人で生きてきた! 俺たちは生みの親に捨てられた孤児だ! あんたが父親で、この世界をステータス至上主義にしたおかげで、俺たちは捨てられたんだ!」
「何、それは本当か?」
ミィちゃんから言葉を引き継いで、俺たち低ステータスがどのように扱われてきたかを暴露したら、ようやく狼狽始める。
「親が子を捨てた? あれだけ私に認知しろと訴えてきた母親が子を捨てる? それではなんのための助成金を出したのかわからないではないか!」
助成金?
養育費のようなものが各家に送られたってことか?
「実際にあたし達は捨てられてるんだよ! ステータスがオールFだったなんて理由ってだけでね!」
「愚かな! ステータスで格差をつけたのはステータスを上げる喜びを知って欲しかったからだ。なのに捨てた? 欲しくて求めた子をあっさり捨てるというのか? 理解できん」
「あなたがどんな人生を送ってきて、その価値観を得たかはわからない。だからステータスを上昇させる役割を女性にも求めたんだろう。まるで人の個性を見てない発言だ。自分がそうだったからって周囲も一緒なわけないだろう?」
まるで自分以外への配慮が欠落してる人間の思想だ。
これが父親?
そんなのこちらからお断りだ。
今更親権をかざして、ハイそうですかと納得できるものではない。
「あんたがその子の父親になってやれば少しは変わってたのかもね。そりゃ金だけ払ってポイじゃ、愛情は薄れて行くばかり、その上で助成金も払われないんじゃ、生活も苦しくなるものよ。知ってる? 女にとって子育ては一人でできるものじゃないの。男が外で稼ぎ、女が家族を守る。前時代的と言われるかもしれないけど、あれには明確な役割があるのよ。それをワンオペでやらせる神経の父親に、女も子供も迷惑してるってわけ」
「そうなのか? 考えたこともなかった。私に親はいなかったからな。他人のものを羨ましく思ったこともないし、自分の力を強めていけば良いと思ってた。そうか、女性がなぜそうしないのか理解が及ばなかった理由はそこか」
ミィちゃんの夫婦生活の願望が投げつけられ、ようやく老紳士は揺らいだ。
「お前たちにはすまないことをした。まさか私のように捨てられていたとは思いもしなかった。そして女たちが遊ぶ金欲しさで私に擦り寄ってきたクズのろくでなしだったことも見抜けぬ愚かな父親ですまない」
「その言い方だと、俺たちの生みの親がクズのろくでなしに聞こえるんですが?」
「実際に手に余るからと捨てたのであろう? クズのろくでなし以外の何者でもあるまい。私にそう思わせるほどだ、相当だろうよ」
「確かにそうね、クズでろくでなしよ、そいつら。そんな奴の子供だと言われてひどく気分が悪いわ」
ミィちゃんまで。
老紳士と一致団結する形で話はまとまり、向こう側の言い分を耳にする形となる。
「さて、理解を深めたところで本題に入ろう。その前に自己紹介を済ませておこうか。もう知ってるとは思うが、私は日本国の内閣総理大臣を務める金剛満だ。パーティの主催者も兼ねているので知らないということもないだろう」
「すいません、あいにくと学校にすら通ってないもので。それで、その総理がわざわざ俺たちを呼び寄せて、尚且つ父親宣言した理由はなんでしょう?」
「それについては表で活動していた時期からちょうどそれくらいの年月が経過したことを意味する」
「今回呼ばれた探索者の年齢にはそんな意味合いが?」
「そうだ」
「しかし表での活動とは……普段は裏で活動しているように聞こえますが?」
「その質問は今更だろう、四番迷宮管理者の契約者よ」
射抜くような視線が俺の胸元へ突き刺さる。
「……知っていましたか」
「それを含めての誘いだ。ただ少し、我々と思惑を別にしているのが引っかかるがな」
「知っていて、泳がせていた?」
「取るに足らない児戯だと見て見ぬ振りをしておった。しかし、見過ごせぬ状況に陥った」
オリンまでなら見過ごしてた。
けどジュリと契約してから看過できなくなったと。
「あなたたちの目的は一体?」
「地球上のダンジョンを余すことなく掌握することよ。その上で人類に都合のいい環境に作り変える」
「途方もない道のりですよ?」
「だからこそ種を蒔いた。私が直接指導することは叶わなかったが、子供達が芽吹くのを待っていた。そして本日、主催したパーティが刈り取りの儀だ……儀だったのだがな」
「予定が変わった?」
「ああ。イレギュラーが紛れ込んだ」
老紳士、金剛満がスッと俺を見据える。
「俺、ですか?」
「厳密に言えば、君が連れてきたお嬢さんだ」
ヨッちゃん?
「私の血筋は、確定で加工スキルを引き継ぐ。だが、その中に一人だけ違う形でステータスの限界を突破したものがいた。本来Sランクに至るのは、我々加工スキル持ちの特権だったんだが……」
それが俺のスキルでヨッちゃんを超強化させてしまったと?
「それの何か不都合でも?」
「おかげで大幅に予定が狂ってしまった。本来この世界を掌握するのは我々加工スキル持ちだったんだ。それが君のスキルで全く違うイレギュラーが生まれてしまったんだ」
「まさか知らず知らずのうちにあなたの野望を打ち砕いてしまっていたとは……」
「何、予定は狂ったが想定内。いや、想定以上に人員の確保ができた。近い将来にダンジョンに新しい催し物ができる。その日を楽しみにしてくれたまえ」
言いたいことは言い終えたのか、老紳士はその場から姿をかき消した。俺達を閉じ込めていた空間は霧散し、すぐにヨッちゃんとも合流できた。
「ポンちゃん! そっちにモンスターペアレント来てなかったか?」
ドレス姿だというのに、シャドーボクシングよろしく虚空に拳を打ち込むヨッちゃん。
「ということはそっちにも現れたのか」
「ああ、今更父親ヅラしてきたから、オレの親父は死んだよって言ってその横っ面叩いてやったよ。そしたらそんなバカな! って言って逃げおおせてやんの!」
何してるんだろう、この子。
確かに不躾な言い回しではあったがいきなり殴りかかるなんて。
いや、でも俺も殴ったし、ミィちゃんに至ってはスキルを使って攻撃してた。
それでも一切ダメージを与えられなかったんだよな。
もしかして、血族からのダメージは一切通じないとかいう効果でもあったのかな?
身内しか呼んでないから攻撃は通用しないと思ってるところに血縁者ではないヨッちゃんの攻撃がクリーンヒットした?
もしそうだったら今回はヨッちゃんがMVPということになるな。
それはそれとして……俺とミィちゃんは兄弟ということになるんだろうか?
「洋一さん、あの男の言うことは聞く耳持たなくていいと思います」
「あの男?」
「モンスターペアレントだよ」
「ああ、会って早々開口一番にお父さんだよアピールしてきたオッサンな」
「そう、その人」
「もしあの人の言うことが本当だった場合」
「オレたちが兄妹になる可能性が出てくるもんな。そうなると俺が妹かー?」
ヨッちゃんはまだ血筋ではないことに気が付いてないのか、そんなことを言ってくる。
「でもポンちゃんの妹っていうのは癪だな。オレが姉ちゃんか? で、轟美玲が妹だな」
癪ってなんだ。失礼な。
「実は今回、全員が全員血筋ではなかったみたいなの」
「え、そうなのか?」
驚くヨッちゃん。
「うーん、じゃあ轟美玲は今まで通りポンちゃんの恋人で、オレがポンちゃんの身内ってことでよろしくな! オレがくたばるまでしっかり面倒見ろよ、弟よ」
「それでいいわ。これからもよろしく頼むわね、お姉さん」
「おう!」
勝手に話をまとめられ、なぜかそういう立場に落ち着いた。
ヨッちゃんはただの飲み友達から、姉に。
ミィちゃんは今まで通りってことになるが、本人からは特に不満はなさそうだ。
そりゃ、認めちゃったらお付き合いするのも憚れる血縁関係者になっちゃうからな。
それにあの人の思い違いの可能性もあるし。
とりあえず、俺たちがピンチの時はよっちゃんに頼ることが確定したので、帰宅したら一杯奢ってチャラにすることは確定していた。
今まで散々連絡の取れなかったジュリは、船上パーティから帰還すると共に顔を見せるようになった。
今回は邪魔されないように封印された。
逆にいつでも拘束することはできると言われてるようなものだ。
相手は第一迷宮管理者。
そして第三迷宮管理者も使役下かに置いている。油断ならない相手だ。
ダンジョンを全て掌握することを念頭に置いて行動していると言っていた。
その中にはきっと、ゴロウに施した呪いなんかも含まれるのだろう。
第二、第三の被害者を生み出さないためにも、俺たちも対策を考える必要がありそうだ。
とはいえ、やることは飯を作るだけなんだけどな。
ダンジョンのことは迷宮管理者に任せておけばいい。
俺たちは可能な限りで協力する。
あまりでしゃばるのはお互いにとってよろしくないからな。
自称父親はダンジョンの運営にあれこれ口出ししたくて仕方がないようだが、俺は別にそこまで興味ないしな。
やたら敵対視されてたけど、相手は俺がダンジョンにそこまで関心ないのは知らないんだろうなぁ。
感情を乗せて殴った拳を、老紳士は全て受け止めて、それでも無傷でその場に立っている。
ステータスによる格差ゆえか、それともまた別の何かだろうか?
老紳士は不動で、それゆえに末恐ろしい。
ミィちゃんのスキルも全く通用してない様だった。
「気は済んだかね?」
「済むものか! 俺たちを今まで散々放っておいて、何が親か!」
「なぜ彼はここまで怒りを露わにしているのか。キュリエ、分かるか?」
本当に俺たちの怒りが理解できないように、老紳士、自称父親は困惑している。
『わかりません』
「だろうな、私もだ」
迷宮管理者に人間の心理がわかるものかよ。
わかっていて当然の感情すら持ち合わせていないのか?
だから親でありながら子供を蔑ろにできるのか?
どっちにしろ親失格だ。
俺の周囲にいた父親は、もっと子供達を思って行動していた。
「人は、親子は、一人で生きて行くことはできないのよ。あなたが平気でも、私たちはそうじゃない!」
ミィちゃんも思うところがあったのだろう。
過去を思い出し、もっと寄り添ってくれたならと感情を吐露する。
「言っている意味が分からんな。まるで一人で生きてきたように聞こえるが?」
本当に何も知らないらしい。
なぜこんなに訴えかけてるのか興味も湧かないように老紳士は困惑している。
それでよく父親だのと言えるものだ。
「一人で生きてきた! 俺たちは生みの親に捨てられた孤児だ! あんたが父親で、この世界をステータス至上主義にしたおかげで、俺たちは捨てられたんだ!」
「何、それは本当か?」
ミィちゃんから言葉を引き継いで、俺たち低ステータスがどのように扱われてきたかを暴露したら、ようやく狼狽始める。
「親が子を捨てた? あれだけ私に認知しろと訴えてきた母親が子を捨てる? それではなんのための助成金を出したのかわからないではないか!」
助成金?
養育費のようなものが各家に送られたってことか?
「実際にあたし達は捨てられてるんだよ! ステータスがオールFだったなんて理由ってだけでね!」
「愚かな! ステータスで格差をつけたのはステータスを上げる喜びを知って欲しかったからだ。なのに捨てた? 欲しくて求めた子をあっさり捨てるというのか? 理解できん」
「あなたがどんな人生を送ってきて、その価値観を得たかはわからない。だからステータスを上昇させる役割を女性にも求めたんだろう。まるで人の個性を見てない発言だ。自分がそうだったからって周囲も一緒なわけないだろう?」
まるで自分以外への配慮が欠落してる人間の思想だ。
これが父親?
そんなのこちらからお断りだ。
今更親権をかざして、ハイそうですかと納得できるものではない。
「あんたがその子の父親になってやれば少しは変わってたのかもね。そりゃ金だけ払ってポイじゃ、愛情は薄れて行くばかり、その上で助成金も払われないんじゃ、生活も苦しくなるものよ。知ってる? 女にとって子育ては一人でできるものじゃないの。男が外で稼ぎ、女が家族を守る。前時代的と言われるかもしれないけど、あれには明確な役割があるのよ。それをワンオペでやらせる神経の父親に、女も子供も迷惑してるってわけ」
「そうなのか? 考えたこともなかった。私に親はいなかったからな。他人のものを羨ましく思ったこともないし、自分の力を強めていけば良いと思ってた。そうか、女性がなぜそうしないのか理解が及ばなかった理由はそこか」
ミィちゃんの夫婦生活の願望が投げつけられ、ようやく老紳士は揺らいだ。
「お前たちにはすまないことをした。まさか私のように捨てられていたとは思いもしなかった。そして女たちが遊ぶ金欲しさで私に擦り寄ってきたクズのろくでなしだったことも見抜けぬ愚かな父親ですまない」
「その言い方だと、俺たちの生みの親がクズのろくでなしに聞こえるんですが?」
「実際に手に余るからと捨てたのであろう? クズのろくでなし以外の何者でもあるまい。私にそう思わせるほどだ、相当だろうよ」
「確かにそうね、クズでろくでなしよ、そいつら。そんな奴の子供だと言われてひどく気分が悪いわ」
ミィちゃんまで。
老紳士と一致団結する形で話はまとまり、向こう側の言い分を耳にする形となる。
「さて、理解を深めたところで本題に入ろう。その前に自己紹介を済ませておこうか。もう知ってるとは思うが、私は日本国の内閣総理大臣を務める金剛満だ。パーティの主催者も兼ねているので知らないということもないだろう」
「すいません、あいにくと学校にすら通ってないもので。それで、その総理がわざわざ俺たちを呼び寄せて、尚且つ父親宣言した理由はなんでしょう?」
「それについては表で活動していた時期からちょうどそれくらいの年月が経過したことを意味する」
「今回呼ばれた探索者の年齢にはそんな意味合いが?」
「そうだ」
「しかし表での活動とは……普段は裏で活動しているように聞こえますが?」
「その質問は今更だろう、四番迷宮管理者の契約者よ」
射抜くような視線が俺の胸元へ突き刺さる。
「……知っていましたか」
「それを含めての誘いだ。ただ少し、我々と思惑を別にしているのが引っかかるがな」
「知っていて、泳がせていた?」
「取るに足らない児戯だと見て見ぬ振りをしておった。しかし、見過ごせぬ状況に陥った」
オリンまでなら見過ごしてた。
けどジュリと契約してから看過できなくなったと。
「あなたたちの目的は一体?」
「地球上のダンジョンを余すことなく掌握することよ。その上で人類に都合のいい環境に作り変える」
「途方もない道のりですよ?」
「だからこそ種を蒔いた。私が直接指導することは叶わなかったが、子供達が芽吹くのを待っていた。そして本日、主催したパーティが刈り取りの儀だ……儀だったのだがな」
「予定が変わった?」
「ああ。イレギュラーが紛れ込んだ」
老紳士、金剛満がスッと俺を見据える。
「俺、ですか?」
「厳密に言えば、君が連れてきたお嬢さんだ」
ヨッちゃん?
「私の血筋は、確定で加工スキルを引き継ぐ。だが、その中に一人だけ違う形でステータスの限界を突破したものがいた。本来Sランクに至るのは、我々加工スキル持ちの特権だったんだが……」
それが俺のスキルでヨッちゃんを超強化させてしまったと?
「それの何か不都合でも?」
「おかげで大幅に予定が狂ってしまった。本来この世界を掌握するのは我々加工スキル持ちだったんだ。それが君のスキルで全く違うイレギュラーが生まれてしまったんだ」
「まさか知らず知らずのうちにあなたの野望を打ち砕いてしまっていたとは……」
「何、予定は狂ったが想定内。いや、想定以上に人員の確保ができた。近い将来にダンジョンに新しい催し物ができる。その日を楽しみにしてくれたまえ」
言いたいことは言い終えたのか、老紳士はその場から姿をかき消した。俺達を閉じ込めていた空間は霧散し、すぐにヨッちゃんとも合流できた。
「ポンちゃん! そっちにモンスターペアレント来てなかったか?」
ドレス姿だというのに、シャドーボクシングよろしく虚空に拳を打ち込むヨッちゃん。
「ということはそっちにも現れたのか」
「ああ、今更父親ヅラしてきたから、オレの親父は死んだよって言ってその横っ面叩いてやったよ。そしたらそんなバカな! って言って逃げおおせてやんの!」
何してるんだろう、この子。
確かに不躾な言い回しではあったがいきなり殴りかかるなんて。
いや、でも俺も殴ったし、ミィちゃんに至ってはスキルを使って攻撃してた。
それでも一切ダメージを与えられなかったんだよな。
もしかして、血族からのダメージは一切通じないとかいう効果でもあったのかな?
身内しか呼んでないから攻撃は通用しないと思ってるところに血縁者ではないヨッちゃんの攻撃がクリーンヒットした?
もしそうだったら今回はヨッちゃんがMVPということになるな。
それはそれとして……俺とミィちゃんは兄弟ということになるんだろうか?
「洋一さん、あの男の言うことは聞く耳持たなくていいと思います」
「あの男?」
「モンスターペアレントだよ」
「ああ、会って早々開口一番にお父さんだよアピールしてきたオッサンな」
「そう、その人」
「もしあの人の言うことが本当だった場合」
「オレたちが兄妹になる可能性が出てくるもんな。そうなると俺が妹かー?」
ヨッちゃんはまだ血筋ではないことに気が付いてないのか、そんなことを言ってくる。
「でもポンちゃんの妹っていうのは癪だな。オレが姉ちゃんか? で、轟美玲が妹だな」
癪ってなんだ。失礼な。
「実は今回、全員が全員血筋ではなかったみたいなの」
「え、そうなのか?」
驚くヨッちゃん。
「うーん、じゃあ轟美玲は今まで通りポンちゃんの恋人で、オレがポンちゃんの身内ってことでよろしくな! オレがくたばるまでしっかり面倒見ろよ、弟よ」
「それでいいわ。これからもよろしく頼むわね、お姉さん」
「おう!」
勝手に話をまとめられ、なぜかそういう立場に落ち着いた。
ヨッちゃんはただの飲み友達から、姉に。
ミィちゃんは今まで通りってことになるが、本人からは特に不満はなさそうだ。
そりゃ、認めちゃったらお付き合いするのも憚れる血縁関係者になっちゃうからな。
それにあの人の思い違いの可能性もあるし。
とりあえず、俺たちがピンチの時はよっちゃんに頼ることが確定したので、帰宅したら一杯奢ってチャラにすることは確定していた。
今まで散々連絡の取れなかったジュリは、船上パーティから帰還すると共に顔を見せるようになった。
今回は邪魔されないように封印された。
逆にいつでも拘束することはできると言われてるようなものだ。
相手は第一迷宮管理者。
そして第三迷宮管理者も使役下かに置いている。油断ならない相手だ。
ダンジョンを全て掌握することを念頭に置いて行動していると言っていた。
その中にはきっと、ゴロウに施した呪いなんかも含まれるのだろう。
第二、第三の被害者を生み出さないためにも、俺たちも対策を考える必要がありそうだ。
とはいえ、やることは飯を作るだけなんだけどな。
ダンジョンのことは迷宮管理者に任せておけばいい。
俺たちは可能な限りで協力する。
あまりでしゃばるのはお互いにとってよろしくないからな。
自称父親はダンジョンの運営にあれこれ口出ししたくて仕方がないようだが、俺は別にそこまで興味ないしな。
やたら敵対視されてたけど、相手は俺がダンジョンにそこまで関心ないのは知らないんだろうなぁ。
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