ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴

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15話 ダンジョンラットのしゃぶしゃぶ

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 総合ステが上がったことにより、買える調味料が増えたのが地味に嬉しい。

 それとレベルアップしてるうちに気がつくことがいくつか。
 今まで見逃していたモンスターに対しての新しい料理アレンジ。

 死んだ肉として手元にやってきた時では気づかなかったインスピレーションとでもいうべきか。

 実際に自分で捌いて、閃いた。
 こいつの肉は薄く切ってしゃぶしゃぶにしたら美味いという直感があった。

「ポンちゃん、本当にこいつを食うのか?」

「これは俺の直感だよ。ゴブリンを食っといて今更怖気付いたか?」

「そうだったな、済まん」

 尻込みするヨッちゃんを焚き付けて、食材をゲットしにダンジョンに潜る。

 卯保津さんは、今後俺たちの実力を見せる意味でも戦闘も見せた方がいいと言い出した。顔はきちんとモザイクをかけてくれるらしい。

「今日はラット肉でしゃぶしゃぶしまーす。新鮮なお肉を使いたいので、巣穴に来てまーす!」

「いえーい!」

「今日は卯保津支部長も応援に来てくれました」

「支部長はカメラマンだぜ!」

 <コメント>
 :戦力に入らなくていいのかwww
 :ポンちゃん無理しないで
 :言うてEランクダンジョンやし
 :ポンちゃん達F民やから

「早速発見しました。ヨッちゃん、いつもの頼む」

「そぉい!」

「ヂュウ!!!」

 <コメント>
 :投げつけられるゴブリン肉
 :ラット達めっちゃ食いついてる!
 :ヨッちゃん命中精度高くね?
 :今の魔法エフェクトか?
 :投擲で魔法使うな

「かーらーのー!! アースブラスト」

 <コメント>
 :普通にダンジョン崩落させてて草
 :ミンチ確定だよ
 :いや、窒息させる寸法か!
 :何気にヨッちゃん魔力操作エグくね?
 :それ、ただの飲兵衛じゃなかった件

「いい感じにぐったりしてますね。ここでいつもの吸血スライムの出番です。頭を麻痺させて、喉元をぐさっと。あとはこいつが吸ってくれます」

 <コメント>
 :ポンちゃん笑顔でえぐいことしてる
 :ラットが可哀想になる配信やで
 :こいつの肉、本当にうまいんか?
 :そこはポンちゃんの腕の見せ所よ

「肉を下処理しましたら、解体に入ります。先に湯を沸かしてー、ヨッちゃん」

「はいよー」

 <コメント>
 :もうヨッちゃんの魔法、即席料理のお供やな
 :ダンジョン内で燃料なしでここまでの水遁、魔法じゃなきゃ無理よ
 :荷物にすると重いしな
 :ポンちゃん荷物係だけど、荷物はほぼ調理道具だけになってるもんな

「食えるレパートリーの為ならお湯の調達くらい朝飯前ヨォ! 沸いたぜ、ポンちゃん!」

「一度臭みを消すのに湯で通します。空ウツボの時もそうでしたが、臭みや油分がこれをするとしないで違いますねー」

 <コメント>
 :手際の良さがプロなんだよ
 :これ、ぶっつけ本番ってマジ?
 :俺、適合食材ラットじゃないけど、腹減ってきた

 コメントである通り、湯引きしたラット肉は程よく身が引き締まっていて、ピンク色の肉がこの状態でも食欲を沸かせる。

 こいつを薄く切り、ヨッちゃんにしゃぶしゃぶ用の別の湯を沸かしてもらい、早速実食。

 最初は功労者としてヨッちゃんが口をつける。

「ああ、なんだろうこの食感、泥ガエルの時のような鶏肉のさっぱり感。ちょっとツケダレ味変していい?」

 ポン酢だけでは納得いかずに、胡麻ダレや塩、カラシなどで食べていく。

 最終的にヨッちゃんの好みにあったのはカラシ。これと日本酒がよく合うようだ。

 俺の直感ではポン酢だったが、そこは人それぞれだろう。

「おい、俺の分も残しとけよ?」

 カメラマンの主張が臨界点に達する前に、カメラを固定化する。
 あとはいつも通りの食事風景を流した。

 その前に、

「かんぱーい」

 これを忘れてはならない。
 それぞれのお猪口に、なみなみとお酒を注いで口に運ぶ。

 さっぱりした肉に、辛口の酒がよく合う。
 ポン酢派の俺だったが、しゃぶしゃぶ加減ではカラシも捨て難かった。

「あー、これはいいなぁ。ゴブリンとはまた違った味わいだ。なんで俺は今までこれを食ってこなかったんだ?」

 <コメント>
 :ポンちゃんの飯食うと、みんな同じコメントするよな
 :でも実際、他の人でも同じことってできるんですか?

「血を吸う為だけのスライム飼い慣らせば? 食材によって変える必要があるね。ゴブリンはゴブリン用、ラットはラット用。コアの時から仕込む必要があるから少し手間だけど、その手間を惜しんだら美食には辿り着けないからさ。あとこれは必須だけど、血を吸い切ったあとはちゃんと洗うこと。血の匂いでモンスター寄って来ちゃうから」

 <コメント>
 :見えないところで色々仕込んでたんだ
 :プロのお仕事やで
 :そりゃ素人が真似できないわけですよ

「血抜きさえしちゃえば、あとは簡単だけど……」

「いや、ヨッちゃんクラスの魔法使いいないと厳しいだろ」

「褒めんなよ支部長、お酌しようか?」

「いつになく殊勝じゃねぇか。んじゃあ、一杯もらおうか」

 そう言いながらも酒を受け入れる。
 酔っ払いが二人。

 おっとっとっと、とわざとらしい演技で溢れそうなほどに注いで、それを舐めるように口にする。
 完全に出来上がってる二人がいた。

 <コメント>
 :ここだけ切り取るとただの飲み会なんだよな
 :ほんそれ
 :ここがダンジョンで、食ってるのがラット肉なのは突っ込んだら負けか?
 :見た目は美味そうだから
 :そこだけが救いよな
 :ここ、普通にラットの巣です
 :当然リポップしてくるので~?

「ひゃああああ!! しゃぶしゃぶ肉追加だぁあああ!!」

 <コメント>
 :メシオさんが楽しそうで何よりです
 :ポンちゃんもヨッちゃんもお酒入ってるのに調理工程マジ洗練されてる件
 :この人にカメラマンは無理だった
 :自動的におかわりが来るとか最高かよ
 :ポンちゃん達のお酒のペースのんびりなのそう言うことなんだろうな
 :一人だけバカみたいなペースで飲んでる支部長ときたら
 :これ、支部長会議で詰められる奴だろ
 :草
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