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9話 ラーヤの婚約者 クバラside
しおりを挟む貴族の子女が通う、帝国スコラハ学園のかたすみで、ようやく見つけた気持ちの良い木陰に座り…
クバラ皇子は、最上級生なら誰もが一度は、その難解さで壁にぶち当たる、古文の課題にとりくんでいた。
王族の義務である公務のあいまに、クバラ皇子が久しぶりに学園へ顔を出すと、教師たちに講義を欠席した代わりに課題をどっさりと手渡され… 古文の課題もその一つだった。
春の風で草木の葉がこすれ合う音以外は、時々小鳥たちがさえずる声しか聞こえない、穏やかな空間に突然…
「きゃあ―――――――――っ!!!」
若い女性の、さわがしくて不快なさけび声が響きわたる。
「…っ?!」
古文の課題に集中していたクバラ皇子は、不意をつかれ心臓がドキッ…! と飛びはねるほど驚いた。
女性のさけび声は、1度だけではなく… 2度、3度、響き…
「痛いっ! 足が痛いわ! だめよ歩けない―――っ!! 助けて、ラーヤ!!! ああ、何て痛いのかしらぁ―――っ!!」
クバラ皇子は難しい古文を読みとくための集中力を、不快なさけび声のせいで、完全に失ってしまった。
パタンッ… と課題の本を閉じ、邪魔されてイライラとする気持ちを抑えようと… フゥ――――――ッ… と長く… 長く… 息をはき出したが…
クバラ皇子が平常心をたもとうと、努力している最中も、早朝のニワトリの鳴き声に似た、若い女性のさけび声は響き続けた。
「お願いよ!! ラーヤ!! 痛くて歩けないわぁ―――っ!!」
「クソッ うるさくて我慢できない!! どこの愚か者だ?!」
古文の本を持って立ち上がり、クバラ皇子はさけび声が聞こえる方へと歩いて行くと…
体格にあまり恵まれていない華奢な少年が、丸々と太って重そうな、ケガをしたらしい女子生徒を抱きあげ、よろよろと歩いて治療室へ向かうところに出くわした。
クバラ皇子は、そんなカップルに見つからないよう、木のかげに隠れて様子をうかがう。
だが… 目の前の光景に、クバラ皇子は見覚えがあり、眉間にしわを寄せた。
<学園の女子生徒の間ではやっている、わざと転んで『婚約者が自分を愛しているのなら、必ず抱きあげて治療室へ運んでくれる』 …というバカげたゲームだ!>
「ああ… ラーヤと言ったか? 彼はなんてけなげなんだ!」
<可哀そうに… 彼はあの女の見栄につきあわされているのか… 将来、あんな女が妻になるのかと思うと、彼が本当に不憫だ!>
紳士として高潔にふるまえと、厳しく教育される令息たちの心をもてあそび… 自分たちの虚栄心を満たすために、婚約者をオモチャのようにあつかう貴族の令嬢たちに、クバラ皇子はうんざりしていた。
<こういう、女の醜い姿ばかりが目に付くから、私は増々貴族の女たちが嫌いになるんだ!!>
クバラ皇子の恋愛対象は、いつも同性だった。
一時期、自分が男性にしか心ひかれないことを悩んでいたが、女性にまったく魅力を感じなくて、愛せないのだから、あきらめるしかなかった。
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