11 / 33
10話 ラーヤの婚約者2 クバラside
しおりを挟む
丸々と太った女子生徒の、婚約者らしき男子生徒は… あきらかに自分よりも、3倍は横に大きい女性を細い腕で抱きかかえ、必死に歩いている。
<そんな見栄っ張りな女なんて、そのへんの草むらにすててしまえ!>
クバラ皇子は婚約者の少年が心配になり、木のかげに隠れながら… 2人の後から、ついて行くことにした。
「ラーヤ! お願い、私を落とさないでぇ!!」
女子生徒は婚約者の細い首に、太い腕をまきつけ、大声でさけんだ。
クバラ皇子から見ると、婚約者の首を女子生徒が絞めているようにしか見えない。
「わかったから、さけばないで… サピ! 君の声は良く聞こえるから… ああっ… だめだよ、僕の首を絞めないで… 苦しくて… うわあ―――っ!!」
「きゃああぁ―――っ!!!」
どうやら女子生徒は本当に婚約者の首を絞めながら、しがみついていたらしく… 婚約者の少年の足がもつれ、そのまま女子生徒ごと倒れ込んでしまった。
「ひ… ひどいわラーヤ!! 私を落とすなんて!! 何てひどい人なの?! 私を愛してないの?!」
尻からドスンッ…! と少年の細い腕の上に落ちた女子生徒は、サッ… と立ち上がり、大声で非難の声をあげた。
「ごめんね、サピ…! 僕が悪かったよ…」
身体のどこかを打ちつけたのか、少年は苦痛に耐えるような顔で座り込み、婚約者に一生懸命、謝罪をする。
「もう、いいわ!!」
「サピ?! 痛めた足は大丈夫なの?」
少年を置き去りにしようとした女子生徒を… 少年は心配そうに呼び止めた。
「ええ、痛いけれど我慢するわ!! それよりもラーヤ、なんて頼りない人なの?! 婚約者のあなたに失望したから、胸の方が張り裂けそうなほど痛いわ!!」
「えええ? そんなサピ…」
「フンッ…! 私は失礼するわ、ラーヤ!」
そっぽを向いた女子生徒は、とても痛めているようには見えない足で、婚約者の少年を振り返ることもなく、歩き去った。
<やっぱりあの女、ケガなどしていなかった! それより彼が… ラーヤの方が、今のでケガをしたみたいだ?! クソッ…!>
あわてて残された少年にかけよると… クバラ皇子の足音に気付き、少年が顔をあげた。
透きとおるような美しい肌に、太陽の光でキラキラと輝く大きな瞳、ビックリするほど長く繊細なまつげ… 桃色に染めた頬に赤く小さな唇。
「・・・っ!!」
<何て優美で綺麗なんだ?!>
少年の顔を直視して、クバラ皇子は言葉を失った。
「あっ! あなたはクバラ皇子殿下?!」
その日、クバラ皇子は… 美形ぞろいで有名な、バングヌ伯爵家の長男ハリラヤに、一目惚れした。
<そんな見栄っ張りな女なんて、そのへんの草むらにすててしまえ!>
クバラ皇子は婚約者の少年が心配になり、木のかげに隠れながら… 2人の後から、ついて行くことにした。
「ラーヤ! お願い、私を落とさないでぇ!!」
女子生徒は婚約者の細い首に、太い腕をまきつけ、大声でさけんだ。
クバラ皇子から見ると、婚約者の首を女子生徒が絞めているようにしか見えない。
「わかったから、さけばないで… サピ! 君の声は良く聞こえるから… ああっ… だめだよ、僕の首を絞めないで… 苦しくて… うわあ―――っ!!」
「きゃああぁ―――っ!!!」
どうやら女子生徒は本当に婚約者の首を絞めながら、しがみついていたらしく… 婚約者の少年の足がもつれ、そのまま女子生徒ごと倒れ込んでしまった。
「ひ… ひどいわラーヤ!! 私を落とすなんて!! 何てひどい人なの?! 私を愛してないの?!」
尻からドスンッ…! と少年の細い腕の上に落ちた女子生徒は、サッ… と立ち上がり、大声で非難の声をあげた。
「ごめんね、サピ…! 僕が悪かったよ…」
身体のどこかを打ちつけたのか、少年は苦痛に耐えるような顔で座り込み、婚約者に一生懸命、謝罪をする。
「もう、いいわ!!」
「サピ?! 痛めた足は大丈夫なの?」
少年を置き去りにしようとした女子生徒を… 少年は心配そうに呼び止めた。
「ええ、痛いけれど我慢するわ!! それよりもラーヤ、なんて頼りない人なの?! 婚約者のあなたに失望したから、胸の方が張り裂けそうなほど痛いわ!!」
「えええ? そんなサピ…」
「フンッ…! 私は失礼するわ、ラーヤ!」
そっぽを向いた女子生徒は、とても痛めているようには見えない足で、婚約者の少年を振り返ることもなく、歩き去った。
<やっぱりあの女、ケガなどしていなかった! それより彼が… ラーヤの方が、今のでケガをしたみたいだ?! クソッ…!>
あわてて残された少年にかけよると… クバラ皇子の足音に気付き、少年が顔をあげた。
透きとおるような美しい肌に、太陽の光でキラキラと輝く大きな瞳、ビックリするほど長く繊細なまつげ… 桃色に染めた頬に赤く小さな唇。
「・・・っ!!」
<何て優美で綺麗なんだ?!>
少年の顔を直視して、クバラ皇子は言葉を失った。
「あっ! あなたはクバラ皇子殿下?!」
その日、クバラ皇子は… 美形ぞろいで有名な、バングヌ伯爵家の長男ハリラヤに、一目惚れした。
0
お気に入りに追加
304
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
記憶喪失の僕は、初めて会ったはずの大学の先輩が気になってたまりません!
沈丁花
BL
__ 白い世界と鼻を掠める消毒液の匂い。礼人の記憶はそこから始まる。
小学5年生までの記憶を無くした礼人(あやと)は、あるトラウマを抱えながらも平凡な大学生活を送っていた。
しかし、ある日“氷王子”と呼ばれる学年の先輩、北瀬(きたせ)莉杜(りと)と出会ったことで、少しずつ礼人に不思議なことが起こり始めて…?
過去と今で揺れる2人の、すれ違い恋物語。
※エブリスタで“明日の君が笑顔なら”という題名で公開している作品を、内容がわかりやすいタイトルに改題してそのまま掲載しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる