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10話 ラーヤの婚約者2 クバラside

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 丸々と太った女子生徒の、婚約者らしき男子生徒は… あきらかに自分よりも、3倍は横に大きい女性を細い腕で抱きかかえ、必死に歩いている。

<そんな見栄みえりな女なんて、そのへんの草むらにすててしまえ!>
 クバラ皇子は婚約者の少年が心配になり、木のかげに隠れながら… 2人の後から、ついて行くことにした。


「ラーヤ! お願い、私を落とさないでぇ!!」
 女子生徒は婚約者の細い首に、太い腕をまきつけ、大声でさけんだ。

 クバラ皇子から見ると、婚約者の首を女子生徒がめているようにしか見えない。


「わかったから、さけばないで… サピ! 君の声は良く聞こえるから… ああっ… だめだよ、僕の首を絞めないで… 苦しくて… うわあ―――っ!!」

「きゃああぁ―――っ!!!」

 どうやら女子生徒は本当に婚約者の首を絞めながら、しがみついていたらしく… 婚約者の少年の足がもつれ、そのまま女子生徒ごと倒れ込んでしまった。

「ひ… ひどいわラーヤ!! 私を落とすなんて!! 何てひどい人なの?! 私を愛してないの?!」
 尻からドスンッ…! と少年の細い腕の上に落ちた女子生徒は、サッ… と立ち上がり、大声で非難の声をあげた。

「ごめんね、サピ…! 僕が悪かったよ…」
 身体のどこかを打ちつけたのか、少年は苦痛に耐えるような顔で座り込み、婚約者に一生懸命、謝罪をする。

「もう、いいわ!!」

「サピ?! 痛めた足は大丈夫なの?」
 少年を置き去りにしようとした女子生徒を… 少年は心配そうに呼び止めた。

「ええ、痛いけれど我慢するわ!! それよりもラーヤ、なんて頼りない人なの?! 婚約者のあなたに失望したから、胸の方が張り裂けそうなほど痛いわ!!」

「えええ? そんなサピ…」

「フンッ…! 私は失礼するわ、ラーヤ!」 
 そっぽを向いた女子生徒は、とても痛めているようには見えない足で、婚約者の少年を振り返ることもなく、歩き去った。 


<やっぱりあの女、ケガなどしていなかった! それより彼が… ラーヤの方が、今のでケガをしたみたいだ?! クソッ…!>

 あわてて残された少年にかけよると… クバラ皇子の足音に気付き、少年が顔をあげた。



 透きとおるような美しい肌に、太陽の光でキラキラと輝く大きな瞳、ビックリするほど長く繊細なまつげ… 桃色に染めた頬に赤く小さな唇。


「・・・っ!!」
<何て優美で綺麗なんだ?!>
 少年の顔を直視して、クバラ皇子は言葉を失った。 


「あっ! あなたはクバラ皇子殿下?!」



 その日、クバラ皇子は… 美形ぞろいで有名な、バングヌ伯爵家の長男ハリラヤに、一目惚れした。







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