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18話 男女の距離感。②
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「ええ、わたくし達の年で婚約者がいらっしゃらない方って殆どいらっしゃらないでしょう?
そうなると、婚約者が未だ居ない方がこの学園で出会いを求めるとするなら婚約者の有無の確認は徹底しなければならないわ。婚約者の居ない殿方とお話する時と、婚約者が居る殿方にお話する時の距離感とかありますでしょう? クシュナ嬢はその距離感が無い方らしいのよ。」
「何となく理解出来たわ。」
「それだけなら、たまにいらっしゃるから噂としては弱いんでしょうけど…クシュナ嬢に目を付けられた婚約者の居る殿方は、何方も婚約が破断になるケースが多いらしいの。」
「破断に…」
サフィはポツリと呟く。
「婚約者の居る殿方の腕に己の胸を押し付けたり、べたべたと触ったりするみたいなの。
名前を呼び捨てや愛称で呼び合って、中庭のベンチでぴったりとくっついて座ったり…
まぁ恋人関係のような態度を取りますのよ。婚約者が居る相手だというのに。」
大胆すぎ! 醜聞が免れないですわ…。
まして貴族の令息令嬢は人目がある所でそのような事をするのが恥であるという教育がされるはず。
クロにやりたい放題されてる私が言うのもおかしいが。
「そして殿方はやがて婚約者よりもクシュナ嬢を最優先するようになり、婚約破棄になるんですって。
婚約者より優先したり、人の目も憚らずべたべたしてれば破棄になりますわよね。」
「そうですわね…」
「醜聞ですけれど、でもそれだけなら珍しい事でもないのですけれど。
クシュナ嬢の性質の悪い所は、次々と他にも誑し込んでる事ですわ。それも婚約者の居る殿方ばかり。」
「それはまた凄いですわね…。」
自分の物になると執着心がなくなって興味を失うのかしら。
どちらにしろ破棄させられた令嬢方からすれば酷い話だわ……。
「次から次へと誑し込むのですが、誑し込んだ殿方はクシュナ嬢の側から離れず、クシュナ嬢も次から次へと侍らせて、今では取り巻きのようになってるらしいんですの。」
…逆ハーって奴ね。
「最初は下位貴族の殿方や、上位貴族の次男三男が誑し込まれていたのですけれど、今は上位貴族の嫡男に目を付けて誑し込んでるらしいんですの。
私達の婚約者ってほぼ上位貴族でしょう? このまま行くと私達も他人事じゃなくなるんですの。
マリノアは家同士で付き合いが以前会ったらしいから、昔からこんなだったのかと聞きたかったのよ。」
なるほど、下位貴族から始まって上位貴族嫡男へ―――ステップアップしてるわね。
「私の家で付き合いある時からあんな感じだったわね。うちのお兄様も婚約者が居るというのに誑し込まれそうになって、お母様に雷を落とされてましたもの。」
マリノアがすっと通った小さな鼻に皺を寄せ凄く嫌そうな顔をする。
あの温厚そうで人の良さそうなぽやぽやしたマリノアのお兄様なら嫌と言えずに誑し込まれそうだわ。
「婚約者の居る異性には距離感を保ち、みだりに触れてはならない。
許可のない名前呼びは控え、男女として節度を持った態度で周囲に誤解を与えない様に、常に一定の距離感を保って接する事は共通認識ですのに、ことごとく全部破られてるらしいですわ。
あまりに酷い話だから、破棄された令嬢からの嫌がらせの流布かと思いましたけど、違ったようですし。」
「マリノアもミスティアも己の婚約者に目を光らせておいた方がよろしくてよ。
わたくしもバートン様には良く言って聞かせていますもの。」
二人は神妙な顔で頷く。
「サフィリーンは問題ないですわ。そもそもあの変態はサフィリーン以外の令嬢を女性と認識してるかどうかも怪しいですわ。わたくしたまに自分が壁に止まった虫のような気分にさせられますもの。」
「虫!? 何故虫なのか分からないですけれど…殿下が何かしてしまったのなら、申し訳ないわ。
ごめんなさい、ラミア。」
「! 謝罪が欲しい訳ではありませんわ。わたくし達がサフィリーンを何度かランチをお誘いしようとすると、
冷気すら感じる目で見られますのよ。その目を見てると何故かそんな気持ちにさせられるだけですわ。」
うん、本当に、うちの殿下が申し訳ない…。
「でも、やっぱりごめんね…? 殿下はちょっと私に対しておかしい所あるから、そんな目で見ないように言っておくわね。」
次期皇帝でも相手はサフィ限定で変態のクロードな為、サフィはこの手の注意をたまにさせられているのだ。
「余計悪化しそうですわっ、あの変態を刺激すると良くない事が起こりそうで怖い…。やめておいてくれると助かるわ。」
少し必死な感じでラミアは止めた。
サフィはきょとんとした後、しぶしぶ頷く。
「ラミアがそういうのなら。」
それにしても、クシュナ子爵令嬢って肉食女子だなぁ。
誑し込む貴族の爵位が段々上がっていってるっラミアは言ってた。
最終的にはこの国で将来的に一番の権力を持つクロード殿下が最終目標だったりして。
「………。」
――――まさかね?
そうなると、婚約者が未だ居ない方がこの学園で出会いを求めるとするなら婚約者の有無の確認は徹底しなければならないわ。婚約者の居ない殿方とお話する時と、婚約者が居る殿方にお話する時の距離感とかありますでしょう? クシュナ嬢はその距離感が無い方らしいのよ。」
「何となく理解出来たわ。」
「それだけなら、たまにいらっしゃるから噂としては弱いんでしょうけど…クシュナ嬢に目を付けられた婚約者の居る殿方は、何方も婚約が破断になるケースが多いらしいの。」
「破断に…」
サフィはポツリと呟く。
「婚約者の居る殿方の腕に己の胸を押し付けたり、べたべたと触ったりするみたいなの。
名前を呼び捨てや愛称で呼び合って、中庭のベンチでぴったりとくっついて座ったり…
まぁ恋人関係のような態度を取りますのよ。婚約者が居る相手だというのに。」
大胆すぎ! 醜聞が免れないですわ…。
まして貴族の令息令嬢は人目がある所でそのような事をするのが恥であるという教育がされるはず。
クロにやりたい放題されてる私が言うのもおかしいが。
「そして殿方はやがて婚約者よりもクシュナ嬢を最優先するようになり、婚約破棄になるんですって。
婚約者より優先したり、人の目も憚らずべたべたしてれば破棄になりますわよね。」
「そうですわね…」
「醜聞ですけれど、でもそれだけなら珍しい事でもないのですけれど。
クシュナ嬢の性質の悪い所は、次々と他にも誑し込んでる事ですわ。それも婚約者の居る殿方ばかり。」
「それはまた凄いですわね…。」
自分の物になると執着心がなくなって興味を失うのかしら。
どちらにしろ破棄させられた令嬢方からすれば酷い話だわ……。
「次から次へと誑し込むのですが、誑し込んだ殿方はクシュナ嬢の側から離れず、クシュナ嬢も次から次へと侍らせて、今では取り巻きのようになってるらしいんですの。」
…逆ハーって奴ね。
「最初は下位貴族の殿方や、上位貴族の次男三男が誑し込まれていたのですけれど、今は上位貴族の嫡男に目を付けて誑し込んでるらしいんですの。
私達の婚約者ってほぼ上位貴族でしょう? このまま行くと私達も他人事じゃなくなるんですの。
マリノアは家同士で付き合いが以前会ったらしいから、昔からこんなだったのかと聞きたかったのよ。」
なるほど、下位貴族から始まって上位貴族嫡男へ―――ステップアップしてるわね。
「私の家で付き合いある時からあんな感じだったわね。うちのお兄様も婚約者が居るというのに誑し込まれそうになって、お母様に雷を落とされてましたもの。」
マリノアがすっと通った小さな鼻に皺を寄せ凄く嫌そうな顔をする。
あの温厚そうで人の良さそうなぽやぽやしたマリノアのお兄様なら嫌と言えずに誑し込まれそうだわ。
「婚約者の居る異性には距離感を保ち、みだりに触れてはならない。
許可のない名前呼びは控え、男女として節度を持った態度で周囲に誤解を与えない様に、常に一定の距離感を保って接する事は共通認識ですのに、ことごとく全部破られてるらしいですわ。
あまりに酷い話だから、破棄された令嬢からの嫌がらせの流布かと思いましたけど、違ったようですし。」
「マリノアもミスティアも己の婚約者に目を光らせておいた方がよろしくてよ。
わたくしもバートン様には良く言って聞かせていますもの。」
二人は神妙な顔で頷く。
「サフィリーンは問題ないですわ。そもそもあの変態はサフィリーン以外の令嬢を女性と認識してるかどうかも怪しいですわ。わたくしたまに自分が壁に止まった虫のような気分にさせられますもの。」
「虫!? 何故虫なのか分からないですけれど…殿下が何かしてしまったのなら、申し訳ないわ。
ごめんなさい、ラミア。」
「! 謝罪が欲しい訳ではありませんわ。わたくし達がサフィリーンを何度かランチをお誘いしようとすると、
冷気すら感じる目で見られますのよ。その目を見てると何故かそんな気持ちにさせられるだけですわ。」
うん、本当に、うちの殿下が申し訳ない…。
「でも、やっぱりごめんね…? 殿下はちょっと私に対しておかしい所あるから、そんな目で見ないように言っておくわね。」
次期皇帝でも相手はサフィ限定で変態のクロードな為、サフィはこの手の注意をたまにさせられているのだ。
「余計悪化しそうですわっ、あの変態を刺激すると良くない事が起こりそうで怖い…。やめておいてくれると助かるわ。」
少し必死な感じでラミアは止めた。
サフィはきょとんとした後、しぶしぶ頷く。
「ラミアがそういうのなら。」
それにしても、クシュナ子爵令嬢って肉食女子だなぁ。
誑し込む貴族の爵位が段々上がっていってるっラミアは言ってた。
最終的にはこの国で将来的に一番の権力を持つクロード殿下が最終目標だったりして。
「………。」
――――まさかね?
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