下ル下ル商店街

馬 並子

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壁尻ウサギ看板

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「へぇ、壁尻ウサギ看板くん、ちゃんと働いてんのね。ギャンブル狂だったのに偉いじゃん。一回五百円てマジで小銭だけど」
感心しつつも単価の安さを鼻で笑ったチュンを、『バトラー』が「とんでもない」と嗜める。
「時給にすればなかなかのものですよ。碌な職歴なし、資格なし、特技といえば尻から物をひり出すことくらいという、工業高校中退の二十代男性です。スペックを考えれば、十分立派に稼いでいると言えるでしょう。一日たったの五時間労働で、きっちり休憩も与えています。好きなことを仕事にできて、彼にとっても良い職場と言えるのではないでしょうか」
そこに、当人の尊厳や将来といった視点はない。だが、ギャンブルで作った借金をギャンブルで返すような生活をしていたことを考えると、『バトラー』の言う通り、しっかり労働するようになっただけ立派だ。

壁の一部が自動で回転するという大掛かりな仕掛け看板を作れたのは、もちろんあのビンゴゲームで勝利した中年男が出資したおかげだった。ウサギを見守る監視カメラはもちろん、体調に異変があればすぐに『キッチュ』に知らせるシステムまで組み込まれた看板の製作費は、ビンゴゲームの賞金と同程度の額だった。
つまり、遊技場『キッチュ』は、下ル下ル商店街入り口広場の新しい名物となった壁尻ウサギ看板を、全く懐を痛めずに手に入れたことになる。看板に使っているウサギは、自分の食い扶持程度は自分で稼いでいるし、いいことづくめだ。

もちろん、看板を設置した当初は、ウサギも客引きなどできなかった。
「なんで俺がこんなこと!てめぇ絶対頭おかしいだろ!」
壁に固定され身動きできない身でも、そんな風に『バトラー』を罵っていたものだ。最初の客が物珍しさに五百円玉を投入し、壁が反転し始めた時には、真っ青な顔で「嫌だ!頼む!頼むからぁっ!」と涙を流していた。
だがそれが今や、客が五百円を支払ってくれると、「ありがとぉ、早く、早くぅっ」ととろける笑顔で壁の向こうに飲み込まれていくようになったのだ。随分成長したものだ。

しかし、ウサギにとって悲しいことに、なかなか『お股から白い嬉し涙』は流せずにいる。ビンゴゲームの最中に使われた薬の影響で、単純な刺激では射精できなくなっているのだ。
客はウサギ自身の満足など考えず、己の欲を満たすためだけに腰を振る。中には遊び半分でゴミやおひねりを入れていく女もいるが、彼女たちも嗜虐を楽しんでいるという意味では性器を挿入する男と同様だ。
人間ををただの穴として扱う嗜虐の悦び、そして、それを周囲に見せ付ける快感に酔っている。
ウサギの敏感な肉壁は、単純な挿入やピストンでも激しい快感を得るようになってはいるが、それだけでは絶頂まで程遠い。しかも、五分ずつの細切れとなると、もどかしさは推して知るべしである。
結果、ウサギは常に尻穴をひくつかせ、何か入れてくれと誰彼構わず懇願する破目になっているのだ。

「あぁ、そろそろ休憩時間ですね。元ギャンブル狂の幸せそうな顔、どうぞあなたも近くで見てやってください」
懐中時計を確認した『バトラー』は穏やかにそう言うと、チュンを連れて一生懸命客をひいているウサギ看板へと歩み寄った。
その姿を目ざとく見つけ、ウサギの顔がぱぁっと輝く。
「休憩だ!やったぁ!」
子供のように無邪気に喜びをあらわにし、嬉しくて仕方がない様子で、手錠をかけられた手を『バトラー』に向けてあらん限りに伸ばしている。
「ご苦労様」
アタッシュケースをウサギの手の届く位置に持ち上げてやると、嬉しげにそれを撫で回し、「早く、早く下さい」とせがんだ。

『バトラー』は目立たない位置にある小さな鍵穴に鍵を差し込み、カチリと回す。すると、コインを入れることなく、壁が反転を始めた。
「あぁ、早く早くはやく……」
ウサギの声が遠くなり、下半身が現れて回転が止まると、もう声は完全に聞こえなくなる。
だが、言葉以上の饒舌さで、濡れた秘肛がひくんひくんと刺激を求めている。

近くで見ると、そこからは大量の白濁がとろとろと漏れていた。先ほどの中年男は途中になってしまったようだが、既に誰かに種付けされていたようだ。もしくはあの中年男が本日数回目のトライだったのか。
しかし、バニーコスチュームの中で固く張り詰めた勃起には、射精の名残は見られない。可哀想に、今日も尻を好き放題に犯されながら、一度も極められていないのだ。

『バトラー』は随分弛んでいる濡れた窄まりへ、アタッシュケースから取り出したゴルフボールを次々と詰め込み始めた。
当初はビンゴ玉を詰めていたのだが、拡張が進んだことで必要な玉数も多くなったし、小さな玉を詰めるのは手間がかかる。ビンゴ玉の数倍の大きさであるゴルフボールなら個数が少なくてすむ上、ゴツゴツした表面が程よく刺激にもなるため、一石二鳥なのだ。

ウサギの蕩けた尻穴は、直径四センチを超えるゴルフボールを、かぷんかぷんと楽に飲み込んでいく。壁に阻まれ、ウサギの声は聞こえて来ないが、きっと「ああっ、入ってきた、入ってきたぁ」と悦んでいることだろう。
さっさと済ませようというかのように、『バトラー』は機械的にボールを詰め込み続けた。
そしてようやく窄まりのぎりぎりまで詰め終えると、アタッシュケースから液体の入ったシリンジを取り出す。
ゲームで使ったあの媚薬入りのローションだ。
もちろん、肛虐と排出の快感はもうすっかり刷り込まれているので、ウサギにわざわざこの薬を使う必要はない。使用目的は別にあった。

呼吸に合わせてゴルフボールが見え隠れする窄まりに、大型のシリンジの先端を捻じ込み、躊躇無く全量を注入する。
その様を、いつのまにか近くに寄ってきていた観光客たちが、怖いもの見たさといった様子で見つめていた。
『バトラー』は誰にともなく説明する。

「今浣腸したのは、少々気持ちよくなる薬の入ったローションです。薬自体に依存性はありませんのでご心配なく。ですが、この薬を使用した状態で得た刺激は、快感として脳と体に刻み込まれ、もうそれなしでは生きていけなくなります。こちらのウサギには、ほぼ毎日このようにボールを詰めて薬を浣腸していますので、もう何かをひり出しながらでなくては射精できません。今頃はきっと、射精直前の快感に悶えていることでしょう」

淡々と事実を述べる『バトラー』の言葉に、観光客達が息を飲む。そんなまさか、という空気が流れる中、それ以上の説明はせず、『バトラー』は再度鍵を使って、さっさと壁を反転させてしまった。
ゴルフボールを詰められ媚薬入りローションを浣腸され、ぶるぶると震える尻が壁の向こうに飲み込まれる。
代わりに、再びウサギの顔が広場に現れた。

「だめだめ出ちゃう!熱いよぉ、痒いよぉ、あぁ……!イ、イイよぉ、出ちゃうよぉ……」
酷く気持ち良さそうな声が、『バトラー』の説明を雄弁に肯定していた。眉根を寄せ、震える唇から涎を垂らし、堪らないといった様子で首を左右に振っている。
ウエストを壁にがっしりと挟まれ、足首を鉄環で固定されているせいで、腰を振りたくても振れない。つまり、勃起を壁に擦り付けることもできないので、純粋に尻の穴からしか刺激を得られていないはずだ。
ゴルフボールを詰められ、ローション浣腸を施された、尻穴からしか。
だというのにウサギは、「あぁ、も、出そぉ、きもちい、きもちいぃ」と快感を訴えていた。

「五分お待ちなさい。勝手に漏らしたら三日間貞操帯ですよ」
『バトラー』の言葉はもはや恒例となった脅しだが、ウサギはひぃと悲鳴を上げ、「はい……はい……」と必死に頷く。
以前罰として与えた強制的な禁欲が、余程骨身に沁みたのだろう。顔を真っ赤にし、必死に堪えている。
だが、ただでさえ腹がパンパンになる量のボールと浣腸だ。普通の人間でも苦しさに耐え切れず、すぐに出してしまうだろう。
それが、排出の快感を嫌というほど刷り込まれた身に、熱痒くなる媚薬入りとあれば、栓も無しにただ耐えるというのは拷問でしかなかった。

「ぅく……うぅ……出したい……出したいよぉ……」
手錠をかけられた不自由な手が、時に自らの頭を抱え、時に助けを求めるように野次馬に伸ばされる。ウサギは頭を打ち振るい、涙を流して窮状を訴えた。
「苦しい……熱いぃ……出ちゃう……出ちゃうよぉ……助けて……」

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