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四人ともいったん部屋を出て私を追おうとしたようだけれど、私が振り向きもせずに「一人にして下さいな!!」と喚いたのでおとなしくもう一度部屋へ入ったようだ。
長い裾をからげてガシガシ歩く私を衛兵達はうろたえて取り囲み、どちらへ、とかお供を、とか言っているけれど、無視してしばらく歩き続け、とりあえず自室へと戻った。
おかえりなさいませ、とミリヤムさんとヘンリエッタさんが丁重に出迎えてくれたけれど、イラつく私はろくな返事もせずに簡潔に、「これ脱ぐの手伝って」と言った。
強風に煽られても絶対に捲れ上がらないように(特に首元を守るために)外衣(マント)と身ごろを縫い込めてあるから一人で脱ぐのは絶対に無理なのだ。
ヘンリエッタさんは、「こんなにお綺麗ですのに」と柔和な顔を曇らせて呟いたけれど、そこは二人とも有能な侍女。ミリヤムさんが目配せでもしたのかどうか、後は何も言わずに手際よく衣裳を脱がせてくれて、気楽な部屋着を持ってきてくれたのだけれど、私はそれを断って訓練のときの恰好を要求した。
動きやすいシャツ、伸縮性のあるぴったりしたズボン、なめし革のとても柔らかい長靴。かっちりとした表革の、軍服の時の靴とはまた違い、体術の訓練のときに「裸足ではない」という感触で履けるように作ってもらったものだ。
それらに着替え、お揃いのなめし革の袖なし胴衣(いわゆるベストだ)を着て剣帯を装着。一人だし、真剣を使おうと思ったから刃先を潰していない愛剣を吊るす。胴衣の中にはびっしり刀子が仕込んである。
瞬く間に女剣士状態になった私を、侍女さん達は憂わしげに眺めている。
いつもはお目目キラキラで私の男装姿を振り仰ぐのに、私の不機嫌のわけがわからず何と言っていいかわからないのだろう。
直截に尋ねようとはしない、けれど、優しく心から私を案じてくれているその目線に耐えかねて、私はあえて素っ気なく「ちょっと出てきますから」とだけ言って部屋を出た。
衛兵達がまたもやおろおろと私を囲み、追ってくる。
特に、責任者らしい兵士が「本日はもう外出の予定はなかったのでは」と言いやがったので(我ながらかなり柄が悪くなってきた)、私は思い切り睨みつけ、
「予定は未定、しばしば変更。わかったら今日はもういいから解散!」
と言い捨てて一気に走りだす。
姫君、とか、お待ち下さいお供を、とかわあわあ言っているのが聞こえるけれど、知ったことか。ついてくる根性のある奴だけ来たらいいと思って、久しぶりに、「必殺・踊場経由・階段下り」を実行し、文字通り飛ぶような速さで最上階から地階へと下りきる頃には追いつく兵士はゼロになっていた。
馬房へ行ってステラを連れて早駆けをしたいのだけれど、そこへ着くまでに兵士達に追いつかれる恐れがあるし、なによりステラも私もだいぶ面が割れてしまって、騎乗すると目立ちすぎてしまう。
──森へ行こう。
私は頭の中に地図を広げながらめあての森に向かうことにした。そこなら、思い切り剣を振り回せるし、木を的にして刀子の練習もできる。あずまやなどの整備もなく、半端に城からは遠いからあまりひとはいないはずだ。
三公爵の城にはそれぞれに離宮や迎賓館などもあり、大小の馬場、出兵前に訓練に使った馬場があり、兵士の宿舎があり、小さいけれど森や湖も点在して、とにかく敷地は広大だ。背後は道の整備のない山があってその向こうは崖と荒野とのこと。天然の要害に抱かれた城。それが、三公爵の居城なのである。
馬ならすぐだけれど、ジョギングがわりに小半時走ると、目的地に到着。森を抜ければ小さい湖があるはず。森で自主トレをしたら湖畔で一休みをしよう。
途中、けっこうな数の人々とすれ違ったけれど、意外に食い下がってくる者はいない。あれ、とか、もしや、とか声は聞こえるけれど、ちょっとしたジョギングとはいえそれなりの速度で走っているから、用事のある面々は追うわけにはゆかないのだろう。
後ろを向いても衛兵らしき姿は見えない。平服の男が数名いるけれど、見覚えのある顔ではない。
衛兵たち、ふがいない。
一人になりたかったし、矛盾しているのだろうけれど、私は思わず彼らを叱咤したくなった。
わざと追いつきにくくするように走ったりコース取りを考えたとはいえ、誰もついてこられないとは問題があるのではないか。
城に戻ったら自分の衛兵たちの強化計画でも考えるか。
実際、元の世界でもたくさんの兵士たちに訓練を施した。
銃撃と体術が主だったけれど、尾行や狙撃のやり方なども教えていた。
特に、感覚を研ぎ澄ませ、気配を読み取れ、って、よく指導したっけ。私自身、ありとあらゆる体術を子供の頃からやっているけれど、武術の種類は違えど、お師匠様方からは共通した指示を受けたことを思い出す。
感覚、気配。「負けない」ためにはこれを磨かなくては話にならないと。どんなに練習しても技術を習得しても、これらを体感できなければ「超一流」にはなれないのだと。
全員「超一流」になれないとしても、一部はなるかもしれない。少なくとも、兵士達の質の底上げにつながるのならやる価値はあるかも。
自分のことばかりではなくて、兵士達の質の向上も頑張ってみよう。
──森に着いた。
城の敷地内とは思えぬほどみっしりとたくさんの広葉樹が支配する森。でも、じめじめ感がないのはさすが四季を通じて快適な気候を謳歌するという「アルバ」らしい。爽やかな森。
いい森だな。ツリーハウスでも作ったら快適だろうな。
私は落ちた枝を踏んで森に入り、緑と土の匂いを嗅ぎながら考えた。
一人きりになって走ってきただけでもそれなりの気分転換ができたようだ。
自分を鍛えたり、自分が学習することばかりに気を取られていたけれど、せっかくひとの上に立つ、立たなくてはならない位置にいるのであれば、私が力になれることはありそうだ。
パキン、パキン。小枝を折って森の中へ入ってゆく。
道に迷うほど鬱蒼とした森ではないけれど、一応念のために。短剣で木の幹にも簡単な印をつける。
さっきはなんであんなに苛々したんだろう。
気分転換できたということは頭が冷えたということだ。
私は先ほどまでのやりとりを脳内で再生してみた。
結論から言えば、私は怒り過ぎだ。
何度か映像と音声を脳内でリプレイしてから、私は肩を落として考えた。
あまりにめまぐるしく事が運び、先へ先へと展開する上、自分自身が国家単位の標的になるというろくでもないおまけまでくっついて、「ちょっと待ってよ!」と狼狽した。その裏返しだろうと思う。
あまりにナチュラルに自分が夫になるだの婚儀の時期を早めるだの四人目の夫だの、と言っているから、「あなた方、私にちゃんと求婚(プロポーズ)しましたか!?」って思ったのだけれど、している。
落ち着いて思い出せば、彼らは強引だけれどちゃんと言葉にも態度にも表して私に気持ちを伝えてくれていた。
シグルド様は行軍中に真剣に想いを伝えてくれたし、ユリアスは?ちょっと微妙な気もするけれど傍にいてほしいとかなんとか言われたような気がする。オルギールはまだ昨日、今朝方のことだけれどはっきりと口にしてくれていた。
外堀を埋められて拉致だの暗殺だの言われて、なんとなく反発したくなったのかもしれない。
外堀なんてなくても、彼らの様子から察するに、私への想いは揺るぎのないものなのだろう。
しまった。怒り過ぎた。ばか、とか言ってしまった。
気分転換はだんだんと反省会へと変貌してゆく。
あ、でも。
レオン様に対する話だけは、べつに反省する必要はないだろうか。
ちょっとだけ気を取り直して、私はまた近くの木の幹に軽く十字を刻む。
はじめは、レオン様は私を他の公爵と共有することに大して抵抗がないと思っていた。シグルド様の「お城訪問」の時、私が彼に手を取られてフリーズしていても止めに入るわけではなかったし。
あの時は、私のほうがその様子にショックを受けてレオン様を詰ったっけ。
でも今は。
レオン様を愛しているのと同時に、オルギールにも恋をしている。あとの二人の公爵様のことだって、ふとした折にどきどきするほど惹かれている。かなり好きなのだろうし、私へ向けられる感情の強さに多少まだ戸惑うことはあっても全く嫌悪はない。
レオン様のほうが最近ヤキモチがひどいような。
下手をすると、レオン様のヤキモチは私へのお仕置きに変換されるような気がするけれど、でも「妻を共有する」時期が実際に差し迫ってきているから、苛立っておられるのではないだろうか。頭では理解していても、本当なら私を独占したいのに、と。それを感じるから、後の三人はもう少しレオン様に対して多少の遠慮というか気遣いがあってもいいのではないか。そう思ったのだけれど。
(不本意ながら結果的には完全に開き直られて、レオン様自身にまで苦笑されてしまった)
でも、レオン様の胸中を考えると、それこそ理屈っぽい私にはとてもつらい。苦しい。複数の夫、という概念を押し付けたのはそちらでしょ、と開き直れば楽なのだろうし、オルギールにいつも言われる「考えずに感じるだけ」にしていればいいのかもしれないけれど、こればかりは指導されても簡単に自分の思考回路を変えることはできない。
だからせいぜい、寝所では我を忘れるほど激しく抱いてほしいと思うのだ。
感じやすくて素直なからだ、といつも愛でられるけれど、恥ずかしくともそれでいいと思っている。寝所では与えられる快楽を享受するだけでいいから。そして、私のからだで気持ちよくなってくれている。それがわかれば、私も幸せだから。
まだ、三人と一人、合計四人の夫を持つ覚悟ができていなかった。
そこへ、「標的」「拉致」「暗殺」と物騒なワードを聞かされ、婚儀の時期も早められるようでさらにうろたえた。
そのせいでやたらに苛々したんだろう。
──戻ったら彼らに謝ろう。あれは八つ当たりみたいなものだ。
ひとり反省会にとりあえずのけりをつけるべく、ふうぅぅぅ……、と大きく、深く息を吐いたその時。
パキリ。
明らかに私ではない、違う誰かが踏み折る枝の音がした。
長い裾をからげてガシガシ歩く私を衛兵達はうろたえて取り囲み、どちらへ、とかお供を、とか言っているけれど、無視してしばらく歩き続け、とりあえず自室へと戻った。
おかえりなさいませ、とミリヤムさんとヘンリエッタさんが丁重に出迎えてくれたけれど、イラつく私はろくな返事もせずに簡潔に、「これ脱ぐの手伝って」と言った。
強風に煽られても絶対に捲れ上がらないように(特に首元を守るために)外衣(マント)と身ごろを縫い込めてあるから一人で脱ぐのは絶対に無理なのだ。
ヘンリエッタさんは、「こんなにお綺麗ですのに」と柔和な顔を曇らせて呟いたけれど、そこは二人とも有能な侍女。ミリヤムさんが目配せでもしたのかどうか、後は何も言わずに手際よく衣裳を脱がせてくれて、気楽な部屋着を持ってきてくれたのだけれど、私はそれを断って訓練のときの恰好を要求した。
動きやすいシャツ、伸縮性のあるぴったりしたズボン、なめし革のとても柔らかい長靴。かっちりとした表革の、軍服の時の靴とはまた違い、体術の訓練のときに「裸足ではない」という感触で履けるように作ってもらったものだ。
それらに着替え、お揃いのなめし革の袖なし胴衣(いわゆるベストだ)を着て剣帯を装着。一人だし、真剣を使おうと思ったから刃先を潰していない愛剣を吊るす。胴衣の中にはびっしり刀子が仕込んである。
瞬く間に女剣士状態になった私を、侍女さん達は憂わしげに眺めている。
いつもはお目目キラキラで私の男装姿を振り仰ぐのに、私の不機嫌のわけがわからず何と言っていいかわからないのだろう。
直截に尋ねようとはしない、けれど、優しく心から私を案じてくれているその目線に耐えかねて、私はあえて素っ気なく「ちょっと出てきますから」とだけ言って部屋を出た。
衛兵達がまたもやおろおろと私を囲み、追ってくる。
特に、責任者らしい兵士が「本日はもう外出の予定はなかったのでは」と言いやがったので(我ながらかなり柄が悪くなってきた)、私は思い切り睨みつけ、
「予定は未定、しばしば変更。わかったら今日はもういいから解散!」
と言い捨てて一気に走りだす。
姫君、とか、お待ち下さいお供を、とかわあわあ言っているのが聞こえるけれど、知ったことか。ついてくる根性のある奴だけ来たらいいと思って、久しぶりに、「必殺・踊場経由・階段下り」を実行し、文字通り飛ぶような速さで最上階から地階へと下りきる頃には追いつく兵士はゼロになっていた。
馬房へ行ってステラを連れて早駆けをしたいのだけれど、そこへ着くまでに兵士達に追いつかれる恐れがあるし、なによりステラも私もだいぶ面が割れてしまって、騎乗すると目立ちすぎてしまう。
──森へ行こう。
私は頭の中に地図を広げながらめあての森に向かうことにした。そこなら、思い切り剣を振り回せるし、木を的にして刀子の練習もできる。あずまやなどの整備もなく、半端に城からは遠いからあまりひとはいないはずだ。
三公爵の城にはそれぞれに離宮や迎賓館などもあり、大小の馬場、出兵前に訓練に使った馬場があり、兵士の宿舎があり、小さいけれど森や湖も点在して、とにかく敷地は広大だ。背後は道の整備のない山があってその向こうは崖と荒野とのこと。天然の要害に抱かれた城。それが、三公爵の居城なのである。
馬ならすぐだけれど、ジョギングがわりに小半時走ると、目的地に到着。森を抜ければ小さい湖があるはず。森で自主トレをしたら湖畔で一休みをしよう。
途中、けっこうな数の人々とすれ違ったけれど、意外に食い下がってくる者はいない。あれ、とか、もしや、とか声は聞こえるけれど、ちょっとしたジョギングとはいえそれなりの速度で走っているから、用事のある面々は追うわけにはゆかないのだろう。
後ろを向いても衛兵らしき姿は見えない。平服の男が数名いるけれど、見覚えのある顔ではない。
衛兵たち、ふがいない。
一人になりたかったし、矛盾しているのだろうけれど、私は思わず彼らを叱咤したくなった。
わざと追いつきにくくするように走ったりコース取りを考えたとはいえ、誰もついてこられないとは問題があるのではないか。
城に戻ったら自分の衛兵たちの強化計画でも考えるか。
実際、元の世界でもたくさんの兵士たちに訓練を施した。
銃撃と体術が主だったけれど、尾行や狙撃のやり方なども教えていた。
特に、感覚を研ぎ澄ませ、気配を読み取れ、って、よく指導したっけ。私自身、ありとあらゆる体術を子供の頃からやっているけれど、武術の種類は違えど、お師匠様方からは共通した指示を受けたことを思い出す。
感覚、気配。「負けない」ためにはこれを磨かなくては話にならないと。どんなに練習しても技術を習得しても、これらを体感できなければ「超一流」にはなれないのだと。
全員「超一流」になれないとしても、一部はなるかもしれない。少なくとも、兵士達の質の底上げにつながるのならやる価値はあるかも。
自分のことばかりではなくて、兵士達の質の向上も頑張ってみよう。
──森に着いた。
城の敷地内とは思えぬほどみっしりとたくさんの広葉樹が支配する森。でも、じめじめ感がないのはさすが四季を通じて快適な気候を謳歌するという「アルバ」らしい。爽やかな森。
いい森だな。ツリーハウスでも作ったら快適だろうな。
私は落ちた枝を踏んで森に入り、緑と土の匂いを嗅ぎながら考えた。
一人きりになって走ってきただけでもそれなりの気分転換ができたようだ。
自分を鍛えたり、自分が学習することばかりに気を取られていたけれど、せっかくひとの上に立つ、立たなくてはならない位置にいるのであれば、私が力になれることはありそうだ。
パキン、パキン。小枝を折って森の中へ入ってゆく。
道に迷うほど鬱蒼とした森ではないけれど、一応念のために。短剣で木の幹にも簡単な印をつける。
さっきはなんであんなに苛々したんだろう。
気分転換できたということは頭が冷えたということだ。
私は先ほどまでのやりとりを脳内で再生してみた。
結論から言えば、私は怒り過ぎだ。
何度か映像と音声を脳内でリプレイしてから、私は肩を落として考えた。
あまりにめまぐるしく事が運び、先へ先へと展開する上、自分自身が国家単位の標的になるというろくでもないおまけまでくっついて、「ちょっと待ってよ!」と狼狽した。その裏返しだろうと思う。
あまりにナチュラルに自分が夫になるだの婚儀の時期を早めるだの四人目の夫だの、と言っているから、「あなた方、私にちゃんと求婚(プロポーズ)しましたか!?」って思ったのだけれど、している。
落ち着いて思い出せば、彼らは強引だけれどちゃんと言葉にも態度にも表して私に気持ちを伝えてくれていた。
シグルド様は行軍中に真剣に想いを伝えてくれたし、ユリアスは?ちょっと微妙な気もするけれど傍にいてほしいとかなんとか言われたような気がする。オルギールはまだ昨日、今朝方のことだけれどはっきりと口にしてくれていた。
外堀を埋められて拉致だの暗殺だの言われて、なんとなく反発したくなったのかもしれない。
外堀なんてなくても、彼らの様子から察するに、私への想いは揺るぎのないものなのだろう。
しまった。怒り過ぎた。ばか、とか言ってしまった。
気分転換はだんだんと反省会へと変貌してゆく。
あ、でも。
レオン様に対する話だけは、べつに反省する必要はないだろうか。
ちょっとだけ気を取り直して、私はまた近くの木の幹に軽く十字を刻む。
はじめは、レオン様は私を他の公爵と共有することに大して抵抗がないと思っていた。シグルド様の「お城訪問」の時、私が彼に手を取られてフリーズしていても止めに入るわけではなかったし。
あの時は、私のほうがその様子にショックを受けてレオン様を詰ったっけ。
でも今は。
レオン様を愛しているのと同時に、オルギールにも恋をしている。あとの二人の公爵様のことだって、ふとした折にどきどきするほど惹かれている。かなり好きなのだろうし、私へ向けられる感情の強さに多少まだ戸惑うことはあっても全く嫌悪はない。
レオン様のほうが最近ヤキモチがひどいような。
下手をすると、レオン様のヤキモチは私へのお仕置きに変換されるような気がするけれど、でも「妻を共有する」時期が実際に差し迫ってきているから、苛立っておられるのではないだろうか。頭では理解していても、本当なら私を独占したいのに、と。それを感じるから、後の三人はもう少しレオン様に対して多少の遠慮というか気遣いがあってもいいのではないか。そう思ったのだけれど。
(不本意ながら結果的には完全に開き直られて、レオン様自身にまで苦笑されてしまった)
でも、レオン様の胸中を考えると、それこそ理屈っぽい私にはとてもつらい。苦しい。複数の夫、という概念を押し付けたのはそちらでしょ、と開き直れば楽なのだろうし、オルギールにいつも言われる「考えずに感じるだけ」にしていればいいのかもしれないけれど、こればかりは指導されても簡単に自分の思考回路を変えることはできない。
だからせいぜい、寝所では我を忘れるほど激しく抱いてほしいと思うのだ。
感じやすくて素直なからだ、といつも愛でられるけれど、恥ずかしくともそれでいいと思っている。寝所では与えられる快楽を享受するだけでいいから。そして、私のからだで気持ちよくなってくれている。それがわかれば、私も幸せだから。
まだ、三人と一人、合計四人の夫を持つ覚悟ができていなかった。
そこへ、「標的」「拉致」「暗殺」と物騒なワードを聞かされ、婚儀の時期も早められるようでさらにうろたえた。
そのせいでやたらに苛々したんだろう。
──戻ったら彼らに謝ろう。あれは八つ当たりみたいなものだ。
ひとり反省会にとりあえずのけりをつけるべく、ふうぅぅぅ……、と大きく、深く息を吐いたその時。
パキリ。
明らかに私ではない、違う誰かが踏み折る枝の音がした。
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