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第5章 ホラムでの決戦
cys:93 ラストパーツ
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───早く来いカミュ……!
心でそう零したノーティス。
たくさん食べた後、ソファーに座り背を預けたまま目を閉じくつろいでいるように見せているが、内心は気が気じゃないのだ。
本当は一刻も早く助けに行きたい。
だがスマート・ミレニアムを、そして、ホラムを真の意味で守る為には、どうしてもここで動くわけにはいかない事情がある。
───師匠、これでいいんですよね……
そんなノーティスの気持を分かっているロウは、静かに見下ろす。
「ノーティス、もうそろそろだ」
「ああ……」
そう答えたノーティスに向かい、レイは少し不満そうな顔を向けてきた。
このままジッとしているのは、流石にもうどうかと思い始めているから。
「ノーティス、アナタ本当にこうしてていいの?」
すると、ノーティスはスッと瞳を開きレイを静かに見つめた。
「逆にダメな理由があるのか?」
ソファーに深々と座り両手を後ろに組んだまま答えたノーティスに、ジークも怪訝そうな顔を向ける。
レイと気持ちが同じだからだ。
「ノーティス。お前さん、ちょっと冷た過ぎやしないか。確かにアイツらが気に食わないのはわかるけどよ……」
「別に、そんなんじゃないさ」
「いや、明らかにそーだろ。アイツらも今頃苦戦して、俺等を追い返した事後悔してるに違ぇねぇ。だからよ、もう充分じゃねぇか?」
ジークがそう言ってノーティスに両手を広げると、ノーティスは寂しげな面持ちを浮かべる。
「足りないさ……」
───まだ、最後のパーツが揃っていない。
すると、レイがキッと睨んできた。
「ノーティス、確かに私のせいよ。でも……こんなの美しくない! 例え相手が間違ってても、私は正しく美しさを貫くわ!」
「そうだぜノーティス。それに、この国は先生の想いがこもってるんだ! お前さんだって、同じ気持ちだろ?!」
ジークもレイと一緒に再び訴えると、ノーティスはソファーに座ったまま背を離し手を前に組んで軽くうつむく。
2人の気持が痛い程分かるから。
「レイ、キミの気持ちは正しく美しい。それに、ジーク。俺も同じ気持ちだ。けど、だからこそ待ってほしい……」
「どういう事よ! もういい、私1人でも彼らを助けにいくわ」
「ノーティス、俺も分からねぇよ……!」
その時、メティアが2人に叫ぶ。
「レイ! ジーク!」
その声に振り返った2人を、メティアは悲しく見つめた。
「待ってよ2人共。気持ちは分かるけど、今度はノーティスを信じて! お願い……」
涙を滲ませたメティアの瞳に見つめられ、レイとジークはどうしていいか分からなくなってしまった。
自分達の今の考えは、どう見ても間違っていないと思ってる。
でも同時に、さっき自分達がノーティスの真意を分かっていなかったのも事実だからだ。
「もうっ……」
「チッ……! だったら教えてくれよノーティス。お前さんが今どうして動かねぇのかを」
「そうよ。じゃないと納得できない」
そう告げられたノーティスは、スッと顔を上げ2人を見つめた。
───確かに、そろそろ伝えておいた方がよさそうだな。
「分かったよ、レイ、ジーク。そしてメティアも聞いてくれ。俺がこうしているのは……」
ノーティスがそこまで言った時、皆の前にザッ! と、現れた。
皇帝イフリート・カミュが!
そして、カミュはノーティスの前にドカドカと近寄ると、怒りに満ちた眼差しで見下ろす。
「キサマ……こんな所で何をしている!」
怒りと威厳に満ちた声がその場に響いた。
だがノーティスは動じずソファーに座ったままカミュを見上げ、やっと来たかという思いと共に軽く微笑んだ。
「見て分からないのか? 食後の休憩だよ」
「よくもぬけぬけと……キサマは今、外が……我が国がどうなっているのか分かっているのか!」
「知ってるよ。凄いヤツが攻め込んで来てるよな」
「だったらなぜ動かぬ! キサマはそれでも勇者か!」
カミュは怒鳴りつけてきたが、ノーティスは全く臆する事なく静かに見返す。
「勇者だよ。アナタに戦力外通知をされ契約を解除された、王宮魔道士達のリーダーだ」
「キサマ……だったら今すぐ命ずる。奴らを倒してこい!」
「フッ、それは聞けないな」
軽い笑みを向けてきたノーティスに、カミュは怒りに顔を歪ませた。
「何だと……キサマ! 皇帝の命令は絶対だ! 分をわきまえろ!!」
するとノーティスは、ソファーからスッと立ち上がりカミュを見据えた。
「カミュ……アナタは勘違いをしているようだ」
「勘違いだと?」
「あぁ。俺達はアナタに戦力外通知をされ、その時点で仕事は終わったんだ。だから今皆と旅行を楽しんでるのさ」
「……何が言いたい」
「分かってるだろ。仕事が終了した以上、俺の従うべきはカミュ、アナタじゃない。我がスマート・ミレニアムの教皇だ」
「ぐっ……」
「だから、アナタの命令は聞けない」
「おのれ……」
そう言って睨んできたカミュに向かい、ニヤリと笑うノーティス。
それを見たレイは、一瞬片手で目を擦った。
───ア、アルカナート?
レイが一瞬見間違えてしまうような笑みを浮かべたまま、ノーティスはカミュを見据える。
「ただカミュ。俺には、この件で教皇からの代理権を授与されてる」
心でそう零したノーティス。
たくさん食べた後、ソファーに座り背を預けたまま目を閉じくつろいでいるように見せているが、内心は気が気じゃないのだ。
本当は一刻も早く助けに行きたい。
だがスマート・ミレニアムを、そして、ホラムを真の意味で守る為には、どうしてもここで動くわけにはいかない事情がある。
───師匠、これでいいんですよね……
そんなノーティスの気持を分かっているロウは、静かに見下ろす。
「ノーティス、もうそろそろだ」
「ああ……」
そう答えたノーティスに向かい、レイは少し不満そうな顔を向けてきた。
このままジッとしているのは、流石にもうどうかと思い始めているから。
「ノーティス、アナタ本当にこうしてていいの?」
すると、ノーティスはスッと瞳を開きレイを静かに見つめた。
「逆にダメな理由があるのか?」
ソファーに深々と座り両手を後ろに組んだまま答えたノーティスに、ジークも怪訝そうな顔を向ける。
レイと気持ちが同じだからだ。
「ノーティス。お前さん、ちょっと冷た過ぎやしないか。確かにアイツらが気に食わないのはわかるけどよ……」
「別に、そんなんじゃないさ」
「いや、明らかにそーだろ。アイツらも今頃苦戦して、俺等を追い返した事後悔してるに違ぇねぇ。だからよ、もう充分じゃねぇか?」
ジークがそう言ってノーティスに両手を広げると、ノーティスは寂しげな面持ちを浮かべる。
「足りないさ……」
───まだ、最後のパーツが揃っていない。
すると、レイがキッと睨んできた。
「ノーティス、確かに私のせいよ。でも……こんなの美しくない! 例え相手が間違ってても、私は正しく美しさを貫くわ!」
「そうだぜノーティス。それに、この国は先生の想いがこもってるんだ! お前さんだって、同じ気持ちだろ?!」
ジークもレイと一緒に再び訴えると、ノーティスはソファーに座ったまま背を離し手を前に組んで軽くうつむく。
2人の気持が痛い程分かるから。
「レイ、キミの気持ちは正しく美しい。それに、ジーク。俺も同じ気持ちだ。けど、だからこそ待ってほしい……」
「どういう事よ! もういい、私1人でも彼らを助けにいくわ」
「ノーティス、俺も分からねぇよ……!」
その時、メティアが2人に叫ぶ。
「レイ! ジーク!」
その声に振り返った2人を、メティアは悲しく見つめた。
「待ってよ2人共。気持ちは分かるけど、今度はノーティスを信じて! お願い……」
涙を滲ませたメティアの瞳に見つめられ、レイとジークはどうしていいか分からなくなってしまった。
自分達の今の考えは、どう見ても間違っていないと思ってる。
でも同時に、さっき自分達がノーティスの真意を分かっていなかったのも事実だからだ。
「もうっ……」
「チッ……! だったら教えてくれよノーティス。お前さんが今どうして動かねぇのかを」
「そうよ。じゃないと納得できない」
そう告げられたノーティスは、スッと顔を上げ2人を見つめた。
───確かに、そろそろ伝えておいた方がよさそうだな。
「分かったよ、レイ、ジーク。そしてメティアも聞いてくれ。俺がこうしているのは……」
ノーティスがそこまで言った時、皆の前にザッ! と、現れた。
皇帝イフリート・カミュが!
そして、カミュはノーティスの前にドカドカと近寄ると、怒りに満ちた眼差しで見下ろす。
「キサマ……こんな所で何をしている!」
怒りと威厳に満ちた声がその場に響いた。
だがノーティスは動じずソファーに座ったままカミュを見上げ、やっと来たかという思いと共に軽く微笑んだ。
「見て分からないのか? 食後の休憩だよ」
「よくもぬけぬけと……キサマは今、外が……我が国がどうなっているのか分かっているのか!」
「知ってるよ。凄いヤツが攻め込んで来てるよな」
「だったらなぜ動かぬ! キサマはそれでも勇者か!」
カミュは怒鳴りつけてきたが、ノーティスは全く臆する事なく静かに見返す。
「勇者だよ。アナタに戦力外通知をされ契約を解除された、王宮魔道士達のリーダーだ」
「キサマ……だったら今すぐ命ずる。奴らを倒してこい!」
「フッ、それは聞けないな」
軽い笑みを向けてきたノーティスに、カミュは怒りに顔を歪ませた。
「何だと……キサマ! 皇帝の命令は絶対だ! 分をわきまえろ!!」
するとノーティスは、ソファーからスッと立ち上がりカミュを見据えた。
「カミュ……アナタは勘違いをしているようだ」
「勘違いだと?」
「あぁ。俺達はアナタに戦力外通知をされ、その時点で仕事は終わったんだ。だから今皆と旅行を楽しんでるのさ」
「……何が言いたい」
「分かってるだろ。仕事が終了した以上、俺の従うべきはカミュ、アナタじゃない。我がスマート・ミレニアムの教皇だ」
「ぐっ……」
「だから、アナタの命令は聞けない」
「おのれ……」
そう言って睨んできたカミュに向かい、ニヤリと笑うノーティス。
それを見たレイは、一瞬片手で目を擦った。
───ア、アルカナート?
レイが一瞬見間違えてしまうような笑みを浮かべたまま、ノーティスはカミュを見据える。
「ただカミュ。俺には、この件で教皇からの代理権を授与されてる」
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