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亀裂
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あれから数時間。俺はまだ部屋から優馬を出せないままでいた。あの部屋は窓に鍵をかけてあるし、凶器になるような物もない。
そして何より、扉から聞こえてくるカリカリという音が、中の優馬が無事であることを証明していた。
「……優馬ごめん。閉じ込めて…」
「う…!うぅー!」
部屋の扉を開けると、優馬はぱっと明るい顔をして抱きつこうと歩いてくる。俺はそれを制止した。まだ完全に心の整理ができたわけではない。
優馬がそんな関係になりたいと言うなら、俺も覚悟を決めないといけないから。
「う……ゔぅ…うぁぁぁ~……」
優馬の目からは涙がポロポロ溢れる。きっと許してもらえたと思っているんだろう。最初から怒ってなどいない。困惑しただけだ。
大泣きする優馬の肩を掴み、泣き止むように声をかけようとした。だけど。
「いぁー!!ゔぅー!!」
優馬は癇癪を起こしているのか、俺の手を振り払って大泣きした。生前から優馬は一度大泣きするとしばらく手がつけられない。
最近慣れてきた足取りで、玄関に向かい、家から出てしまった。
「っ!?優馬!!待って!!」
まさか家から出てしまうとは。保護者、自我の主張ができないゾンビは駆除される。
優馬はそれを知らない。
俺は走って優馬を追いかけようとした。
「えっ…いない……!?」
優馬が、いない。
足が遅いからすぐに追いつけるはずなのに。隠れているのか、走り方を思い出したのか。
俺は優馬の名前を呼びながら、まだ寒さの残る街を走り出した。
そして何より、扉から聞こえてくるカリカリという音が、中の優馬が無事であることを証明していた。
「……優馬ごめん。閉じ込めて…」
「う…!うぅー!」
部屋の扉を開けると、優馬はぱっと明るい顔をして抱きつこうと歩いてくる。俺はそれを制止した。まだ完全に心の整理ができたわけではない。
優馬がそんな関係になりたいと言うなら、俺も覚悟を決めないといけないから。
「う……ゔぅ…うぁぁぁ~……」
優馬の目からは涙がポロポロ溢れる。きっと許してもらえたと思っているんだろう。最初から怒ってなどいない。困惑しただけだ。
大泣きする優馬の肩を掴み、泣き止むように声をかけようとした。だけど。
「いぁー!!ゔぅー!!」
優馬は癇癪を起こしているのか、俺の手を振り払って大泣きした。生前から優馬は一度大泣きするとしばらく手がつけられない。
最近慣れてきた足取りで、玄関に向かい、家から出てしまった。
「っ!?優馬!!待って!!」
まさか家から出てしまうとは。保護者、自我の主張ができないゾンビは駆除される。
優馬はそれを知らない。
俺は走って優馬を追いかけようとした。
「えっ…いない……!?」
優馬が、いない。
足が遅いからすぐに追いつけるはずなのに。隠れているのか、走り方を思い出したのか。
俺は優馬の名前を呼びながら、まだ寒さの残る街を走り出した。
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