召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
29 / 196
ワンザブロー帝国編

第29話 異世界温泉とは極楽か

しおりを挟む
 見渡す限りのお湯であった。
 魔法都市は崩壊し、今、温泉都市として生まれ変わった!

 溜め込まれた魔力はどんどん新しいお湯を召喚し、たっぷりとした温かいお湯が保たれている。
 これが瓦礫の隙間からチョロチョロ流れ出していくが、補充されるお湯の量が半端ではないので問題ない。

「な、なんだこれはー!! ううっ、魔力が吸い上げられていく……!」

 魔法使いたちが弱っていく。
 あいつらが付けている、感情を魔力に転換する装置が暴走しているっぽいな。
 魔法使いの感情も魔力も全部、お湯を生み出すためのエネルギーとして玉座が吸い上げているのだ。

 実質無力化である。
 それを自由民たちが囲んで棒で叩く。

「おいおい! お湯の中でやるな! お湯が汚れる! 瓦礫の上でやって外に放り出せ!!」

「はいっ!!」

 俺が叫ぶと、自由民たちがみんな言うことを聞くではないか。

「俺に対して素直じゃない?」

「あの人たちからしたら、マナビさんって英雄ですから」

「そうなの!?」

 ルミイに言われて驚愕する俺である。
 なぜに!

「奴隷だったみんなを解放し、絶対に逆らえないはずだった魔法使いたちをけちょんけちょんにやっつけたじゃないですか」

「そう言えばそんなことをした気がする……。俺は衝動だけで動いているからな。今回はカッとなった後、ルミイが温泉に入って喜ぶ姿だけを想像して頑張った」

「えっ!! わたしのためだったんですか!?」

 今度はルミイが驚愕した。

「君のためだったのです!!」

「うれしいー!」

「ウグワー! 突然の熱烈なハグ! 俺でなければ昇天してたね」

 頑張った甲斐があったというものだ。

 瓦礫の上でボコボコにされている魔法使いを眺めながら、服を脱ぎ捨てるのだ。
 おお、隣でルミイもローブをぽいぽいっと脱いでいる。

 いやあ……本当にこう……。
 世界の至宝だなあ……。
 ぼんっと出るところは出て、きゅっと引っ込むところは引っ込んで、その後ぼんっと素晴らしい曲線が……。

 差し込んできた日差しの中、ルミイの白い肌が輝いて見えるぞ。
 北国生まれだから白いのだ。
 現実世界の白い人って、割りと白というか赤いんで赤人なんだが、ルミイはほんとに白い。

 これがエルフのパワーか。
 すごい。

「うおわー! どこまでもお風呂ですよー! 気持ちいいー!!」

 ざぶざぶとお湯の中を突っ込んでいき、大の字になってお湯にプカアッと浮かぶルミイ。
 うわーっ!
 お湯から二つの山が!!

 俺がナムナムとこれを拝んでいると、瓦礫の向こうから「ヒャッハー!!」という叫び声が聞こえた。
 いけね、愚連隊を忘れてた。

 対抗していた魔法使いが全滅したので、奴らがフリーになったんだろう。
 押し寄せてくるのが分かる。

 そして。

「ウグワーッ!!」

 悲鳴が聞こえた。

「どうしたんだ?」

 瓦礫の上にいる自由民に聞くと、彼は「お湯でスリップして転んだみたいです」

 そうか。
 温泉のお湯が大量に外に流れていっているもんな。
 魔導カーが想定してない地形効果を生んでいる可能性がある。

 しばらく、外で愚連隊がわあわあ言っていた気がする。
 そしてようやく状況を理解したらしい。

 魔導カーを降りて、愚連隊が瓦礫を登ってきた。
 彼らは都市を埋め尽くすお湯を見て、絶句した。

「な……なんだこりゃあ……!! グユーンはこんなもんを作ってやがったのか……!!」

 作ってないと思うぞ。
 まあ、愚連隊は無視だ。

 俺はルミイとお風呂を楽しむとしよう。
 いやあ、無防備なエルフっ娘たまりませんなあ……。

「マナビ様! ルミイ様ー!」

「おおっ、モジャリ! お前も裸でザブザブやって来たな。激しく動くな。嬉しくないものが揺れている」

「わっはっは、これは手厳しい。しかしマナビ様のお陰で、我々は解放されただけではなく、こうして風呂なるものを楽しむことができております! 温かい湯に全身を浸す行為。なんと贅沢で心地よいのか……!!」

「そうだろうそうだろう」

 自由民の女性陣も、お風呂を堪能しているようである。
 これまでの物理的、精神的な汚れや垢を全部落としてしまうがいい。

 おっ、生まれたままの姿の女子たちが手を振ってくれている。
 俺もにこやかに手を振り返す。
 ルミイも手を振っているな。

 うーん!
 俺はまだ、ルミイに男として意識されてはいないのではないか……!?

 そうこうしていると、また瓦礫の辺りがうるさくなってきている。
 愚連隊が服を脱ぎだして、自由民に風呂の作法みたいなのを教えているようだ。

 なんだなんだ、愚連隊も風呂を前にすると優しくなってしまうのか……?
 風呂は皆の心を素っ裸にしてしまうんだな。

 こうして温泉都市で、みんなが裸になってまったり温まったのである。

「わー、さすがにふやけてきた」

 ルミイがざぶざぶとお湯から上がっていく。

 のぼせた愚連隊を自由民が瓦礫の上に引き上げて、パタパタ仰いだりしているではないか。
 この世界に来てから一番平和な光景かもしれない。

 時刻はそろそろ夕暮れ。
 グユーンの塔からは、未だに温泉が吹き出している。

 これ、空に向かってお湯が吹き上がってもいるので、常に虹が掛かっているように見えるのだ。
 幻想的な光景だ。

 そして殺風景なワンザブロー帝国で、この光景はさぞや目立つことだろう。

 目立つということは……。
 遠からず、スローゲインもこれを見つけてやって来るんじゃないだろうか。

 その頃合いで、あいつを誘導しながら帝都に突撃するのがいいだろう。

「ヘルプ機能、スローゲインは何をしてる? いつ頃会えそうかね」

『国境線でキャンプしています。明朝、温泉都市に近づき、スローゲインと遭遇します』

「そういう予定までヘルプ機能には收められているのか」

『チュートリアル機能との合せ技です。さらに、コトマエ・マナビに合わせて当機能は最適化されていっています』

 そんなのがあるのか!
 ますます便利になってしまうな、ヘルプ機能。

 だが、ピンポイントで必要なキーワードを言わないと活用できないのは変わらない。
 温泉でゆるくなった今の頭では、この機能を活かしきれないなあと思う俺なのだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

汚部屋女神に無茶振りされたアラサー清掃員、チートな浄化スキルで魔境ダンジョンを快適ソロライフ聖域に変えます!

虹湖🌈
ファンタジー
女神様、さては…汚部屋の住人ですね? もう足の踏み場がありませーん>< 面倒な人間関係はゼロ! 掃除で稼いで推し活に生きる! そんな快適ソロライフを夢見るオタク清掃員が、ダメ女神に振り回されながらも、世界一汚いダンジョンを自分だけの楽園に作り変えていく、異世界お掃除ファンタジー。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I
ファンタジー
かつて王国騎士団にその人ありと言われた剣聖ジスタルは、とある事件をきっかけに引退して辺境の地に引き籠もってしまった。 それから時が過ぎ……彼の娘エステルは、かつての剣聖ジスタルをも超える剣の腕を持つ美少女だと、辺境の村々で噂になっていた。 ある時、その噂を聞きつけた辺境伯領主に呼び出されたエステル。 彼女の実力を目の当たりにした領主は、彼女に王国の騎士にならないか?と誘いかける。 剣術一筋だった彼女は、まだ見ぬ強者との出会いを夢見てそれを了承するのだった。 そして彼女は王都に向かい、騎士となるための試験を受けるはずだったのだが……

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処理中です...