召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
28 / 196
ワンザブロー帝国編

第28話 温泉召喚とはオツなものだ

しおりを挟む
 残るはグユーン一人だ。
 明らかにでっぷりしたおじさんなのだが、都市の長で帝国に反逆していたり、スレイブリングを開発していたりする凄腕の魔法使いである。

「こ、この野郎! 俺たちを奴隷にしてもてあそびやがって!」

「殺してやる!」

 あっ、血の気が多い若い自由民がつっかけた!

「ふん、三級市民風情が! 貴様らは動物と同じよ! ポイズンクラウド!!」

「「ウグワーッ!!」」

 二人は毒の雲に巻かれてぶっ倒れてしまった。
 これを見て、自由民たちの腰が引ける。

 うむうむ、魔法使いとそうでない者で、明らかに戦闘力が全然違う。
 魔法を使われたら一発アウトなのだ。
 そりゃあ、立場にも差が出てくるというものだ。

 グユーンは余裕を取り戻したようだ。
 ニヤニヤ笑いながら立ち上がる。

「なんだ? ここまで来たのはまぐれだったのか。わしの魔法が怖くて近寄れまい」

 調子に乗っているが、よく考えてみて欲しい。
 まぐれで奴隷たちを全員解放し、魔法使いたちを大量にぶっ倒し、魔法の錠前を解除してガードのスケルトンゴーレムを一掃するやつがいるだろうか?

 人間は理不尽を目の当たりにした時、自分が信じたいストーリーを勝手に作ってそれを真実だと思ってしまう。
 だが基本的に、目の前に理不尽な事態がある時、それはそのまま受け止めないと大変なことになったりするものだ。

「グユーン。現実逃避するのもいいが、こっちは忙しいのでさっさと片付けるぞ」

「わ、わしの名前を知っているだと!? いや、わしはこの都市の王。知っていてもおかしくはない。だが……お前には何の魔力も感じぬ! センスマジックが反応せぬからな。装備したマジックアイテムを駆使してここまで来たと見える! わしには通じぬぞ!! うりゃあ! ポイズンクラ──」

「チュートリアル!」

 行って、戻って。

「ただいま」

「──ウド! 毒に巻かれてじわじわと衰弱しながら死ぬがいい!!」

「ゲイルハンマー」

 ビューっと風が吹いた。
 毒の雲がグユーンまで戻っていく。

 うむ、これはイージーだった。
 一回でやれた。

 やはり、ノーマルな魔法使いはそこまで強くないな。

「ウグワーッ!! ど、毒がーっ!!」

 紫色に変色しながら、地面をのたうち回るグユーン。

「な……なぜ……! わしの魔法は個体識別の効果を与えているから、わしの周りには展開しないはず……!」

「お前の周りに展開しなくても、風でお前の方まで寄せてやればいい話じゃないか。それで思いっきり吸い込んだのお前でしょ」

「な、なんという……ウグワーッ!!」

 おお、毒の継続ダメージが入っている。
 ちなみに毒にやられた自由民は、ルミイが癒やしの精霊魔法で治した。

「こういうのは、ドライアドの力で浄化できるんですよー。マナビさんといると魔法使うことがなくて、自分が精霊使いだって忘れちゃいますねえ」

「ルミイに魔法を使わせないと突破できない時点で負けだと思っている」

「た、頼りがいがあるー!」

 おお、ルミイが感激している。
 ふふふ、頼ってくれ頼ってくれ。

 おっと、グユーンの事を忘れてたな。
 毒でぶっ倒れたグユーン。

 自由民たちはこいつを、棒で叩こうと押し寄せるが……。

「な、舐めるな! ファイアボール!!」

「「「「「「「「「ウグワーッ!!」」」」」」」」」

 あー、やられた。
 ぶっ倒れてても、口と指先が動けば魔法は使えるようだ。
 これは危ないな。

 なので、やられた自由民を回収しつつ部屋の隅まで下がる。
 そこで、じわじわと自分の毒で弱っていくグユーンを眺めるのだ。

「うごごごご……毒が……毒が……!! ポ、ポーションを使わねば……」

「ゲイルハンマー」

 パリーン。

「ウグワーッ!! 解毒のポーションがーっ!! あ、悪魔めえ!!」

 またグユーンがぶっ倒れた。
 そして、ついに俺に助命を懇願してくるのだ。

「た、頼む……! わしが悪かった……! だから、助けてくれ……! 命だけは助けてくれ……!!」

 これには自由民たち、激おこ。

「俺たちの命をおもちゃにしたくせに!!」

「魔法使いなんてみんな死ねばいいんだわ!!」

「助けてもらえると思うな!!」

 そうだよなあそうだよなあ。
 だが待って欲しい。

 このままグユーンが弱って死んでしまっては、よくないのではないか。
 もっとこう……。
 己が積み上げてきたものが、なんか無駄に使われるのを見て、絶望しながら死んでほしいじゃあないか。

「あっ、マナビさんがいやーな笑顔を浮かべました!」

「ふふふ、ルミイは俺をよく見ているなあ」

 俺はグユーンの魔法の射程にトコトコ入り込む。
 すると、グユーンが反応した。

「ば、馬鹿め! お前は道連れだ! ライトニングボルト!」

 放たれたところで、ゲイルハンマーで風を起こして魔法をそらし、俺はちょっと後退する。
 すると、射程圏から俺が消えたことで、ライトニングボルトが立ち消えた。

 また射程にトコトコ入り込む。

「ファ、ファイアボール!!」

 俺は射程圏外に逃げる。
 これを繰り返した。

 しばらくして、ヘルプ機能で確認する。

「グユーンの魔力はどうだ?」

『空っぽです』

「よろしい」

 俺はトコトコとグユーンに近づいた。
 もう土気色になった顔色の彼は、周囲に砕けた宝石みたいなのをばらまいて、憎々しげに俺を見つめる。
 魔力を閉じ込めた結晶だな。こいつまで使い切ったか。

 で、俺は玉座に手をかけるのだ。

「や……やめろ……。それに触れるな……。それは……魔法使いが生き残るための最後の希望……」

「あー、もしかしてお前、魔法文明が持たないことに気づいてたか。いやあ、狙いは良かったな」

 ヘルプ機能に操作方法を聞きつつ、玉座に溜まった魔力を全開放する準備。
 さらに、魔力に指向性を与える。

 このまま解放すれば、魔力爆発が起きてしまうらしい。
 だが、この魔力で何かを召喚すればそれは起こらない。
 使ってしまえばいいわけだな。

「やめろ……! 魔法使いでもないお前が、魔力をどうこうできるはずが……」

「魔力に命ずる。巡り、転換せよ。遠き地の底より呼び覚ませ。熱き癒やしの脈動を……」

「え……詠唱だと……!? 魔力もないのに、どうして……!」

「あらゆるものにはバックドア的な抜け道があるんだぞ。これは魔力を使って、世界に俺が魔法使いだと誤認させる呪文な。だーれでも唱えられる。ほい、温泉召喚!!」

 次の瞬間である。
 玉座が天井に向かってぶっ飛んでいった。
 天井を突き抜け、どこまでも高く上がっていく。

 そこから吹き出したのは、温泉だった。
 玉座そのものが召喚の魔法陣となり、そこから温泉が発生する。

「う……ウグワーッ!! わしの……わしの貯めた魔力が……! 魔力がどんどん使われていく! 呼び出したのはただのお湯だと!? 凄まじい量のお湯!! こんなものに……! こんなものにぃ……!」

「うむ、お前が後生大事に溜め込んだ魔力は、全部温泉に変えさせてもらう。そしてこの都市は一時的に温泉の都になるのだ。俺とルミイのお風呂のためにな」

「な、なんたること……!! あんまりだあー」

 絶望のあまり、グユーンは白目を剥いて死んだのである。
 そして、都市を満たしていく温泉に、視界いっぱいに広がっていく湯けむりに、自由民たちが歓声を上げる。

 ルミイも目を輝かせながら、温泉都市となった大地を見渡した。

「またお風呂に入れますー!!」
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

汚部屋女神に無茶振りされたアラサー清掃員、チートな浄化スキルで魔境ダンジョンを快適ソロライフ聖域に変えます!

虹湖🌈
ファンタジー
女神様、さては…汚部屋の住人ですね? もう足の踏み場がありませーん>< 面倒な人間関係はゼロ! 掃除で稼いで推し活に生きる! そんな快適ソロライフを夢見るオタク清掃員が、ダメ女神に振り回されながらも、世界一汚いダンジョンを自分だけの楽園に作り変えていく、異世界お掃除ファンタジー。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I
ファンタジー
かつて王国騎士団にその人ありと言われた剣聖ジスタルは、とある事件をきっかけに引退して辺境の地に引き籠もってしまった。 それから時が過ぎ……彼の娘エステルは、かつての剣聖ジスタルをも超える剣の腕を持つ美少女だと、辺境の村々で噂になっていた。 ある時、その噂を聞きつけた辺境伯領主に呼び出されたエステル。 彼女の実力を目の当たりにした領主は、彼女に王国の騎士にならないか?と誘いかける。 剣術一筋だった彼女は、まだ見ぬ強者との出会いを夢見てそれを了承するのだった。 そして彼女は王都に向かい、騎士となるための試験を受けるはずだったのだが……

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処理中です...