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スローライフから逃げられると思うな編

第71話 この迷宮はぐねぐねしてるんだな

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 大蟻地獄の迷宮しか知らなかったせいで、ヘルズテーブルの迷宮は下に下に潜っていくものだと思っていたが……。

 よく考えたら空の迷宮、どこまで行っても空なんだし、下に下にって決まりはないんだな。
 馬車は上り坂に差し掛かった。
 そしてくるくる螺旋を描きながら登っていく。

 なんだなんだ。
 現実世界にあった都心のジャンクションみたいな感じだぞ。

 ちなみにここからは、面白い形のゴーレムが出てきた。
 ジャンクションエリアの壁が剥がれて、手足が生えて迫ってくるのだ。

「塗り壁だ塗り壁だ!」

 俺は大喜びで駆け寄り、捕獲する。

『これ、本来は壁として迫ってきて行動範囲を狭めたりするんでしょうな。ゆっくりと迫る恐怖感とかで相手を煽るんでしょうが、なぜかタマル様のテンションが高い』

『タマルさん相手の強さ関係なく一発ゲットしますからねー。バッドマッチですねー』

『この世界においてタマル様が圧倒的に捕食者側なんですな』

 男たちが俺の話をしている。
 スローライフとは、確かに自然環境を開発しながらまったりと生活していくこと。
 スローライフ享受者が捕食者にならざるを得ないのは確かだろう。

 さらば塗り壁たちよ。
 お前は俺の糧となるのだ。
 どんなレシピができるかな……。

 次々に迫る塗り壁ゴーレムをゲットしていたら、ついに出てこなくなった。

「獲り尽くしてしまった」

『こっわ。マンイーター、よく絶滅させられなかったわね』

「タマルは仲間には優しい感じなんだよー」

『ってことはあたしの選択は間違いなかったわけね……!』

『新しいレシピが生まれた!』

▶DIYレシピ
 ※対衝ブロック塀
 素材:ウォールゴーレム

 ……石壁とどういう違いが?
 
 実際に設置してみよう。

「あっ、これ軽いよ! 持ち歩いたりできる! あとね、馬車にくっつけられる!」

「そんな特性が!!」

 面白そうなので、馬車やホネノサンダーたちに取り付けてみた。
 すると、面白いことが起きたのである。

 この迷宮、ジャンクションのようにぐねぐね螺旋を描いたかと思うと、左右にぐねぐねと曲がってることもある。
 ぐねぐね迷宮である。
 
 すると壁に当たりそうになったりもするのだが。

『カタカタ!』

 ぼいーん!
 壁に当たりそうになったホネノライジングが跳ね返って来た。
 なんだこれ!

 道が狭くなり、馬車が壁面にこすれる。
 ぼいーん!
 跳ね返ってきた跳ね返ってきた!

 これ、対衝ブロック塀って、衝撃に対して跳ね返る系ブロック塀だったのか。
 面白いなー。

『あああああああ』

「またキャロルがショック受けてる! 馬車の中で根を張ってるー」

『タマル一味の旅は過激ですからなあ。というか一番過激になってるタイミングで仲間になったのでショックの連続でしょうな。はっはっは』

『すぐに慣れまーす! ミーはもうこれがエブリデイでーす』

「フランクリンはすっかり慣れたよねー」

『ピピ! ピピー!』

 おや? ポルポルも何かして欲しいらしい。 
 ほう、ドローンにブロック塀を設置して? 
 そのまま飛びたい?

 面白い!

 完全に我が家の飛行ユニットになったポルポルに、ブロック塀をくっつけてみた。
 ブロック塀、見た目以上にとても軽いのでドローンもすいすい飛べる。

 ゴーレムたちがガシャンガシャンと現れて、ポルポルがすいーっと近づいていった。
 おっ、ミサイルで撃たれてる。
 だが、ブロック塀でこれを受け止めて……。

『ピピー』

 ぼいーんと跳ね返されていった。
 そして壁にあたって跳ね返って、ゴーレムにぶつかる。

『ガガーッ』

 おお、ゴーレムがぶっ飛ばされた。
 そして追い打ちのポルポルキャノンである。
 バキューンバキューンと音がする。

 まあ、お掃除したり氷ゾンビを爆発させる程度の威力なので、ゴーレムのヘイトを集めるくらいの効果しかないようだが。
 それでも、ラムザーに続く新たなヘイト要員の誕生だ。

 廻天将軍の時に、もしや!と思ったのだが……。
 ポルポルの秘められた才能が目覚めてしまったな。

 俺もテンションが上ったので、特に効果のないギリースーツを纏って飛び出した。
 ゴーレムをパカスカ捕まえて、加工する。
 全部ゴーレム人形にして、馬車からぶら下げたぞ。

『はっはっは、馬車の外見がどんどん怪しくなっていきますなあ! あ、これ人形も壊れないんでしたかな? ホネノサンダーとホネノライジングにも付けておいたらどうですかなー?』

「その手があったか。ポタルもぶら下げる?」

「いーやっ! 可愛くないもん!」

「キャロ」

『絶対やんないわよ』

 食い気味に否定!

 女子チームから総スカンを食らってしまった!
 確かに、ポルポルに装備させようとして断念した外見だもんな。

 ちなみにポタルが拒否した理由は可愛くないのと、嵩張ると飛べなくなるから。
 キャロルは食べ物以外には全般的に否定的である。
 食べ物だったらなんでもチャレンジするようだ。

『ピピー』

 上機嫌で戻ってきたポルポルをキャッチして、ドローンから取り外した。
 ポルポルは砲塔からピーピー音を鳴らしつつ、馬車の中を練り歩いている。
 これはかなりテンションが上がってるな。

『なにあんた。あれが楽しかったの?』

『ピピー』

『食べる以上に楽しいの? 分かんないわねえー。世の中色々あって、全然分かんないわ』

 むっ!
 キャロルは植物暮らしからいきなり世界が広がったので、混乱しているだけではあるまいか。
 これは徐々に、いろいろな事を体験させていかねばならないだろう……!


▶DIYレシピ
 対衝ブロック塀
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