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スローライフから逃げられると思うな編

第70話 空の迷宮探索行

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 入り口は階段状になっていたが、構うことはない。
 ご丁寧に両端にスロープが設けられているので、ここを用いて馬車で行ってしまうのだ。

 デッドランドマウンテンの遺跡の、言わば本体にあたるこの空の迷宮。
 でかくて広い。
 馬車で行ける限りは馬車で移動でき、もし狭いところに来たら初めて降りて行動すればよかろう。

 パカポコと骨馬が進む。
 ポタルがスポットライトを構えているのだが、やっぱりこの迷宮はあちこちが空いていて光が差し込んでくる。
 明るいなあ。

 俺たちが日の高いうちにしか行動しないというのもあるけれど。

『思ったより風通しいいのねここ。水分さえあればまあまあ暮らせそうだけど……』

 キャロルがキョロキョロした後、顔をしかめた。

『食べられるものがなさそう。干からびるわねこれ』

「キャロルは食べ物基準だもんねえ」

『あたしは植物だから栄養にシビアなのよ。こうやって動いてるとめちゃくちゃ燃費悪くなるんだから』

「燃費という言語がヘルズテーブルに! いや俺に分かりやすいように翻訳されてるだけだな」

『おっ、タマル様! 入り口からすぐにまた石碑がありますぞ! 三行! 三行!』

『イエー! 三行でーす!』

 ラムザーとフランクリンが三行コールを始めた!
 これは期待されているな。
 やらねばなるまいよ。

「まずこれ、特に新しい情報ではない。ポエムだな。フランクリン的にはポエムを三行にまとめるの冒涜じゃなかったっけ?」

『慣れましたねー!』

 慣れてしまったかー。
 では、石碑の内容をさらっとまとめる。

・創造神はこの迷宮に記憶を封印するよ。
・全ての迷宮の場所が明らかになるよ。
・それを全て踏破すれば兄弟神は駆逐されるよ。

「こんな感じ」

『おっ、なかなか重要な情報ではないですかな? 空の上に一番貴重なものを置いておいたのですな。しかし、もともと兄弟神の尖兵である魔人侯は迷宮に潜れないのですから、地上に置いておいても良かったのではないですかな』

「俺が思うに、恐らく攻略できるように動く奴がいるんじゃないかと思う。羅刹公爵とか、迷宮踏破を計画してなかった?」

『あー、迷宮を無視してはおりませんでしたな! 何か裏で色々やっておりましたな』

「そう。多分羅刹侯爵はトップクラスでヤバいヤツ。そいつ、きっと迷宮攻略を始めるぞ。まあ俺としてはこの世界が取り戻されなくても、魔人侯を一掃してしまえばスローライフに適した世界になるから問題ない。でも羅刹侯爵、話を聞く度に絶対にヤバい奴っていう印象が強くなってきてるので捕獲して売り払うよ!」

『おおー! やってやりましょうぞー!』

 和気あいあいとしながら、迷宮を進んでいくのである。
 人工的な遺跡なのだが、迷宮と言うだけあって道があちこちに分かれている。

「大蟻地獄の迷宮よりも迷宮してるな。だが、怪物とかが全然出てこない。どういうことだろう……」

『噂してると本当に出てきますぞ』

「まさかー」

「タマルも同じこと言ってたでしょ。そしたらキャロルが仲間になったじゃない」

「そうだっけ?」

 ガシャンガシャンガシャン、と足音がする。
 おや……?

『カタカタ!』

『オー! エネミーカミーング!』

「ほんとに来た!!」

 迂闊な事を言うもんじゃないな!

 やって来たのは、以前見たゴーレムみたいなやつだ。
 あいつミサイルついてるんだよなあ。

「こっちはドラゴン装備ラムザーとキャノンつきのフランクリンで迎え撃とう」

『オー! ミーのキャノンは飾りでーす!』

『フランクリンはこの高枝切鋏で戦うのですぞ』

『まさかのクロスコンバットでーす!!』

「じゃあこの二人が相手を食い止めている間に、俺が捕まえまーす。しっかりとガードを固めておくのだ……」

「音楽かけとくね!」

 ポタルが大音量で掛け始めたのは……。
 スウィートな感じのラブソングである!!
 この戦闘シーンに、ドクトルラブソングが!!

 ゴーレムたちは明らかに狼狽して、キョロキョロしている。
 視覚の他に聴覚にも頼ってるんだろう。
 そこに飛び込んできたのがラブソングなら、そりゃあ困惑するよな。

『今ですぞ!』

『チョッキンスライスでーす!!』

 襲いかかるラムザーとフランクリン!
 そして横合いからスススっと回る俺。

 ゴーレムは二人によって抑え込まれ、俺はそれを次々にゲットしたのだった。
 よしよし、ゴーレムは突破した。

「対応方法が分かってるから簡単だったな」

『明らかに前回とは全然違うやり方で対処してましたがな』

「……そうだっけ?」

『タマル様、興味ないことは全く記憶しませんからな』

「ゴーレムは素材としてしか興味がない」

『イービルトーク!』

『こわあ。あたし、よくこの男に素材として捕獲されなかったわね』

「ギリギリだったねー。あそこでキャロルが腹ペコ発言しなかったら今頃博物館だったよ」

『こっわ』

「キャロルも装備つけて前線出てみるか? マンイーターとしての才能を活かすチャンスだぞ!」

『やめて! あたし、動きが鈍いからそういうの絶対に向いてないから!』

「ということはポタルと一緒にサポート役だな。馬車の中に色々オブジェクトがあるから、これの使い方を教えてもらうんだ。働かざるものでも食えるのが俺たちだが、働いたほうが飯が美味くなる。お腹減るからな」

『や、や、やるわ』

 ちょっと躊躇したな。

『はっ……! そう言えばあんたたちドラゴンと戦ってたんじゃない! 食べ物につられて仲間になったけど、そんなのと一緒に旅してたらメチャクチャな目に遭うの当たり前じゃない! しまったー。さっきの飛ぶ奴らとやり合ってる時に、なんであたしはぼーっとしてたのー!』

「空の上だとキャロル本調子じゃないもんねえ」

 ポタルが妙に優しく言うのだった。
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