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スローライフが攻めてきたぞーっ編
第41話 ゆったりお城めぐり
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ワカサギモドキの天ぷらでお腹いっぱいになった俺は心が広い。
たくさんいる氷ゾンビを完全にスルーしていくのだ。
途中途中、通路でぼんやり立ちながら拝んでいるやつに、「お疲れ!」と声をかけていく。
「ほんとに何もしてこないね。なんだろうねー」
『我だったら攻撃してしまっていましたな。もしや、攻撃しないと反撃もしてこない怪物なのかも知れませんな』
『オー、タマルさんこの対応はコレクトでーす! 恐らく彼らは攻撃されると反応して爆発するタイプの使い捨て型魔人……。この土地に住んでいた人間たちが変えられたものですよ』
「えっ、そうなの? こわあ」
聞くんじゃなかったわ。
『ピピー』
「あ、ポルポル、その構えは」
『ピー』
バキューンと氷ゾンビを狙撃したな。
すると、氷ゾンビの体がガクガク震えながら膨らんでいく。
そしてこっちに突撃してくるではないか。
「ウワーッ」
俺は慌てて、熊手を装備した。
長い柄のついた道具でこれで氷ゾンビを引っ掛ける。
駆け寄ろうとする氷ゾンビだが、熊手に引っかかってバタバタし始めた。
そして爆発である。
うぎゃーばっちい。
『ピー』
爆発の中を、悠然とポルポルが歩いてきた。
ちっちゃくても機動城塞。
ゾンビの爆発程度ではびくともしないか。
「だが俺たちがびくともするからやってはいかんぞ。お前、俺たちの中で一番頑丈なやつなんだからな」
『ピプー』
ポルポルが俺に叱られてしょんぼりした。
「あー、凹んじゃった。かわいそう」
「爆発に巻き込まれる俺たちの方がかわいそうでは?」
「それはそうだけどー」
ということで、ポルポルはポタルが抱っこしていくことになった。
まあ、彼のお陰で氷ゾンビの意味がはっきりしたな。
意識してしまうと通過しづらくなるし、退廃帝からの命令が出たりするともしかすると襲いかかって来るかもしれない。
そう考えると厄介な相手である。
「おう、おつかれー」
『その割には凄い至近距離を悠然と通過しましたな、タマル様!』
「恐れたって通過しなきゃならんからな。用心しながら通るだけだ」
『割り切りがすごい』
『胆力だけなら魔人候トップクラスですねー』
「ハハハ、褒めても何も出ないぞ。ところでポタルは今日は俺の背中に乗らないの?」
「クマのコートって重いからー。私、今体重が二倍あるから飛べなくてー」
「あれ、飛べないとできないのか。残念……」
「ポルポルなら貸してあげるよ?」
『ピピー』
「うーん、抱っこできる機動城塞……よし、借りておこう」
ポルポルを抱っこしながらトコトコと行くのである。
城内あちこちに氷ゾンビがいた。
こいつら、きっと退廃帝の家臣だったんじゃないかな。
あちこちに、割りときれいな肖像画が掛かっていたりする。
立派な髭をはやした恰幅のいい男である。
これが退廃帝の人間モードの姿かな?
とある部屋では、お茶の途中で全員氷ゾンビになったらしきところもあった。
紅茶はすっかり凍ってるな。
豊かな暮らしをしてた国だったんだろうが、退廃帝が奥さんが死んでショックを受けたばかりに、何もかも全部ぶん投げて地獄みたいな魔人候領になってしまったというわけだ。
迷惑だのう。
「それはそうと、色々あるな。ラムザー、ポタル、アイテムボックス空いてるだろ? もらっていこうもらっていこう」
『了解ですぞー』
『本をゲット!』
『皿をゲット!』
『食器をゲット!』
『新しいレシピが生まれた!』
▶DIYレシピ
※ティータイムセット
素材:ティーセット+皿+食器
「おっ、優雅なアフタヌーンティーができるテーブルから椅子からお菓子タワーまでついたセットが作れるようになったぞ! まさにスローライフ」
『スローライフは略奪から生まれるのですな』
「うむ。普通のスローライフだって、自然環境から色々略奪せんと成り立たないからな。廃墟みたいになった退廃帝の城なんか、もうこれ自然環境だろ」
『恐ろしい胆力と理屈でーす』
そういうことで、存分に物品を拾得した俺たちは、満足しながら上の階へ向かうのだった。
「しかし見どころ満載な城だな。あちこち窓が空いてて寒風が吹き込んでくること以外は最高だ。現実世界のドイツのお城もこんな感じなんだろうなあ」
気分はもう観光である。
氷ゾンビの密度は増えてきてるので、ポルポルがバキューンと射撃しないよう、砲口に指を突っ込んで止めている。
『モモー』
「くぐもった声になってる。砲口がお前の口だったのか。だが穴から指を抜いたら絶対バキューンしそうだから抜かないぞ」
プルプルしているポルポルを抱きながら、今度は壁に刻み込まれたポエムを見る。
長い。
「三行にまとめる……」
『来ましたぞ、タマル様の三行まとめ』
「割りと楽しみなんだよね」
『ポエムをまとめるのは冒涜では!?』
フランクリンは風情を愛する男だったか。
「俺の世界には編集という作業があってな。長いものをスッとまとめてわかりやすくしたりするのだ。そんな感じ」
『オー、ポエムへの理解度を深めるための……!?』
「多分そう」
『オー』
納得したようだ。
さてさて。
・退廃帝の妃を復活させるために、近隣の神殿から聖なる物品を集めている。
・愛しいお前はどうしてまだ応えてくれないのか。
・神は余に言った。もっともっと聖なる物品を集めよと。もっと、もっと、もっと……。
「おかしくなってるな」
『今までの魔人候のなかで一番おかしくなってますな』
「こわいねー」
『退廃帝サノバビッチ!』
フランクリンだけが燃え上がっている。
カッカするな、溶けるぞ。
『タマル様、上からなんか凄いプレッシャーを感じますぞ』
「ラムザーもタマルみたいな物言いになって来たよね。適当な感じとか」
『失敬な』
「俺に似てきたら失敬ってどういうことだラムザー! よし、行くぞ、突撃だ」
こうして、退廃帝とご面会なのである。
▶DIYレシピ
アフタヌーンティーセット
たくさんいる氷ゾンビを完全にスルーしていくのだ。
途中途中、通路でぼんやり立ちながら拝んでいるやつに、「お疲れ!」と声をかけていく。
「ほんとに何もしてこないね。なんだろうねー」
『我だったら攻撃してしまっていましたな。もしや、攻撃しないと反撃もしてこない怪物なのかも知れませんな』
『オー、タマルさんこの対応はコレクトでーす! 恐らく彼らは攻撃されると反応して爆発するタイプの使い捨て型魔人……。この土地に住んでいた人間たちが変えられたものですよ』
「えっ、そうなの? こわあ」
聞くんじゃなかったわ。
『ピピー』
「あ、ポルポル、その構えは」
『ピー』
バキューンと氷ゾンビを狙撃したな。
すると、氷ゾンビの体がガクガク震えながら膨らんでいく。
そしてこっちに突撃してくるではないか。
「ウワーッ」
俺は慌てて、熊手を装備した。
長い柄のついた道具でこれで氷ゾンビを引っ掛ける。
駆け寄ろうとする氷ゾンビだが、熊手に引っかかってバタバタし始めた。
そして爆発である。
うぎゃーばっちい。
『ピー』
爆発の中を、悠然とポルポルが歩いてきた。
ちっちゃくても機動城塞。
ゾンビの爆発程度ではびくともしないか。
「だが俺たちがびくともするからやってはいかんぞ。お前、俺たちの中で一番頑丈なやつなんだからな」
『ピプー』
ポルポルが俺に叱られてしょんぼりした。
「あー、凹んじゃった。かわいそう」
「爆発に巻き込まれる俺たちの方がかわいそうでは?」
「それはそうだけどー」
ということで、ポルポルはポタルが抱っこしていくことになった。
まあ、彼のお陰で氷ゾンビの意味がはっきりしたな。
意識してしまうと通過しづらくなるし、退廃帝からの命令が出たりするともしかすると襲いかかって来るかもしれない。
そう考えると厄介な相手である。
「おう、おつかれー」
『その割には凄い至近距離を悠然と通過しましたな、タマル様!』
「恐れたって通過しなきゃならんからな。用心しながら通るだけだ」
『割り切りがすごい』
『胆力だけなら魔人候トップクラスですねー』
「ハハハ、褒めても何も出ないぞ。ところでポタルは今日は俺の背中に乗らないの?」
「クマのコートって重いからー。私、今体重が二倍あるから飛べなくてー」
「あれ、飛べないとできないのか。残念……」
「ポルポルなら貸してあげるよ?」
『ピピー』
「うーん、抱っこできる機動城塞……よし、借りておこう」
ポルポルを抱っこしながらトコトコと行くのである。
城内あちこちに氷ゾンビがいた。
こいつら、きっと退廃帝の家臣だったんじゃないかな。
あちこちに、割りときれいな肖像画が掛かっていたりする。
立派な髭をはやした恰幅のいい男である。
これが退廃帝の人間モードの姿かな?
とある部屋では、お茶の途中で全員氷ゾンビになったらしきところもあった。
紅茶はすっかり凍ってるな。
豊かな暮らしをしてた国だったんだろうが、退廃帝が奥さんが死んでショックを受けたばかりに、何もかも全部ぶん投げて地獄みたいな魔人候領になってしまったというわけだ。
迷惑だのう。
「それはそうと、色々あるな。ラムザー、ポタル、アイテムボックス空いてるだろ? もらっていこうもらっていこう」
『了解ですぞー』
『本をゲット!』
『皿をゲット!』
『食器をゲット!』
『新しいレシピが生まれた!』
▶DIYレシピ
※ティータイムセット
素材:ティーセット+皿+食器
「おっ、優雅なアフタヌーンティーができるテーブルから椅子からお菓子タワーまでついたセットが作れるようになったぞ! まさにスローライフ」
『スローライフは略奪から生まれるのですな』
「うむ。普通のスローライフだって、自然環境から色々略奪せんと成り立たないからな。廃墟みたいになった退廃帝の城なんか、もうこれ自然環境だろ」
『恐ろしい胆力と理屈でーす』
そういうことで、存分に物品を拾得した俺たちは、満足しながら上の階へ向かうのだった。
「しかし見どころ満載な城だな。あちこち窓が空いてて寒風が吹き込んでくること以外は最高だ。現実世界のドイツのお城もこんな感じなんだろうなあ」
気分はもう観光である。
氷ゾンビの密度は増えてきてるので、ポルポルがバキューンと射撃しないよう、砲口に指を突っ込んで止めている。
『モモー』
「くぐもった声になってる。砲口がお前の口だったのか。だが穴から指を抜いたら絶対バキューンしそうだから抜かないぞ」
プルプルしているポルポルを抱きながら、今度は壁に刻み込まれたポエムを見る。
長い。
「三行にまとめる……」
『来ましたぞ、タマル様の三行まとめ』
「割りと楽しみなんだよね」
『ポエムをまとめるのは冒涜では!?』
フランクリンは風情を愛する男だったか。
「俺の世界には編集という作業があってな。長いものをスッとまとめてわかりやすくしたりするのだ。そんな感じ」
『オー、ポエムへの理解度を深めるための……!?』
「多分そう」
『オー』
納得したようだ。
さてさて。
・退廃帝の妃を復活させるために、近隣の神殿から聖なる物品を集めている。
・愛しいお前はどうしてまだ応えてくれないのか。
・神は余に言った。もっともっと聖なる物品を集めよと。もっと、もっと、もっと……。
「おかしくなってるな」
『今までの魔人候のなかで一番おかしくなってますな』
「こわいねー」
『退廃帝サノバビッチ!』
フランクリンだけが燃え上がっている。
カッカするな、溶けるぞ。
『タマル様、上からなんか凄いプレッシャーを感じますぞ』
「ラムザーもタマルみたいな物言いになって来たよね。適当な感じとか」
『失敬な』
「俺に似てきたら失敬ってどういうことだラムザー! よし、行くぞ、突撃だ」
こうして、退廃帝とご面会なのである。
▶DIYレシピ
アフタヌーンティーセット
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