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第一部:都市国家アドポリスの冒険 10

第46話 アドポリスを救え! その1

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 スリング準備よし。
 ショートソード準備よし。

 対する相手は、アンデッドナイト化したショーナウンだろう。
 中身はすっかりレブナントだろうに、あの動きは別れた時のままだ。

 レブナントというアンデッドは、生前の強さがそのまま活かされる。
 だから、あのレブナントは少なくともSランクに至った戦士と同じ強さを持っているということになる。

「何とも参ったね」

「センセエ! クルミもお手伝いするです!」

「クルミはそっちのローブを着た……サブリーダーをお任せするよ。ショーナウンを止めるのは俺の仕事だろう」

『オース……! オースゥゥゥゥゥッ!!』

「はいはい」

 俺はショートソードを抜きながら、彼に向ける。

 ショーナウンは待っちゃくれない。
 彼は迂闊な男で、敵のことをろくに調べもしない。
 傲慢で、わがままで、どうしようもない男だが……その腕だけはSランク相当だと俺は認めている。

『オオオッ!!』

 吠えながら襲いかかるショーナウン。
 速い!
 俺は下がりながら、どうにかこれを武器でいなす。
 体を回転させながら、ベルトポーチからアルコールの瓶を落とした。

 ショーナウンが剣を叩きつけてくるところに、瓶を蹴り上げる。
 ここは流石ショーナウン。
 咄嗟に瓶を叩き切った。

 飛び散るアルコール。
 若干量が揮発して、どうやら鎧の隙間からあいつの体に掛かったようだ。

『ぬっ』

 動きが僅かに鈍くなる。
 その僅かで十分。

 俺は左手に巻きつけていたスリングを展開した。
 袖口から滑り落ちてくるアルコールの瓶。

『オースゥッ!!』

 俺の名を叫びながら、再び襲いかかるショーナウン。
 その顔面に、アルコール瓶を叩きつけてやった。

 だが、重ねて言うが、流石はショーナウンだ。
 こいつを見切って咄嗟に剣で防いだ。

「いやあ……強いね」

 俺は後ろにステップを踏みながら、体を軽く揺さぶった。
 ゴロゴロと転がり落ちてくるのは、アルコールの瓶だけではない。

 よし、マジックトラップで行こう。

 落ちているそいつを軽く蹴り上げて、立ち直ったショーナウンの足元目掛けて蹴りつけた。
 咄嗟に奴は回避するが、その足元に落とし穴が生まれる。

『ぬおおっ!!』

 ショーナウンはそれに気付き、体を無理やり捻って落とし穴を避ける。

「なんの!」

 今度はベルトポーチからはじき出したコカトリスの嘴。

『むうんっ!!』

 それを反転しながら剣で弾くショーナウン。

「強いな! 精神的なぶれがなくなったぶん、生前よりも強いんじゃないかあんた」

『ぐううううっ……! お前、が……ここまでやれるとは……思わなかった……ぞ』

「マジか。あんた、レブナントになっても自意識があるのか!」

 こりゃあ大したやつだ。
 体の全てを、人間ではない何かに置き換えてしまうレブナント化。
 それをされてなお、自分ってものを持ってるショーナウンは大したやつだ。

『お前、は……全力で……殺す……!! お前達……やれ……!』

『うううう』

『ああああ』

 ショーナウンが命じると、奴の後ろから二人ほど姿を表した。
 盗賊とヒーラーだ。
 こいつらもレブナント化してたか。

 だが、その目に意思の色はない。

「三対一というわけか。これは俺も分が悪い……と言いたいところだけど」

 俺は横にステップを踏みながら、足元にあったアルコール瓶を蹴り上げた。
 スリングでキャッチすると、さらに横にステップ。

 瓶を振り回しながら、十分な遠心力を得たところで……ヒーラーへと投擲。

『うあっ……?』

 彼女は回避できない。
 そりゃあそうだ。
 回復とバフを飛ばすのがメインの仕事だぞ。
 そんなのをレブナントにしたら、何の役にも立つまい。

 あっという間に、ヒーラーの全身から黄色い光が薄れて消えた。
 俺はそこに、抜き打ちに短剣を投げる。
 剣は彼女の頭に突き刺さると、そこから亀裂が広がり、ヒーラーはバラバラに砕け散った。

『ああおおおおおおっ!』

 盗賊が襲いかかってくる。
 彼の身のこなしはなかなか厄介だ。
 俺の戦い方に近いからな。

 なので。

「敏捷強化」

 俺にバフを掛けて、物理的に上回らせてもらう。
 盗賊としてのランクは彼の方が上でも、俺はバッファーとしても戦えて、レンジャーでもある。
 Bランクを三つ束ねれば、Sランク盗賊だって上回れるさ。

『あおおおおっ!』

 叫びながら、盗賊が体に装備した短剣を次々投げつけてきた。
 俺は躊躇なく地面に体を投げ出してこれを回避する。

『うらあああっ!』

 短剣を握りしめて、突き刺しに来る盗賊。
 それを、彼の足元目掛けて転がりながら回避。
 ついでに途中でアルコール瓶を拾い、こいつを彼の足に叩きつけた。

 割れる瓶。
 おお、割れやすく加工しておいて本当に良かった!

 盗賊の動きが鈍くなる。

『オースッ……!!』

 盗賊の後ろから、ショーナウンが迫っている。
 俺は盗賊の体に触れぬよう、リュックから取り出した布越しに奴の服を掴み取る。

「筋力強化」

 強化した腕力で盗賊を引き寄せて、ショーナウンへの盾とする。

『ううああああ』

 盗賊は短剣を俺に突きつけようとするのだが、片足の自由を失い、俺に重心をコントロールされて戦えるものか。
 レブナントは理性がないから、俺を突き飛ばして離れる、なんて発想がわいてこないのかもな。

 その結果……。

『オースッ!! 死ねえっ!!』

 振り下ろされたショーナウンの剣の盾となり、哀れ盗賊は真っ向両断。

「また二人きりになっちまったな、ショーナウン。そういや、お前の女の魔術師はどうした」

『オースゥゥゥゥゥッ……!!』

「ま、レブナント化してたら怖くもなんともないか。じゃあ、決めようぜ、ショーナウン」

 仕切り直しだ。

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