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第37話 無観客でも頑張る道化師
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「君に一つ聞きたい。まともに答えてくれるとは思わないが」
「何でしょうか? まともに取り合う義理はありませんが」
俺と司祭がにらみ合う。
俺の言葉は刺々しく、司祭の言葉にも棘がある。
「村人はどうしたのかね」
すると、司祭は鼻で笑った。
「それを我に聞くのですか? 腐敗神の元に下った人間の運命など、わかりきったことでしょう。神の力となるための糧として、その身を朽ち果てさせながら永遠の眠りにつくだけです!」
「この男は何を言っているんだ?」
イングリドが真顔で尋ねてくる。
ちょっと言ってることが難しかったものな。
「つまり、村人は腐敗神の生贄にするために地下で眠らせてるとかそういう話だよ」
「なるほどよく分かった」
「道化師の話は分かりやすいねえ」
言葉というものは、観客に届かねば意味がない。
俺が話す内容は、なるべくわかりやすく、そして期待を煽るように意識している。
このやり取りを聞いて、腐敗神の司祭はイラッとしたらしい。
「愚かなる人間たちは! いつも分かりやすく、そして安定した方向に逃げる! 退屈なのですよ、この世界は……! 我は退屈に停滞したこの世界に、動きを与えようと言うのです。腐敗神の教えは、そのためにとても都合がいい。さあ、神よ! 新たなる加護を! 我が手に眷属を! 毒の剣を──」
口上の後に、腐敗神に加護を願う祈りを始めたが、俺の前で長々と喋ったのはうかつだったな。
もう、声色は覚えたぞ。
「神よ、加護は返上奉る!」
俺は、司祭の声色をそのまま真似して、彼の手に現れようとしていた加護を打ち消した。
毒々しい輝きを手にするはずだった司祭が、一瞬止まる。
「なん……だと……?」
「この手でマンティコアの加護を無効化したのだが、君たちに横のつながりは無いのかね?」
「ああ、あのエルダーマンティコア……ッ」
司祭が話している隙に、イングリドが仕掛ける。
槍を抜き放ち、前進しながら一撃を繰り出す。
「うおおっ!? 眷属よ、我を守りなさい!」
司祭の足元から吹き出す、黄色い軟体の怪物。
昨日、冒険者をさらっていった粘菌だろう。
イングリドの槍は勢いを殺され、奪われそうになる。
「ぬおっ! なんのっ!!」
力づくで槍を引き戻すイングリド。
粘菌のパワーには負けない。
それどころか、槍をぐるぐる回して粘菌を巻き取っていく。
「なんですと!?」
これには司祭も驚愕。
驚いている暇があるのかな?
俺は既にナイフを投擲している。ギスカも詠唱を開始しているぞ。
「このっ! 眷属よ! 眷属よさらに! うおおおーっ!?」
ナイフが司祭の肩に、胸に突き刺さる。
惜しい。頭を狙ったものは防がれたか。
さらに、司祭の足元が爆発を起こし、彼を転倒させる。
これはギスカの魔法か。
司祭はゴロゴロと地面を転がって逃れた。
「馬鹿な……!? 立て続けに我の企みを食い止めるお前たちは何だ!? 何なのだ!?」
俺たちを睨みつけながら、周囲に現れた粘菌に覆われつつ、高速で後退を開始する司祭。
「名だたる冒険者の中に、お前たちの姿はない!」
「それはそうさ。俺とイングリドはつい最近組んだばかり。ギスカに至っては昨日仲間になったのだからな」
「おい、オーギュスト! 奴が逃げるぞ! 追わなくていいのか?」
「イングリド、焦らなくていい。全力で逃げの態勢に入ったあれは、簡単には止められないさ。そら、妨害してくるぞ」
俺の宣言と同時に、目の前に毒霧が発生した。
濃厚なそれが、司祭を見えなくしてしまう。
追いかけていたら、この霧に飲まれていたというところだ。
「おのれ! 覚えていなさい、冒険者ども! ガットルテ王国は国土の中に、多くの恨みを抱えている! まつろわぬ民と名乗る彼らが、また我の力を借りようとするだろう! これで終わりではない! 」
「芝居がかった男だなあ。さて、イングリド、ギスカ。これで腐敗神の司祭の接触は、しばらくないだろう。村人を救出するとしよう」
「いきなり切り替えたね。ま、後を追えないなら今できることをするだけさね」
「今日のオーギュストはテンションが低いな」
「無観客だからね。俺のテンションは、どうやら活躍を見てくれる人間がいないと保てないらしい。だが、低テンションなりに頑張ったつもりではある」
「その物言いすら覇気がない。大丈夫か? 本当に根っからの道化師気質なんだな……」
イングリドに心配されながら、次なる仕事を行うのである。
案の定というか何と言うか、村の家々には簡易地下室のようなものが存在し、そこに村人たちは閉じ込められていた。
ジョノーキン村と比べれば、準備は少々おざなりだな。
その後、俺の調査スキルで判明したことだが、俺たちを待ち伏せする準備を開始したのは、今朝のことだったらしい。
キャラバンとともにゆっくり来ていれば、もっと準備が整った状態で奇襲されていたわけだ。
こちらから仕掛けたのは正しかったな。
イングリドがふっ飛ばした冒険者も、回収されている。
あの司祭、冷静さを失っているように見せながらも、なかなか抜け目がない。
今度はもっと大勢の目があるところで戦いたいものだ……。
助け出した村人たちを、中央の広場に寝かせているうちにキャラバンも到着した。
ここで一休みできると思っていた冒険者たちは、力仕事をせねばならなくなり、ぶうぶうと不平を口にするのだった。
「何でしょうか? まともに取り合う義理はありませんが」
俺と司祭がにらみ合う。
俺の言葉は刺々しく、司祭の言葉にも棘がある。
「村人はどうしたのかね」
すると、司祭は鼻で笑った。
「それを我に聞くのですか? 腐敗神の元に下った人間の運命など、わかりきったことでしょう。神の力となるための糧として、その身を朽ち果てさせながら永遠の眠りにつくだけです!」
「この男は何を言っているんだ?」
イングリドが真顔で尋ねてくる。
ちょっと言ってることが難しかったものな。
「つまり、村人は腐敗神の生贄にするために地下で眠らせてるとかそういう話だよ」
「なるほどよく分かった」
「道化師の話は分かりやすいねえ」
言葉というものは、観客に届かねば意味がない。
俺が話す内容は、なるべくわかりやすく、そして期待を煽るように意識している。
このやり取りを聞いて、腐敗神の司祭はイラッとしたらしい。
「愚かなる人間たちは! いつも分かりやすく、そして安定した方向に逃げる! 退屈なのですよ、この世界は……! 我は退屈に停滞したこの世界に、動きを与えようと言うのです。腐敗神の教えは、そのためにとても都合がいい。さあ、神よ! 新たなる加護を! 我が手に眷属を! 毒の剣を──」
口上の後に、腐敗神に加護を願う祈りを始めたが、俺の前で長々と喋ったのはうかつだったな。
もう、声色は覚えたぞ。
「神よ、加護は返上奉る!」
俺は、司祭の声色をそのまま真似して、彼の手に現れようとしていた加護を打ち消した。
毒々しい輝きを手にするはずだった司祭が、一瞬止まる。
「なん……だと……?」
「この手でマンティコアの加護を無効化したのだが、君たちに横のつながりは無いのかね?」
「ああ、あのエルダーマンティコア……ッ」
司祭が話している隙に、イングリドが仕掛ける。
槍を抜き放ち、前進しながら一撃を繰り出す。
「うおおっ!? 眷属よ、我を守りなさい!」
司祭の足元から吹き出す、黄色い軟体の怪物。
昨日、冒険者をさらっていった粘菌だろう。
イングリドの槍は勢いを殺され、奪われそうになる。
「ぬおっ! なんのっ!!」
力づくで槍を引き戻すイングリド。
粘菌のパワーには負けない。
それどころか、槍をぐるぐる回して粘菌を巻き取っていく。
「なんですと!?」
これには司祭も驚愕。
驚いている暇があるのかな?
俺は既にナイフを投擲している。ギスカも詠唱を開始しているぞ。
「このっ! 眷属よ! 眷属よさらに! うおおおーっ!?」
ナイフが司祭の肩に、胸に突き刺さる。
惜しい。頭を狙ったものは防がれたか。
さらに、司祭の足元が爆発を起こし、彼を転倒させる。
これはギスカの魔法か。
司祭はゴロゴロと地面を転がって逃れた。
「馬鹿な……!? 立て続けに我の企みを食い止めるお前たちは何だ!? 何なのだ!?」
俺たちを睨みつけながら、周囲に現れた粘菌に覆われつつ、高速で後退を開始する司祭。
「名だたる冒険者の中に、お前たちの姿はない!」
「それはそうさ。俺とイングリドはつい最近組んだばかり。ギスカに至っては昨日仲間になったのだからな」
「おい、オーギュスト! 奴が逃げるぞ! 追わなくていいのか?」
「イングリド、焦らなくていい。全力で逃げの態勢に入ったあれは、簡単には止められないさ。そら、妨害してくるぞ」
俺の宣言と同時に、目の前に毒霧が発生した。
濃厚なそれが、司祭を見えなくしてしまう。
追いかけていたら、この霧に飲まれていたというところだ。
「おのれ! 覚えていなさい、冒険者ども! ガットルテ王国は国土の中に、多くの恨みを抱えている! まつろわぬ民と名乗る彼らが、また我の力を借りようとするだろう! これで終わりではない! 」
「芝居がかった男だなあ。さて、イングリド、ギスカ。これで腐敗神の司祭の接触は、しばらくないだろう。村人を救出するとしよう」
「いきなり切り替えたね。ま、後を追えないなら今できることをするだけさね」
「今日のオーギュストはテンションが低いな」
「無観客だからね。俺のテンションは、どうやら活躍を見てくれる人間がいないと保てないらしい。だが、低テンションなりに頑張ったつもりではある」
「その物言いすら覇気がない。大丈夫か? 本当に根っからの道化師気質なんだな……」
イングリドに心配されながら、次なる仕事を行うのである。
案の定というか何と言うか、村の家々には簡易地下室のようなものが存在し、そこに村人たちは閉じ込められていた。
ジョノーキン村と比べれば、準備は少々おざなりだな。
その後、俺の調査スキルで判明したことだが、俺たちを待ち伏せする準備を開始したのは、今朝のことだったらしい。
キャラバンとともにゆっくり来ていれば、もっと準備が整った状態で奇襲されていたわけだ。
こちらから仕掛けたのは正しかったな。
イングリドがふっ飛ばした冒険者も、回収されている。
あの司祭、冷静さを失っているように見せながらも、なかなか抜け目がない。
今度はもっと大勢の目があるところで戦いたいものだ……。
助け出した村人たちを、中央の広場に寝かせているうちにキャラバンも到着した。
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