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3rdフェーズ 散
No.70 アンジェラ
しおりを挟むアンジェラとウルルが共に歩いている映像を見ていたのはジーナ達だけではなかった。
仮面付けた男が部下からたった今入った情報を観ていた。
「これは……ああ、あの娘か、余計な事を。それは君の役目か本当に?」
男はどこか気怠そうに話す。
「あの娘を消せ、今No.13U223577に手を出される訳には行かん。キリサメ、今すぐに向かってくれ」
彼の椅子の隣にすぅっとキリサメが暗闇から現れた。
以前の通り全身真っ黒な装備にしっかりヘルメットまで着用している。
「むり、です」
「なんだ、君が断るとは」
「他に、仕事、ある」
背もたれに背中を預けていた姿勢から元に戻る仮面の男。
「私の命令よりも大事なものか、どんな仕事だ」
「あの方から、依頼」
「ああ、そうか。まあそれなら、許そう」
キリサメの言葉を聞いて頷く仮面の男。
「キリサメが忙しいなら……どうするか。そうだ」
仮面の男はどこかに連絡を繋ぐ。
「アルファ、シータ。実験中のアンドロイドを出せ。お姫様はアンドロイドがご所望のようだからな、私の自信作もみて貰おうじゃないか」
それだけ伝えて連絡を切る。
「……」
キリサメはじっと仮面の男に顔を向けていた。
「何をしているキリサメ?忙しいのだろう?早く行きたまえよ」
「はい」
キリサメはまた暗闇の中に姿を消した。
「まったく、なぜこうも人は自分の役目から目を背ける?役目を全うしない者は消えるのがこの世の常だというのに、哀れだな」
「そうだね、この装置でウルルちゃんは私のお母さんになるの」
アンジェラはウルルを撫でてそう言った。
「この装置で……もう少し説明が欲しい所ですが」
「すぐに分かるわ」
アンジェラはそう言うと装置にある幾つものをスイッチを押していく。
「さて、さっそく装置を作動させようかしら」
そう言って操作盤のレバーを引くアンジェラ。
しかし、装置は作動する様子はない。
「あれ、なんで装置が作動しないの?電力不足?」
操作盤のモニターに表示された物を見るアンジェラ。
「ウルルちゃん、何かしたでしょ。発電機が止まってる」
「はい、もう少しお話をしたいと思いまして」
「遠隔操作か、凄いね。外に連絡できないようにはしてたけど、そっかこの中の装置もいじれちゃうんだすごいね」
アンジェラは側に置いてあったカバンからある物を取り出した。
黒色にハートのアクセサリーのついたチョーカーのような物だ。
「まあ良いよ。その場合に備えて、これ付けようね」
「これは?」
アンジェラは優しくウルルの首に取り出した物を装着する。
「可愛いでしょ?、チョーカー風ジャマーよ。もうこれでどこにも接続できないよ」
「随分と用意が良いのですね」
小さく笑うアンジェラ。
「それじゃあ、発電機をつけてっと。あーそうだ、再起動に時間かかるんだった。ここの設備ってどれも古くてね。じゃあその間にお話しましょう、ウルルちゃんもそうしたかったんだよね?そうだ!」
「ええ、お話でしたら喜んで」
ウルルがそう返すとアンジェラは話し始めた。
「私のお母さんはね、ここでずっと研究してたの。私はそれをお手伝いしてた。とても楽しかったわ。ちょっと研究資金を集めるために人にこの装置を使わせて」
「それがデウス・エクス・マキナですね」
「そう、元々はお母さんが資金調達の為に始めたの。仮想現実の世界で男性とコミュニケーションを取る事が出来るって。そしたらあっという間に人が集まってきて、お布施だとか献金だとか言ってみんなお金を沢山払った。お母さんの狙い通り、あの世界こそ私の住む世界って思う人も少なくなかった。お母さんの技術って凄いでしょ?」
そう言って嬉しそうに話すアンジェラ。
「お母さまは今どこに?」
「いない……もう何年も前に死んじゃった」
「それは、なんというか残念ですね」
ウルルがそう伝えると首を振るアンジェラ。
「気にしないで、元々体は頑丈な方じゃ無かったし、それにこっちの現実の肉体に関する話だから。お母さんの意識はこの装置の中にある」
「装置の中?もしかしてお母さま自身の精神を仮想現実に送ったんですか?」
アンジェラは自身が持つ端末にある文章を表示させウルルに見せる。
「私はお母さんならそれぐらいしてると思うの。これ!お母さんの研究日誌」
ウルルが乗せられている台の上に腰掛けるアンジェラ。
「ここにはね色んな事が書いてあるの、ほら、この初期の方の奴!これが最初の装置の設計図!今とだいぶ見た目違うよね、大きさももっと大きかったんだって!」
「それを読んでアンジェラさんはこの研究を引き継いだ、という事ですか?」
研究日誌を見てウルルが言った。
「まあそんな感じね。一番最初の記憶はここで働くお母さんの背中、それぐらいずーっと私もここにいたから、自然とね。お母さんがいなくなってまだ3年程度だけど。最近はプライスおばさんが鬱陶しいけど。それでも楽しいわ」
「……それで、その研究日誌にお母さんがこの装置の中にいると記載されていたんですか?」
ウルルの質問に対してアンジェラは一瞬黙った。
「いや、明確には、でもほらここ見て!”仮想現実に人間の精神を送り込む事が可能になれば、この世界は人類の脅威から救われ、また人類を取り巻く数々の問題も解決する事が出来る”って!だからお母さんはこっちの世界からこの装置の中にある世界に行ったの」
「そうなんですね……」
「確証がないって言いたそうな顔してる。本当に人間みたいだねウルルちゃんは。そう、確かにこの日誌のどこにもお母さん自身が仮想現実に行くという話は無かった。その理論やもしそれが出来たらという話ばっかり」
声が震え始めるアンジェラ。
「でもお母さんなら!きっとあっちの世界に行けているはず!私にこの装置を託して、私が完成させるのを待っている!私が会いに行くのを待っている!!」
するとアンジェラの持つ端末から声が発せられる。
「アンジェラちゃーん!ここにいるんでしょー!」
プライスの声だ。
「プライス、もう来たのね」
アンジェラはそう言ってバッグを持ってその場を離れる。
「結構古い施設だね、でも使われてる痕跡がある」
「ここがその話にあった一番最初の教会があった場所ですか?」
「そうだよ、ここの地上に小さい建物を作ってね。表向きはただの電化製品を扱っている店だったみたいだけど。この地下で装置の研究を行っていたみたい」
先行するジーナに続いてプライスとシャーロットが道を進む。
「まって、誰かいる」
進んだ所でジーナが二人を止める。
「ねー!アンジェラちゃん?そこにいるんでしょ?」
ジーナが呼びかけると物陰からアンジェラが出てくる。
彼女の手には銃が。
「来ないで!」
銃を構えるアンジェラ。
「ああ、ウソまた銃?銃刀法って知ってる?」
ジーナが手を上げる。
そんなジーナの前にプライスが出る。
「プライスさん!」
「ここは私に」
「ねぇ、アンジェラちゃん、もう今日は色んな事があったから今更あなたが銃を持ってる事を怒ったりしない。だからね、落ち着いて話さない?あなたが連れて来たお友達はね、この人たちの大事な友達でもあるの」
プライスは手を上げたままゆっくりとアンジェラに歩み寄る。
「近づかないで!」
振るえる銃身をプライスに向けるアンジェラ。
そんなアンジェラの胸元に赤い光が当たっている事にプライスは気付く。
「アンジェラちゃん危ないッ!!」
プライスは咄嗟にアンジェラを突き飛ばした。
直後彼女の身体を一発の銃弾が貫く。
「ッ!!?」
ジーナとシャーロットが振り向く。
「任務遂行の妨害をした者の生命の保証はいたしかねます。妨害行為を行わない事を推奨します。対象に再度照準を合わせます」
現れたのは武装したアンドロイドの集団だった。
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