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63 好き嫌いとデザート

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 コツンという音を立てて置かれたプレートはやっぱりわたしが緑黄色野菜のプレートで、ジェフが甘ったるいスイーツプレートだった。

「じぇ、ジェフリー、プレートを交換しない?わたし、今日は甘いものな気分なの。」
「ちょ、ちょうどよかったです、お嬢様。私もちょうど今はお野菜を食べたい気分なのです。」
「お二方?好き嫌いはよろしくありませんよ?」
「「ひぃっ!!」」

 結局わたしとジェフは泣く泣く苦手なものをはむはむする羽目となってしまった。

 うぅー、美味しくない………。

「「ご、ごちそう、さまでした…………。」」

 食べ終わった後に残った空っぽの2枚のプレートの横に2体の死体が出来上がった。苦手なものを食べるというのは本当に苦痛だ。わたしもジェフもまだ不眠不休で働いたりお勉強したりすることの方がましだ。

「デザートはいかが致しますか?」
「内容によってはいただくわ。」
「同じく。」

 キラギラしい笑みに、わたしとジェフは眉を顰めて苦笑した。まだ嫌がらせを続ける気ならばわたしは逃げる。まぁ、ジェフも同じ気概だろう。

「レティシアお嬢様のデザートは季節のフルーツタルトで、ジェフリーお坊っちゃまにはお惣菜パンをご用意しています。」
「食べるわ。」「食べます。」

 大好物をぶらんと垂らされたわたしとジェフはきらんと目を輝かせた。

「冷たいジュースもご用意しておりますよ。」
「要るわ。」「要ります。」

 ガラスのポットに入れられた葡萄のジュースを持ち上げながら優しく笑ったエミリーに、わたしは微笑みを返した。ジェフも飲めるように工夫してあるだろうから、あまり甘くはないだろうけれど、それでも甘ーいフルーツタルトにはそれくらいがぴったりだ。
 ご機嫌に身体を揺らしていると、エミリーが無駄のない動きで大きなフルーツタルトの乗ったプレートをわたしの前におき、カトラリーを並べた。ジェフにはお惣菜パンとお手拭きが置かれた。
 ジュースをとぽとぽと注ぐと、ジュースからフルーツ特有の酸味のある葡萄の甘い香りが漂う。

「それでは、私はこれにて失礼させていただきます。ジェフリーお坊っちゃま、お片づけはお任せ致しますね。」
「はい、お任せください。」

 エミリーは穏やかに頷いて一礼をした後、わたしの私室から颯爽と去って行った。彼女の目には最近苦手なものを避けていたわたしたちが不安に映ったのだろう。やっぱり彼女はおばあちゃんみたいだ。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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