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続編

69 わたくしの思い

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 わたくしの言葉を受けたお義母さまは、ふるふると神妙な顔で首を横に振る。

「だあめ。順調にコツコツやらないと、身体を壊してしまうわ。壊してしまっては元も子もないじゃない。だから、身体を鍛えるためには、自分を労わることも、とーっても大事なのよ?これはライアンにも口すっぱく言っていることよ。覚えておきなさい。ディア」
「………はあい」

 いじけモードでワンピースの裾をひらひらと泳がせると、ライアンの瞳とお揃いの美しい水色の生地がふわふわと舞い上がる。真っ白な腰丈のダッフルコートのポケットに手を突っ込んだわたくしは、未だに先程弄んだ名残りで揺れているワンピースのそんな様子を眺めながら、ぽつぽつと思っていることを口にする。

「………ライアンがね、ライアンだけがね、わたくしの夢に出てきてくれなかったの。
 何度も何度も、呼びかけてもね、全く出てきてくれなかったの。気配すら見せてくれなかった。恋しくて仕方なくて、それでね、わたくし、彼のことが好きなんだなって気がついたの。小説の中にもあるでしょう?なんかふとした瞬間に、恋心を自覚するっているやつ。
 今まではライアンと婚約するというのは、義務感からくるものだったの。分家たちをまとめるために、わたくしとライアン、両方が当主になれるって言う状況を作り出すための。けれど、夢に出てきてくれなくて、寂しい状況に陥って、わたくし思ったの。『あぁ、わたくしはこんなにライアンに頼りっきりで、心の支えにしていたんだな』って。告白………、というよりプロポーズね。プロポーズしてくれた時、本当にわたくし、嬉しかったの。
 『もう当主にはなれない。わたくしの存在価値は完璧に失われた』と、本気で思っていたから。これからは、ライアンを当主にするために、周りの人間からわたくしの存在を消して、わたくしがいたところに、ライアンを突っ込まないといけないと思っていたから………」

 そう。
 わたくしは本気で、彼を当主に推す気だった。わたくしの全てを費やしてでも、彼を当主にするつもりだった。無能で無知なわたくしよりも、圧倒的に彼の方が何十倍も優れているから。しかも、彼は分家筋の人間で我がローズバード筆頭公爵家の血筋を引いている。彼が当主になることに、なんの問題も存在していないのだ。

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