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14 わたくしのテリトリーにご招待

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 ガシャン!!

 物凄い音とともに扉が開いて、お父さまとお義母さまが入ってきた。わたくしの頭の中はライアンの鼻血から絶賛大混乱中だ。

「っ、ごめんなさい、ごめんなさいっ、ごめんなさい、ごめんなさいっ!!」
「!!」
「ちょ、何があったの!?」
「俺の鼻血に義姉上がびっくりしてしまって………」

 わたくしは何が何だか分からずに謝罪の言葉を叫び、お父さまは何が起こったか分からず固まり、お義母さまがライアンを問い詰め、ライアンが落ち着いて答えた。

「あぁー、なーんだそんなこと。ディア、大丈夫だから落ち着きなさい。ほら、大丈夫、大丈夫」

 お義母さまが、泣きじゃくって鼻水と涙だらけのぐしゃぐしゃの顔のわたくしを躊躇いなく抱きしめて、背中をぽんぽんとした。

「で?本当のところは?」
「うぐっ、義姉上がいきなり俺に告白するみたいな言葉を言ってきて………、そしたらぽたぽたと」
「あぁ、分かったわ。旦那さま、絶対にこの子ディアを安易に外に出さないでください。この子無意識のたらしです」
「?? ぐすっ、ぐす、、お義母さま………?」

 自分の鼻を啜る音が大きすぎて、周りの音がうまく聞き取れないわたくしは、困ったようにお義母さまの服の袖を引っ張った。

「あぁ、なんでもないわ。とりあえず、目が腫れてしまう前に冷やさなきゃだから、お部屋に戻りましょう。ディアの専属のメイドはどなた?」
「私です」

 メアリーが手を上げて背筋を伸ばしたままこちらにやってきた。

「………ありー」
「氷を持ってすぐにお部屋に参ります。今日の気分はなんですか?」

 幼い頃に呼んでいた愛称を呼ぶと、メアリーは顔を綻ばせてわたくしの頭をぽんぽんと撫でた。

「ひっく、ルイボス………」
「すみれ入りですか?」

 わたくしはこくんと頷いた。

「はちみつも、」
「はい、たっぷりとお持ちいたします」
「誰か、ディアのお部屋を案内してちょうだい」

 1人のメイドに案内され、わたくしとお義母さまはわたくしの自室へと入った。ライアンをいじめるはずが、結局うまくいかなかった。それどころか、いじめる対象たるお義母さまをわたくしのテリトリーに上げた挙句、励まされてしまっている。

「失礼いたします。メアリーです」
「どうぞ」

 お義母さまは堂々としている。
 今日も作法やらなんやらで難癖をつけてあげるつもりだったのに、1度も粗相をしていない。それどころか、綺麗で美しくて、それでいて模範的だ。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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