上 下
106 / 144

105 お勉強会を

しおりを挟む
▫︎◇▫︎

 席替えからわずか数日後、図書館にある自習机のある空間ではお葬式のような空気が発せられていた。理由は簡単、もうすぐ2学期中間テストがあるからだ。

「こらっ、ゆーなちゃん!!寝ちゃダメ」
「ふげー、」

 かれこれもう早くも2時間、いつも遊んでいる6人組でお勉強会を行なっていた。今日は珍しく、門川も参加していて、普段よりも勉強が捗っていた。

「久遠、そこ違うよ。そこはまだ今の段階では標本調査だよ」

 教科書をコツンと指さされて慌てて答えを確認した心菜は、目を見開いた。

「うわっ、本当だ。教えてくれてありがとう、門川」
「どういたしまして。その問題、引っかかるよね………」
「そうだね。難しい。テレビの視聴率なんて、今どき全数調査出来そうなのに………」

 塾でも引っかかってしまったことを思い出した心菜は、不服から頬をぷくぅーっと膨らませた。今心菜が解いているのは統計の問題で、標本調査と全数調査、どちらに分けるのが最適かというのを求めるという問題だ。えっちらおっちら解いてはいるが、正直に言って、心菜はこの問題が少しだけ苦手かもしれない。よく引っかかる。そもそも、全部全数調査にしてしまえばいいのではないかとしか思えない。今どきネット社会ならば、そのくらいのことならばできる気がするのだ。

「はははっ、できていたとしても今のところは標本調査としての扱いだよ」
「わかってるって」

 心菜はぶーぶーと文句を言いながらどんどん問題を片付けていく。2学期中間テストまで2週間、1週間前に交差発表があるから、出来るだけそれまでに必要なお勉強を終わらせておきたい心菜は、カリカリとまたシャープペンシルを走らせる。くるくると浮き足立ってしまっている文字を不服に眺めながらも、目の前に彼が座っているというだけで鼓動が高鳴ってしまっている心菜は、それを必死になって隠すために問題をひたすらに解き続ける。

「………久遠、そこ間違ってる」

 程よい低音のボイスに、気だるげな声の出し方。普段の元気さとのギャップで左胸がちょっとだけキュンとなった心菜は、ぷいっと視線を横にずらして彼のことを柔らかく睨みつける。キツく睨めなかったのは悔しいが、できなかったものは仕方がない。

「………言われなくてもちゃんと分かってるわよ。ばーか」

********************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

[1分読書]あたしの実弟の実兄が好きなんだけど・・・血のつながりはありません

無責任
青春
実弟の実兄、だけど義兄。ちょっと複雑な家庭環境だけど・・・ 高校1年生の主人公、真田ひかり。 彼女には血のつながっている妹と弟が・・・。 その弟には、父親が別の兄が・・・。 その名は、田中信繁。 野球部のエースだ。 ちょっと複雑な関係・・・。 だから困る・・・。

深海の星空

柴野日向
青春
「あなたが、少しでも笑っていてくれるなら、ぼくはもう、何もいらないんです」  ひねくれた孤高の少女と、真面目すぎる新聞配達の少年は、深い海の底で出会った。誰にも言えない秘密を抱え、塞がらない傷を見せ合い、ただ求めるのは、歩む深海に差し込む光。  少しずつ縮まる距離の中、明らかになるのは、少女の最も嫌う人間と、望まれなかった少年との残酷な繋がり。 やがて立ち塞がる絶望に、一縷の希望を見出す二人は、再び手を繋ぐことができるのか。 世界の片隅で、小さな幸福へと手を伸ばす、少年少女の物語。

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

光属性陽キャ美少女の朝日さんが何故か俺の部屋に入り浸るようになった件について

新人
青春
 朝日 光(あさひ ひかる)は才色兼備で天真爛漫な学内一の人気を誇る光属性完璧美少女。  学外でもテニス界期待の若手選手でモデルとしても活躍中と、まさに天から二物も三物も与えられた存在。  一方、同じクラスの影山 黎也(かげやま れいや)は平凡な学業成績に、平凡未満の運動神経。  学校では居ても居なくても誰も気にしないゲーム好きの闇属性陰キャオタク。  陽と陰、あるいは光と闇。  二人は本来なら決して交わることのない対極の存在のはずだった。  しかし高校二年の春に、同じバスに偶然乗り合わせた黎也は光が同じゲーマーだと知る。  それをきっかけに、光は週末に黎也の部屋へと入り浸るようになった。  他の何も気にせずに、ただゲームに興じるだけの不健康で不健全な……でも最高に楽しい時間を過ごす内に、二人の心の距離は近づいていく。 『サボリたくなったら、またいつでもうちに来てくれていいから』 『じゃあ、今度はゲーミングクッションの座り心地を確かめに行こうかな』  これは誰にも言えない疵を抱えていた光属性の少女が、闇属性の少年の呪いによって立ち直り……虹色に輝く初恋をする物語。 ※この作品は『カクヨム』『小説家になろう』でも公開しています。 https://kakuyomu.jp/works/16817330667865915671 https://ncode.syosetu.com/n1708ip/

ペア

koikoiSS
青春
 中学生の桜庭瞬(さくらばしゅん)は所属する強豪サッカー部でエースとして活躍していた。  しかし中学最後の大会で「負けたら終わり」というプレッシャーに圧し潰され、チャンスをことごとく外してしまいチームも敗北。チームメイトからは「お前のせいで負けた」と言われ、その試合がトラウマとなり高校でサッカーを続けることを断念した。  高校入学式の日の朝、瞬は目覚まし時計の電池切れという災難で寝坊してしまい学校まで全力疾走することになる。すると同じく遅刻をしかけて走ってきた瀬尾春人(せおはると)(ハル)と遭遇し、学校まで競争する羽目に。その出来事がきっかけでハルとはすぐに仲よくなり、ハルの誘いもあって瞬はテニス部へ入部することになる。そんなハルは練習初日に、「なにがなんでも全国大会へ行きます」と監督の前で豪語する。というのもハルにはある〝約束〟があった。  友との絆、好きなことへ注ぐ情熱、甘酸っぱい恋。青春の全てが詰まった高校3年間が、今、始まる。 ※他サイトでも掲載しております。

プレッシャァー 〜農高校球児の成り上がり〜

三日月コウヤ
青春
父親の異常な教育によって一人野球同然でマウンドに登り続けた主人公赤坂輝明(あかさかてるあき)。 父の他界後母親と暮らすようになり一年。母親の母校である農業高校で個性の強いチームメイトと生活を共にしながらありきたりでありながらかけがえのないモノを取り戻しながら一緒に苦難を乗り越えて甲子園目指す。そんなお話です *進行速度遅めですがご了承ください *この作品はカクヨムでも投稿しております

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

処理中です...