上 下
107 / 144

106 優奈はほくそ笑む

しおりを挟む
▫︎◇▫︎

 お勉強会の最中、優奈は終始ほくそ笑んでいた。なぜなら、心菜はまんまとどんどん優奈の張った罠に引っかかってくれているからだ。

『こーこな!ねぇ、最近立花とはどうなの?』
『どうって?席が隣になったから、ゆーなちゃんが知ってなさそうな彼の情報が欲しいっていうこと?』

 席替え後初登校に日、優奈と心菜の間で交わされた会話だ。

(………に、鈍い………!!鈍すぎる………!?)

 そして、優奈が頭を抱えざるを得なくなった会話でもある。勉強・運動・芸術、なんでもそこそこ器用にこなす心菜の唯一と言っても過言ではないほどの弱点、それは人からの評価に対する鈍感さだ。
 誰がなんと言おうと、どう言おうとも、全部お世辞や嫌味として取ってしまう心菜は、幼児レベルに恋愛偏差値が低かった。幼馴染優奈はそのことを知っていたが、知ってはいたが、心菜がここまで鈍感であることに無意識のうちに縋り付いているとは夢にも思っていなかったのだ。正直に言って、決意早々優奈は心菜と立花をくっつけることを諦めていた。
 だがしかし、こんなことで諦める優奈ではない。優奈は毎日のように立花の情報を心菜に集めさせ、彼に四六時中彼女の視線が向かうように仕向けた。こうすれば、鈍くて鈍くて鈍すぎる心菜も、どうにかこうにか自分の恋心に気がつくのではないかと思ったのだ。

『で?今日の立花はどうだったの?』
『………優しかったよ。落とした消しゴムを拾ってくれたの』

 だが、今目の前で起こっていることはどうなのだろうか。
 恋する少女のように薄く頬を赤く染めあげ、潤んだ瞳で彼を見つめ、柔らかい表情で微笑み、そしてぎゅっと左胸を押さえているこの姿は………!!
 優奈は目の前で起こっていることに感動し、そして達成感を得た。

「ーーーねえ、聞いてる?」
「………?
 あー、ごめん。聞いてなかった」
「むうぅー、一生懸命説明したのに………!!」

 数学の問題を教えてもらっている最中に意識を飛ばしてしまっていた優奈は、心菜のぷんぷんとした様子に苦笑した。

「めんごめんご。今日は彼ピとデートだから、もう抜けるわー。じゃあねー!」
「ふぇ!?」

 びっくりした顔をした心菜に苦笑した優奈は、ばいばいと手を振って学校の外に出る。

(あぁーあ、私ってば、お人好しがすぎるな………)

********************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

 もうちょっと優奈サイドでやります!!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

深海の星空

柴野日向
青春
「あなたが、少しでも笑っていてくれるなら、ぼくはもう、何もいらないんです」  ひねくれた孤高の少女と、真面目すぎる新聞配達の少年は、深い海の底で出会った。誰にも言えない秘密を抱え、塞がらない傷を見せ合い、ただ求めるのは、歩む深海に差し込む光。  少しずつ縮まる距離の中、明らかになるのは、少女の最も嫌う人間と、望まれなかった少年との残酷な繋がり。 やがて立ち塞がる絶望に、一縷の希望を見出す二人は、再び手を繋ぐことができるのか。 世界の片隅で、小さな幸福へと手を伸ばす、少年少女の物語。

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

プレッシャァー 〜農高校球児の成り上がり〜

三日月コウヤ
青春
父親の異常な教育によって一人野球同然でマウンドに登り続けた主人公赤坂輝明(あかさかてるあき)。 父の他界後母親と暮らすようになり一年。母親の母校である農業高校で個性の強いチームメイトと生活を共にしながらありきたりでありながらかけがえのないモノを取り戻しながら一緒に苦難を乗り越えて甲子園目指す。そんなお話です *進行速度遅めですがご了承ください *この作品はカクヨムでも投稿しております

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

光属性陽キャ美少女の朝日さんが何故か俺の部屋に入り浸るようになった件について

新人
青春
 朝日 光(あさひ ひかる)は才色兼備で天真爛漫な学内一の人気を誇る光属性完璧美少女。  学外でもテニス界期待の若手選手でモデルとしても活躍中と、まさに天から二物も三物も与えられた存在。  一方、同じクラスの影山 黎也(かげやま れいや)は平凡な学業成績に、平凡未満の運動神経。  学校では居ても居なくても誰も気にしないゲーム好きの闇属性陰キャオタク。  陽と陰、あるいは光と闇。  二人は本来なら決して交わることのない対極の存在のはずだった。  しかし高校二年の春に、同じバスに偶然乗り合わせた黎也は光が同じゲーマーだと知る。  それをきっかけに、光は週末に黎也の部屋へと入り浸るようになった。  他の何も気にせずに、ただゲームに興じるだけの不健康で不健全な……でも最高に楽しい時間を過ごす内に、二人の心の距離は近づいていく。 『サボリたくなったら、またいつでもうちに来てくれていいから』 『じゃあ、今度はゲーミングクッションの座り心地を確かめに行こうかな』  これは誰にも言えない疵を抱えていた光属性の少女が、闇属性の少年の呪いによって立ち直り……虹色に輝く初恋をする物語。 ※この作品は『カクヨム』『小説家になろう』でも公開しています。 https://kakuyomu.jp/works/16817330667865915671 https://ncode.syosetu.com/n1708ip/

ペア

koikoiSS
青春
 中学生の桜庭瞬(さくらばしゅん)は所属する強豪サッカー部でエースとして活躍していた。  しかし中学最後の大会で「負けたら終わり」というプレッシャーに圧し潰され、チャンスをことごとく外してしまいチームも敗北。チームメイトからは「お前のせいで負けた」と言われ、その試合がトラウマとなり高校でサッカーを続けることを断念した。  高校入学式の日の朝、瞬は目覚まし時計の電池切れという災難で寝坊してしまい学校まで全力疾走することになる。すると同じく遅刻をしかけて走ってきた瀬尾春人(せおはると)(ハル)と遭遇し、学校まで競争する羽目に。その出来事がきっかけでハルとはすぐに仲よくなり、ハルの誘いもあって瞬はテニス部へ入部することになる。そんなハルは練習初日に、「なにがなんでも全国大会へ行きます」と監督の前で豪語する。というのもハルにはある〝約束〟があった。  友との絆、好きなことへ注ぐ情熱、甘酸っぱい恋。青春の全てが詰まった高校3年間が、今、始まる。 ※他サイトでも掲載しております。

[1分読書]あたしの実弟の実兄が好きなんだけど・・・血のつながりはありません

無責任
青春
実弟の実兄、だけど義兄。ちょっと複雑な家庭環境だけど・・・ 高校1年生の主人公、真田ひかり。 彼女には血のつながっている妹と弟が・・・。 その弟には、父親が別の兄が・・・。 その名は、田中信繁。 野球部のエースだ。 ちょっと複雑な関係・・・。 だから困る・・・。

サンスポット【完結】

中畑 道
青春
校内一静で暗い場所に部室を構える竹ヶ鼻商店街歴史文化研究部。入学以来詳しい理由を聞かされることなく下校時刻まで部室で過ごすことを義務付けられた唯一の部員入間川息吹は、日課の筋トレ後ただ静かに時間が過ぎるのを待つ生活を一年以上続けていた。 そんな誰も寄り付かない部室を訪れた女生徒北条志摩子。彼女との出会いが切っ掛けで入間川は気付かされる。   この部の意義、自分が居る理由、そして、何をすべきかを。    ※この物語は、全四章で構成されています。

処理中です...