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これが躾の成果です
②
しおりを挟む一本煙草を吸ってから戻るか、とも思ったがやっぱり考えを改め直した。
俺には最近楽しみにしていることがある。
それを早く見るため、足早に自分の部署へと戻った。
自分の席でパソコンを触るふりをして、そのパソコンの奥にあるものに視線を移す。
奥には弁当を咀嚼している環さんが見える。
今までであれば、弁当なんてとっくの昔に食べ終わって鬼の形相でパソコンとにらめっこしている頃だ。
しかし今の環さんはボーっと遠くを見つめていて、弁当にはほとんど手を付けていない。
食欲がないのか、何か考え事があるのか。
おそらくどちらもだろう。
俺はスマホを開いて環さんにスタンプを送信した。
スマホが点滅した瞬間、放心していたのが一転して、凄まじいスピードで自分のスマホを手に取る環さん。
画面を見つめてしかめっ面をしているけど、頬が少し紅潮しているのを俺は見逃さない。
『本当に嫌い』
しばらくの後それだけ送られてきた。
随分な嫌われようだな。
『ひどいなあ』
『うるさい』
『職場でまんこベタベタにしてる変態にそんなこと言われる筋合いはありません』
環さんの頬がかっと紅潮する。
図星だったのだろう。
俺は畳みかけるようにメッセージを送った。
『イけなくてそろそろ1ヵ月くらいですか?オナニーとか試してみました?』
答えなんて分かり切ってる質問を投げかける。
あの状態なら、まあ何度か試しただろう。
そしてイけなくて今に至る、というところまで容易に想像がつく。
環さんが不幸なのは初めての経験が俺だったということだ。
女に困らない人生を送ってきた俺は自分で言うのもアレだがテクニックがある。
イくときの平均水準が俺のテクニックだとしたら、あのセックス初心者の環さんが自分で弄ってイけるわけがない。
環さんは一心に俺を睨みつけているが、すでに顔がとろけ始めている。
さすがに会社でその顔はまずいだろう。
『やらしい顔でこっち見るのやめてください』
慌てて顔を隠す環さん。
鬼の副部長と呼ばれている彼女が5歳も年下の俺に翻弄されている様子は最高にクるものがある。
『イきたいですか?』
環さんがバッと顔を上げてこちらを見つめてくる。
俺は今までスタンプを送ったり、ちょっかいをかけたりすることはあっても、イきたいかどうか確認することは一度もしなかった。
だから環さんにとってはやっと巡ってきたチャンスだろう。
『いきたい』
すぐに返事が返ってきた。
よっぽど辛いんだろうな。
俺は瞳を潤ませてこちらを見つめている環さんに微笑み、メッセージを送った。
『午後の業務中、下着無しで過ごせたら考えてあげます。三時に旧会議室に来てください。できなければ約束は無しです』
環さんの顔色がどんどんと悪くなっていく。
一生懸命返信をしているようだが、俺はスマホを鞄に入れ何事もなかったかのように仕事を開始した。
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