EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門

文字の大きさ
上 下
93 / 128
第二章 ガイノイドが管理する街々

093 魂という名の情報群

しおりを挟む
「一体どこで、どんな……?」
「それを明かしてしまったら報酬にならないのである」

 マグが思わず呟いた問いを受け、ローフェが若干苦笑気味に言う。
 当たり前のことだ。
 しかし、個人的な一大目標だっただけに無意識に口から出てしまった。
 そう自分自身で理解して尚、情報を知りたいと逸る気持ちは募るばかりだが。

「ですが、それが本当に私達の望む情報かどうか、確度は如何程でしょうか」
「ふむ…………まあ、概要程度であれば伝えても構わないであろう。それを以って君達の方で判断して欲しいのである」

 マグの代わりに尋ねたアテラに、ローフェは少し考えてからそう告げた。
 一言一句聞き逃さぬように、一層意識を集中させる。
 そんなマグに一度視線を向けてから、ローフェは再び口を開いた。

「その研究とは、人間から電子頭脳へ、電子頭脳から人間への魂の移動である」
「た、魂……?」

 いきなり何とも胡散臭い言葉が飛び出てきて、マグは眉をひそめてしまった。
 少なくとも元の時代では、そうした霊的な要素は信用性が失墜していたからだ。

「ああ……魂と言うと誤解を招くかもしれないのである。個を個たらしめる情報群と言った方が適切であるかもしれぬな」

 言い換えたローフェに、そういう意味ならばと頷いて理解を示す。
 人格。記憶。物事の判断基準。
 自分を自分として定義できる何かを網羅したもの全て。
 それを既に存在していた単語と照らし合わせ、魂と呼んだ訳だ。

「そう言えば、私達の時代には脳とそれに近い機能を持つ電子頭脳は本来観測困難な波動生命体を捉えて閉じ込める、なんて説もありましたデスね」

 オネットが思い出したように告げたそれはある種の空想に過ぎないだろう。
 だが、ローフェが口にした定義であれば、人間には人間の、アンドロイドにはアンドロイドの魂が存在すると言っていいのかもしれない。

「何にせよ、その街では魂なるものの研究が行われ、人間を機人にする、あるいは機人を人間にする技術を再現する研究が行われているのである」
向学の街・学園都市メイアここでは行われていないのですか?」
「勿論、我が学園でも同様のテーマを取り扱っている者もいるにはいるが……かの街に比べるとさすがに盛んではないのである」

 どうやら、そもそも研究の規模が小さいようだ。
 学園都市を名乗るからには、学問に特化した街であることは間違いない。
 しかし、広く様々な分野を網羅しているがために、ある特定の内容に限定すると最先端とは言いがたい状況に陥っている部分もあるのだろう。
 世の中の需要という要素もある。
 それを裏づけるように。

「今の時代、研究と言えば原炎擬装PTRデバイスに関するものがほとんどデスからね」

 オネットがそう補足を加えた。

原炎擬装PTRデバイス?」
出土品PTデバイスを分析し、現存する技術のみで再現した装置のことである。迷宮遺跡に頼り切りでは、万一機能停止した時に目も当てられないことになるからな」

 確かにとマグは納得を示した。
 誰かが仕組みを十全に理解して製法を確立していなければ、オーパーツのように成り果ててしまい、後の世に継承していくことができなくなる。
 半端に未来の技術を残したこの時代、この世界。
 かつての文明の残滓を全て取り払われてしまったら、大きな混乱が生じてしまうことは目に見えている。

「ともあれ、報酬は君達の望む技術を研究している街の情報と紹介状でよいであろうか。あそこは少々排他的であるからな」

 逸れた話題の軌道修正をするように、ローフェが改めて問いかけてくる。
 人間から電子頭脳へ、電子頭脳から人間への魂の移動に関する研究を行う街。
 もっとも、あくまでも研究段階。そうである以上、そこに行けば即座に目的を達成できるという訳ではないのは間違いない。
 それこそ、先程話題に出た原炎擬装PTRデバイスの製作のような状態だろう。
 とは言え、その機能を有した出土品PTデバイスの情報を持っている可能性がある。
 だから、マグ個人としては今すぐ場所を聞き出して向かいたいぐらいだった。

「報酬は問題ありません。ですが、攻略する迷宮遺跡についてもう少し詳しく教えて下さいませんか?」

 そうしたマグの心情を察してか、依頼を受ける方向で慎重に中身を問うアテラ。
 対してローフェは一つ頷いてから口を開き――。

「あそこは侵入者が有する超越現象PBP先史兵装PTアーマメントを尽く再現した機獣が襲いかかってくる、恐るべき迷宮遺跡である」

 そう重々しい口調で告げた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

月とガーネット[上]

雨音 礼韻
SF
 西暦2093年、東京──。  その70年前にオーストラリア全域を壊滅させる巨大隕石が落下、地球内部のスピネル層が化学変化を起こし、厖大な特殊鉱脈が発見された。  人類は採取した鉱石をシールド状に改良し、上空を全て覆い尽くす。  隕石衝突で乱れた気流は『ムーン・シールド』によって安定し、世界は急速に発展を遂げた。  一方何もかもが上手くいかず、クサクサとしながらふらつく繁華街で、小学生時代のクラスメイトと偶然再会したクウヤ。  「今夜は懐が温かいんだ」と誘われたナイトクラブで豪遊する中、隣の美女から贈られるブラッディ・メアリー。  飲んだ途端激しい衝撃にのたうちまわり、クウヤは彼女のウィスキーに手を出してしまう。  その透明な液体に纏われていた物とは・・・?  舞台は東京からアジア、そしてヨーロッパへ。  突如事件に巻き込まれ、不本意ながらも美女に連れ去られるクウヤと共に、ハードな空の旅をお楽しみください☆彡 ◆キャラクターのイメージ画がある各話には、サブタイトルにキャラのイニシャルが入った〈 〉がございます。 ◆サブタイトルに「*」のある回には、イメージ画像がございます。  ただ飽くまでも作者自身の生きる「現代」の画像を利用しておりますので、70年後である本作では多少変わっているかと思われますf^_^;<  何卒ご了承くださいませ <(_ _)>  第2~4話まで多少説明の多い回が続きますが、解説文は話半分くらいのご理解で十分ですのでご安心くださいm(_ _)m  関連のある展開に入りましたら、その都度説明させていただきます(=゚ω゚)ノ  クウヤと冷血顔面w美女のドタバタな空の旅に、是非ともお付き合いを☆  (^人^)どうぞ宜しくお願い申し上げます(^人^)

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...