ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~

青空顎門

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第2章 人間⇔少女化魔物

151 〈一茎之葦〉

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「連れて参りました」

 アコさんの命を受けて小会議室から出ていったエイルさんは、しばらくすると指示された通り、悪魔(シャックス)の少女化魔物ロリータたるルシネさんを伴って戻ってきた。
 あくまでも服役中の身である彼女だが、今は囚人用の簡素な着物ではなく特別収容施設ハスノハの職員達と同じ詰襟の制服を着ている。枷もない。
 恐らく、本来はいたいけな少女に過ぎないルコちゃんへの配慮だろう。
 如何にも囚人然とした姿に威圧され、好ましくない揺らぎが心に生じないように。
 彼女を救うための方法は彼女自身の精神、願望の強さに依存している訳だから。

「ルシネさん。お手数をおかけして申し訳ありません」
「何、私にも益のあることだ。それに救世の転生者の頼みとあらば、否やはない」

 頭を下げた俺に、ルシネさんは気にしなくていいと微笑む。
 彼女の口振りからすると、これも特別労役としてしっかりカウントされるようだ。
 有用な複合発露エクスコンプレックスだからと最近は頼ってばかりだったので少々心苦しかったが、ちゃんと対価が支払われるのであれば幾分か気が楽になる。

「さて――」

 そのルシネさんは椅子に座ったままでいるルコちゃんへと視線を向け、あの夜に見て覚えがあるだろうその姿を確認して「確かにあの時の子だ」と一つ頷いた。
 事情に関しては既に、ここに来るまでの間にエイルさんから聞いているのだろう。

「君からすると初めましてになるか。私の名はルシネ・ロリータ・ヨスキ。暴走状態にあった君に記憶の封印を施した少女化魔物だ」
「あ……は、はい。その、えっと、よろしくお願いします」

 凛とした雰囲気を持ち、少し硬い言葉遣いで言うルシネさんを前にして、結局は気後れしたようにオドオドと挨拶をするルコちゃん。
 とは言え、見た感じ、恐れではなく単なる緊張のようだから問題はないだろう。
 もし囚人服だったら、落ち着くまで更に時間がかかっていたかもしれない。

「まあ、そう硬くならなくていい。私もイサクと、救世の転生者と同じく君の味方だ」

 ルシネさんはそんなルコちゃんを安心させるように、柔らかな笑みを浮かべる。
 それで大分肩の力が抜けたのか、ルコちゃんは表情を和らげて「はい」と応じた。
 この様子なら案を実行に移しても問題はなさそうだ。

「じゃあ、早速始めましょうか」

 そう判断し、この場にいる全員を見回しながら言う。
 そして皆が頷いて同意するのを確認してから、俺はそのまま言葉を続けた。

「ルコちゃん。変化を確認できるように、腕輪を外しておいてくれるかな?」
「腕輪を? …………分かり、ました」

 理由に一応の納得をしてくれたようでルコちゃんは少し躊躇いながらも受け入れてくれ、常時発動状態にある複合発露を封じるそれを腕から取り外した。
 その瞬間。必然的に、現状リビングデッドの上位少女化魔物エイペクスロリータのままである彼女の複合発露〈不死鎖縛ロットホラー〉が発動し、すぐさま全身が腐り落ちていく。

「む……」

 直後、再び強烈な腐臭が小会議室に漂い始め、ルシネさんが一瞬顔をしかめた。
 こればかりは慣れもあるし、身構えていないと仕方がない部分もある。
 特に彼女は、あの夜の戦いでも基本的に影の中にいたし、安全に精神干渉を行うためにルコちゃんを空に打ち上げた後では死臭も届かなかったはずだから。

 とは言え、ルコちゃんからするとその辺の事情は関係ない。
 当然の反応として、彼女はまた辛そうに俯く。
 だが、まあ、今の段階に限って言えば、恐らくは絶望してしまうよりも人間に戻りたいという意思が強まる方向に作用するだろう。
 そう考えながら、その気持ちを更に補強するために俺は彼女の傍に寄った。

「救世の転生者様?」

 その行動に驚いたのか、ルコちゃんはパッと顔を上げてこちらを見る。
 グロテスクに腐り果てた顔からはハッキリとした表情を読むことはできないが……。
 声色に戸惑いの色を滲ませたルコちゃんは、臭いを気にしてか遠ざかろうとする。
 それに構わず、俺は彼女の手を取った。
 そのまま腐った肉の隙間から骨の白が見て取れる右手と左手にそれぞれ手を添え、そのまま挟み込むようにして包む。
 接近したことで死臭が鼻を突くが、表情筋をしっかりと制御して顔には出さない。

「説明した通り、ここからは君の思いの強さが何よりも重要だ」
「は、はい」

 俺の両手と、近づいた顔とを見比べながら頷くルコちゃん。
 憧れの救世の転生者との接触が、彼女の精神に好影響を与えてくれるといい。
 未来ある子供のためになるのなら、肩書きを利用するぐらい取るに足らないことだ。

「ルコちゃん。俺を信じて、人間に戻りたいと強く願うんだ」
「はいっ」

 ルコちゃんは一つ気合いを入れたように返事をすると、自身の手を包み込む俺の手を見詰めながら「人間に戻りたい、人間に戻りたい」と小さく繰り返し始めた。
 目を閉じて念じた方が集中できるのではないかと一瞬思うが、〈不死鎖縛〉が発動した状態では瞼も腐ってなくなっているのでそうもいかない。
 そう考えると、この形が最善だろう。

「ルシネさん」
「承知した」

 俺の言葉を合図に、ルシネさんは狂化隷属の矢を取り出して自らの掌に突き刺す。
 ルコちゃんの複合発露〈不死鎖縛〉は現状、位階としては第五。
 通常のアーク複合発露エクスコンプレックスでも十分かもしれないが、恐らくチャンスは一回限りだ。
 一度失敗したら、二度目はもう人間に戻れると信じ切れなくなる可能性が高い。
 念には念を入れておいた方がいい。

「あ…………」

 そうしてルシネさんがアーク暴走パラ複合発露エクスコンプレックス千年ラスティング五色オーバーライト錯誤パーセプト〉を発動させると、それを示すようにルコちゃんが一瞬呆けたような声を上げた。

「あ、く。う、うううっ!!」

 かと思えば、彼女は苦悶の声を上げ始める。
 瞬間的に増幅されていく感情の奔流。
 余りに急激な変化に、脳の処理が追いつかずに混乱しているのだろう。

「これ、大丈夫なのか!? イサク!」

 ルコちゃんの苦しげな様子に、アコさんが焦ったように尋ねてくる。
 俺としても少女の苦しむ姿は見たくない。
 だが、何もしなければ絶望が死を呼び寄せる。荒療治は不可欠だ。
 何より、感覚というものは慣れてしまうもの。
 彼女の精神に配慮して徐々に感情を増幅するのでは、失敗の危険性が高まる。
 それと、少なくとも身体への悪影響は再生能力で緩和されるはずだ。

「このまま続行します」

 だからアコさんとルシネさんに対し、俺はそうルコちゃんの前であることも意識してキッパリと告げ、そうしながら彼女の両手を今も包み込んでいる手の力を少し強めた。

「ルコちゃん。その気持ちは決して君を害するものじゃない。感情の流れに逆らわずに心を委ねて、もっと強く願うんだ!」

 そのまま成功の一助となるように声をかけ続ける。

「う、うううっ」
「大丈夫。君は人間に戻れる。君が描いていた未来を目指すことができる!」

 精神干渉は感情の増幅のみ。
 返事はないが、聴覚が閉ざされる訳ではないから届くはず。
 やがて、その証明となるように――。

「あ、う……わ――」

 彼女は俺の声に反応を示し、触れ合った手を意識するように力を込めた。

「わたし、は」

 そして。

「わたしは、人間に戻りたい!!」

 増幅された感情全てを振り絞るようにルコちゃんが叫んだ正にその瞬間。

「あ……」

 彼女の腐り果てた肉体は、ものの数秒の内に髪すらも失った頭頂部から急速に甦っていき、しかし、少女の姿へと変じた。
 …………そう。同じだった。

「これは……上位少女化魔物のまま、か?」

 その変化と同時に複合発露を解いたルシネさんが首を傾げ、問い気味に呟く。
 今の彼女の姿は、複製した封印の注連縄の影響下にあった時と同じ。
 即ち灰色の髪と瞳の少女のままだった。
 一応、腕輪がなくともゾンビの如き姿にはなっていないが……。

「…………人間には戻れなかった、みたいだね」

 口惜しそうに呟くアコさん。
 どうやら想定していたパターンの内の一つ。
 別の少女化魔物への変化という結果に終わってしまったようだ。

 ……想定通りにはいかなかったか。
 少し気落ちするが、ベターな結果ではあると言える。
 とにもかくにも、今はこの結果を基に次の行動に出なければ。
 まず俺達の反応に不安そうにしているルコちゃんに説明と謝罪、説得を誠実に――。

「って、え?」
「む」
「これは……」

 そんな風に考えているさ中、彼女の身に更なる変化が生じ、俺とルシネさん、アコさんは思わず呆けた声を出してしまった。
 命属性を示す彼女の灰色の髪が根元から艶やかな黒へと染まっていき、その瞳もまた少し茶色がかった自然な色に変わっていく。
 黒髪も闇属性を示すような濃い色合いではない。
 そして……髪の色と瞳の色が異なる種族はこの世界に唯一つのみだ。

「成功、したのか……?」
「エイル! 鏡!」
「は、はい!」

 アコさんの指示を受け、エイルさんが程よい大きさの手鏡を持ってくる。
 そして、それをルコちゃんに渡すと、彼女は恐る恐る自分の姿を確認した。
 しばらく鏡を見詰める。徐々に目が見開かれていく。

「わ、わたし、元に……」

 鏡に映る少女の姿。
 それは確かに、この事件に巻き込まれる以前の彼女のものだったらしい。
 つまり――。

「人間に、戻れた……」

 その事実に、ルコちゃんは少しの間だけ声と肩を震わせながら俯く。
 それから彼女は勢いよく顔を上げると、俺へと潤んだ目を向けた。

「ありがとうございます! 救世の転生者様!」

 そして心の底からの感謝を告げ、感極まったように泣きじゃくり始める。
 感動的な光景……と言っていいはずだ。
 実際、結果は最良のものとなったようだし、俺自身も喜びと安堵も抱いている。

「ああ、うん……よかった」

 しかし、想定とは異なる過程を辿ったことに戸惑い、俺は釈然としない気持ちを抱きながら少々ぎこちない笑みを浮かべざるを得なかった。
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