召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第七章 雪にまみれて刃を研いで

ゆきのせいかつ

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『杖、遺物』

 看破でみるとシンプルな結果が表示された。
 杖。それだけだ。ただし、これは普通の杖でないことは見て取れた。尋常じゃないほど強く黄色く光っている。なぜかまぶしく感じない不思議な輝きだ。

「強く光っているな」
「ひかってるの?」

 オレの言葉に、ノアが不思議そうに質問する。

「え? ノアちゃん、この杖のことだけど……黄色く光ってるでしょ?」
「木の杖にしか見えない……」

 ノアが困ったように呟く。

「あたちにも、光ってみえないでち」

 チッキーも首を傾げている。

「俺には光って見えるぞ」
「見えるっスね」

 プレインも頷く。

「光ってはぁ、見えないわぁ」

 ロンロには光って見えない。つまり、異世界から来たオレ達にしか光って見えないようだ。理由はわからない。しかし、この杖が放つ光が普通の輝きでないことはわかる。
 せっかくなので、この杖にも物尋ねの魔法を試みる。
 触媒は1円玉。

『鍵として、鍵として、鍵として、願う、願う、願う、大切な、大切な、大切な』

 頭に老人の声が響く。
 鍵として、願う、大切な……さっぱりわからない。
 どちらかといえば、看破の方が、まだ理解可能な結果だ。
 この杖については後回しでもいいだろう。おいおい考えていくことにした。
 それから数日、あの杖のことは気がかりではあったが、平穏な日々が続く。
 魔法の常時起動についての修行はもちろん、道具類の整備や作成も欠かさない。
 後は、椅子に揺られて、音楽を聴きながらの読書。
 お茶や、コーヒー、レモネード、気分で飲み物を変えつつのんびり読書。
 サムソンは自室で研究。カガミは温室で植物栽培。
 ノアは、遊んだり勉強したりと、毎日楽しそうに動き回っている。特に、ノアにとって雪の生活は楽しいようだ。
 雪だるまを作ったり……昨日は雪うさぎを作って見せてくれた。
 力作の雪だるまと雪うさぎは、プレインと二人で氷室へと持ち込んで、氷室の住人として迎えることにしたそうだ。
 そんな平和で、皆が自由に過ごす平穏な日々だ。
 
 ある日の夕方、トッキーから連絡があった。
 雪が積もっているなか直接屋敷に戻るのは大変なので、温泉経由で戻ったほうがいいとレーハフさんに言われたそうだ。温泉までは、送ってもらえるらしい。
 そうか、明日はトッキーとピッキーが戻ってくる日か。

「どうするでちか?」
「もちろん温泉に迎えにいくよ。そうだな……せっかくだから皆で迎えにいこう」
「なんだか久しぶりに全員揃う感じっス」

 プレインの言うとおりだ。いつもと同じ10日ぶりなのに、なんだかずいぶん昔のように感じる。

「前のときは、こんなに雪が積もっていなかったからだろ」
「あのね、クローヴィスも呼んで、みんなで雪合戦しよう」

 両手を挙げてノアが提案する。そうだな。みんなで雪合戦はいいかもしれない。前回、ボコスカと集中砲火を浴びた。あのリベンジもする必要があるしな。

「いいね」

 ノアの提案を皆が笑顔でうけいれ、雪合戦をすることになった。
 その日の夜。
 外へと出る。少しばかり試したい魔法があるからだ。サムソンがドーナツを作るときに使っていた魔法。あれを雪で試す。思っていたとおりの結果だった。つまりは成功。
 雪玉を10個、一瞬で作りあげることができた。

「ふふふ」

 思わず笑みがこぼれる。これで完璧だ。
 今度の雪合戦では、魔法を駆使するつもりだ。いや、魔法だけではない、あらゆるものを駆使して戦う。
 
 そして翌日、トッキーとピッキーが返ってくる日。
 その日の朝早く、相変わらず寒く、チラチラと雪が降る中、少し雪玉を投げる練習をすることにした。
 屋敷の門から外にでて、一面雪の真っ白なところで特訓する。
 即席でつくった雪だるまに雪玉を投げる。なかなか当たらない。もう少し練習しようかと思っていたとき、バスンと雪玉が頭に当たった。
 見ると最高の笑顔でミズキがゲラゲラ笑っていた。
 あいつめ、またか。
 とりあえず距離を取る。
 すでに身にまとっている自己強化の魔法により、いつもの数倍機敏に動ける。
 ミズキが投げた雪玉を華麗にかわす。
 それから、雪玉を一つ作ってミズキへと投げる。自分自身でも驚く、流れるような動きだ。

「ノアノアにげろー!」

 オレが投げつける雪玉を飛びよけながら、笑顔のミズキが叫んだ。
 ミズキの影になっていて気がつかなかったが、ノアがすぐ後ろにいた。

『ポスッ』

 あっけに取られていたノアに雪玉が当たる。

「ノアノアの敵めっ」
「あぶっ」

 ミズキの声がして、顔面に雪玉があたる。
 容赦がない。
 雪を振り払おうと頭を振っているとポスポスと2発雪玉が追加であたる。
 カガミだ。飛翔魔法で飛んでいる。

「なんでオレばっかり」

 忌々しげに独り言を呟く。
 まぁ、いい。ちょうどいいハンデだ。
 思いっきり距離をとって大声で宣言する。

「この雑魚どもめ、まとめてかかってこい!」

 そうだ。少し早いが、魔法をフル活用した本気の雪合戦をみせてやるのだ。
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