底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂

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第6章

第3,5話(ミーツ不在話)

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「ゔゔゔ、グスグス、ミーツさあん」
「アミ、いつまで泣いてんだ!いい加減にしねえと鬱陶しいぞ!」
「シーバス、そんな言い方ってないと思うよ?ミーツくんをあんな形で失ったんだよ。
少しは妹に対して優しくしてもいいと思うんだけどさ」
「そ、そうだそうだ!兄ちゃんは悲しくはないのか!おじさんが、おじさんが。アミが泣いてばかりだから、あたしまで涙が出ちゃう」
「ほらほら、アマちゃんも泣かないで。僕も思い出したら悲しくなっちゃう。アミちゃんだけじゃなく、アマちゃんまで泣いちゃうと、この子の機嫌が悪くなっちゃう」

 ミーツを失った彼の仲間たちはヤマト到着後、カプセルに入れられ眠っている間に検査が終わり、ギルド本部の待合室でヤマトでの行動や禁止事項などの説明を受け、最後に彼の仲間たちという理由で、特別待合室で担当者が説明をするために待っている状況での彼らの会話であった。

 士郎はダンジョンで拾った子供に『アキラ』と名付けて、常に抱っこして共におり、アミはカプセルから出てからずっと泣いており、アマはアミ同様にミーツをあのような状況で失ったことで悲しんでいた。
 そんな彼女らを鬱陶しそうにシーバスが怒鳴り、それを諌めるシロヤマであった。
 そんな状況の彼らは、部屋に入って来た者によって黙ることになる。

「あらん。ミーツちゃんの仲間たちの割には強さが足りないわね。士郎ちゃん、お久~。
あたしはダンク。ミーツちゃんと途中まで一緒にいた仲間よ」
「あ!ダ、ダンクさん?どうして此処に?」

 そうダンクであった。面識があるのは士郎だけであったものの、ダンクの異様ともいえる雰囲気に圧倒されるシーバスは咄嗟に身構えて妹たちの前に出て剣を構えた。

「シーバスの馬鹿!シーバスじゃ敵わないことくらい分かるでしょ!ボクが加勢してもこの人には勝てないよ」
「あらあら、このくらいの威圧でそんなに構えちゃわなくてもいいのに、案外可愛いのね。
 あなたたちの今の実力じゃ、この国の冒険者に淘汰されちゃうわ。良いわ、時間はまだたっぷりあるし、あたしが鍛えてあげる。あの方が言うには、ミーツちゃんは生きてて、これから最低でも半年から一年は会えないらしいから」

 そうダンクが威圧を解いて言うと、息を切らして咳き込むシーバスに、思いっきり息を吸い込むシロヤマ、驚きで固まっているアマとアミ、子供を抱き締めるだけで無言の士郎であった。

「あの、ミーツさんは生きて、いるんですか?」
「ええ、あの方の言葉を信じるなら生きているそうよ。今はまだあの罠の階層で落ちた暗闇の中にいるみたいだけどね」

 アミはダンクに恐る恐る質問し、ダンクの答えに一同が驚く。

「やっぱり!ミーツさんは生きているんですね!僕はそうじゃないかと思っていたんですよ!」
「あの人はどうやったら死ぬんだよ。
 だが、俺も礼を言えずじまいなのは心残りだったから、生きてて嬉しいぜ」
「だ、だよねー。さ、流石ミーツくんだよねー」
「おじさんってば、そんな暗闇の中で何やってんだろね。でも本当に生きてて良かったよ。
ね、アミ」
「うん!うん!!私、ミーツさんに再会したら告白する!それに、ミーツさんの足でまといにならないように実力付けます。ダンクさん!私を鍛えて下さい!」
「ふふふ、元よりそのつもりよん。
 そちらの双子のお兄ちゃんのシーバスちゃんよね、お兄ちゃんの武器は剣になるのだろうけど、剣だとシオンちゃんの分野だけど、あの人はお出掛け中なのよね。
 だから、皆んな素手や鈍器での戦い方を教えるわ。ミーツちゃんったら、レベルだけ上げれば良いと思ってんだもの、今のままじゃあこの先やっていけないわ」

 ダンクの言葉に一同は驚いたものの、すぐさまシーバスが食って掛かった。

「いきなり過ぎねえか?先に自己紹介が先じゃねえか?それもせず言いたいこと言いやがって、ふざけんじゃねえぞコラ」
「あらあら、さっき自己紹介したのに聴いてなかったの?でも、まあいいわ。
 特別に許してあげる。もう一度言うけど、あたしの名はダンクでSSランクの冒険者よ。仲間兼恋人予定の人が一人いるんだけど、お出掛けしてて今は居ないの。だからまた今度紹介するわ」
「まさか、シオンさんも此処に来ているんですか!一緒に旅をしてたなんていいなあ」
「そうよ士郎ちゃん。あたしたちはミーツちゃんと共に途中まで行動を共にしてたの。
でも、腐人がたくさんいたあの国で離ればなれになっちゃったのよ」
「なるほど、つまりダンク、あんたたちと別れたお陰でミーツさんは、俺たちと出会えたというわけか。あんたのことは分かった」

 ダンクは自身の自己紹介を済ませたら、士郎が羨ましいがっている最中、シーバスがダンクとミーツが離れた経緯に納得した。

「それで元仲間であるあんたが、なんで現仲間である俺たちに関わるんだ。アンタには関係ないだろ」
「あらあら、元だなんて失礼ね!
あたしもシオンちゃんも、今もミーツちゃんの仲間のつもりよ」
「でも別れたんだろ?別に腐人がたくさん居たって、SSランクだったら問題なく対処出来たんじゃねえか?それにあの人のあの異常ともいえる強さと、あの聞いたこともないスキルがあれば難なく切り抜けられたんじゃねえか?
まあ、そのお陰で俺たちと出会って助かったんだけどよ」

 シーバスの言葉に返す言葉を失うダンクは仕方なかったのよ!と声を張り上げて彼をビンタした。

「あの時は色々としょうがなかったのよ!
何も知らないのに勝手なこと言わないでちょうだい!」
「あの~、ダンクさん。兄さまが気絶してます」
「あらあら、あれしきの張り手で気絶だなんて、シーバスちゃんって弱いのね。
 それで、鍛えるのはアミちゃんだけでいいのかしら?他に鍛えて欲しければ、今声を出しなさい」

 そうダンクは腰に手を置いて言い放った。

「あたしも!あたしも強くなりたい」
「僕もアキラのためにも強くなります」
「俺は強くなるためにミーツさんに付いて村を出て来た。だから、俺も連れて行け」
「ボクは付いて行くわけにはいかないかな。
実のところ、ボクはボクの売られたりした兄妹や友達の居所が分かったんだ。だから、しばらくの間、このパーティから離脱するよ」

 アマ、士郎、ヤスドルが手を挙げたものの、シロヤマだけが付いて行かないと言い出す。
 彼女は、かのダンジョンの罠の階層でミーツを嵌めそうになったことを喉元寸前に止め、自分の種族捜しと言って離脱を表明した。
 すぐに気絶から正気に戻ったシーバスはそれを聴いて、それなら俺も付いて行くと言い出すも、彼女によって付いてくることは却下され、待っててと言われた。
 待つついでに、ミーツ宛の手紙を自分の代わりに渡して欲しいとも言われ、彼女はマジックバックから封筒に入った手紙を彼に手渡して、彼と熱い抱擁をしたあと、一人一人に元気でねと声を掛けて、ダンクに後のことはお願いしますと頭を下げて部屋から退出した。

「シロヤマ姉ちゃんも居なくなっちゃった」
「アマ、泣かないで。私もミーツさんと再会するまで泣かないから」
「そうだぞ。なにも一生涯の別れじゃないんだ。そのうち、ひょっこり帰ってくるさ。
俺が彼女が出て行って一番悲しいんだ」
「シロヤマさんは、そんな大事なことがあるのに僕たちに付き合って残ってくれてたんですね」
「あ!そうだ。手紙だけど、勝手に見ちゃダメだからね!ミーツくんのために書いた物だから、勝手に読んだら帰ってこないから!」

 彼女は顔だけ部屋に戻って、しんみりした空気の中、それだけを言って引っ込んだ。
 シーバスはそんな彼女を追いかけるも、既に遠くにいる彼女は遠くから絶対ダメだからと言いながら、ギルド本部内にある転移陣の部屋に素早く入って行った。

「クソッ、いったい何書いたんだ。
あそこまで念を押したら気になるじゃねえか」

 シーバスは受け取った手紙を開けようとした時、ソッと背後からダンクが手紙を取り上げた。

「シーバスちゃんダメよ。あの黒エルフの子が言った通りにしないとね」
「ちょっ、返せよ!このカマ野郎!」

 シーバスの一言にカチンと来たダンクは手加減した往復ビンタを彼に与え続け、次第に顔が腫れていく彼は為す術もなく再度気絶した。
 ようやく追い付いた他の仲間たちは顔が腫れた状態で気絶しているシーバスを見て、彼の妹たちはダンクに警戒して身構えるも、シーバスが言い放ったことを彼女たちにダンクが説明したところ、一同シーバスが悪いとのことで納得した。

 それからは、担当者が遅れて現れてミーツのスキルに関しての秘密厳守の誓約書をダンクを除いた仲間全員が書くことになり、ギルド本部を後にした。
 ダンクを含めた一同は、拠点となる宿は既にダンクがギルド本部近くの場所で見つけおり、そこに移動した。
 宿の食堂は宿泊以外にも解放されていることもあって、ギルド本部に近い場所の宿だけあって、ギルド本部の職員が多く食堂に寄ることもあった。そこでまたトラブルを起こすことになるのだが、それはまた別の話である。

 ダンクが新たな仲間たちをどう鍛え、どう変わるかについては、ミーツが再会した時にでも分かることだろう。



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