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第5章
第30話
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第30話
「おじさんおじさんったら、おじさん起きてー。
お腹空いたよ~」
アマの声が聴こえ、声と共に身体を揺らされているのが分かり、目を開けようとしたとき、彼女は揺らすのを止めて俺から離れる気配を感じて車から降りていったようだ。
目を開けて窓の方に視線を向けると、眩しいくらい晴れた空が見える。
「やっぱりアミじゃないとダメみたいだよ。
ほら、おじさん中々起きないし、キスするなら今のうちだよ」
再度アマの声が外から聴こえ、車の中にアミを連れて戻ってきた。
「あー!おじさん起きたの!なんで起きてるの!まだ寝てていいのに、そしたら面白いものが見れたのに」
「ホッ、よかったです。でも少し残念のような…」
何故かアマは頰を膨らませて怒っており、アミはホッとしているようだが、少し残念そうにしている姿に、俺は首を傾げてソファから降りると、ベッドに寝ていたはずのシーバスとヤスドルの姿はなく、外から打撃音が聞こえてくるところ、彼らは俺が寝る前にもしていた組み手をしているようだ。
「あ、ミーツくん。お腹空いちゃったよ。早く約束通りの美味しい物食べさせてよ」
「ミーツさん酷いですよ!僕を女の子たちの所に追いやるなんて!あれからしつこい質問責めだったんですからね!」
「おうミーツさん、起きたか。ヤスドルミーツさんが起きたから訓練は中止だ。メシにしようぜ」
「俺はカレーが良いです」
キャンピングカーから降りて直ぐに干し肉を齧りながら、組み手を見ていたシロヤマに詰め寄られ、士郎も嫌がっていたところを無視して彼女たちと一緒にさせたことを抗議され、シーバスたちも組み手を中断させて、メシだメシだと笑顔で俺の元にやってきた。
「ふぅ、俺が起きなくてもシロヤマが齧ってる干し肉みたいに、勝手に何か食べてたらよかったのに」
「何言ってんのさ!ミーツくん約束したよね?
起きたら美味しいものを食べさせるって!
ミーツくんは約束を破るの?それだったらボクも考えがあるんだけど…」
俺がそう言うと、シロヤマが真っ先に突っかかってきたものの、彼女は食事を食べさせてくれないと考えがあると冷めた目で見つめてきた。
どんな考えがあるか気になるが、寝る前に約束したのも事実なため、仕方なくヤスドルには、おかわりを連続でされると面倒なため、彼には鍋いっぱいのカレーと同じくらいの米を出してやり、他のメンバーには寝起きとしてはどうだろうと思いつつも、こってり系の色んな種類のラーメンと米を出してやると、シロヤマを始め、俺の背後で見ていたアマとアミも目をキラキラとさせて俺の出したラーメンを見つめている。
「ミーツさん、寝起きで家系ラーメンって重いですよね。ミーツさんの魔法ですけど、何となく分かった気がします。ズバリ、創造料理魔法ですよね?」
士郎は寝起きでラーメンは重いと言いつつも、俺の魔法が創造料理と言ったものの、ここで違うとも言えなく、魔法のことは苦笑いで誤魔化して、食べていい?と質問してくるメンバーたちに、フォークとレンゲを持たせて食べさせたら、美味いと大絶賛してスープまで飲み干した状態でおかわりをしだして、シーバスは五杯、アマとシロヤマは三杯、アミと士郎は一杯でお腹いっぱいだと言って大満足した様子で地面を大の字になって寝っ転がった。
俺は寝起きでカレーやラーメンなんかを食べられる胃袋を持ってないため、味付け塩のみの握り飯を出して黙々と食べてたら、俺の食べてる握り飯が気になったのだろうシロヤマが、今お腹いっぱいだと言って倒れたのに、それが食べたいと握り飯を指差して食べかけの手に持っている握り飯を一口で食べてしまった。
「ん~、これはこれで美味しいね。
シンプルに塩味だけど、奥深い味で美味しい~」
「シロヤマ姉ちゃんズルイ!でも、お腹いっぱいで!もう食べられないから悔しー!」
「シロヤマ姉様ズルイです!私もミーツさんの食べたかったです!」
うちのパーティの女の子たちは食い意地が張っているなと思いつつも、アミが食べたいと言っている握り飯を新しく出して一個手渡したら、明らかに残念そうな顔をしてありがとうございますと言って、ハムスターのようにちびちびと食べ出した。
「ふふふ、ミーツくん、アミはミーツくんの食べかけが欲しかったんだよ」
「シロヤマ姉様、そ、そそそそんなことないです!」
何故かアミは焦っているようだが、なんで焦っているのだろうかと首を傾げた。
「俺の食いかけって、どれだけ食い意地張ってんだよ。全く、うちのパーティの女の子たちは…」
同じ握り飯でも新しい握り飯を貰うより、人が食べてる物の方が美味しそうに感じるものだ。
シロヤマはアミはそれが欲しかったのだと、教えてくれたが、やっぱりシロヤマとアマと同様にただ食い意地が張ってるだけだろう。
仕方ないなあと思いながら、アミがちびちびと食べてる握り飯を取り上げて、俺がまた一口食べた握り飯を手渡したら、真っ赤な顔をしてちょっとニヤけた顔をしたあと、走ってキャンピングカーの中に入って行った。
アミが食べてた握り飯は一口で食べてしまったら、シロヤマとアマはニヤニヤした顔で見つめてアミ味はどうだった?と意味の分からないことを聞いてきた。
「普通の握り飯だよ。アミ味って普通にアミの食べかけを食べただけだろ」
「ふふふ、それは違うよ。年頃の恋してる女の子の食べかけの食べ物は特別な味がするんだよ。
「恋って?アミは恋してるのかい?
へえ、アミは誰に恋してるんだろう。
うちのパーティならヤスドルとかかな。
男でだと、士郎は恋愛対象は男だし、シーバスは兄だし、俺はおっさんでありえないしで、考えたらヤスドルしかないね。それなら応援してあげないとね」
「ミーツくんは馬に蹴られて死ねばいいのに」
「おじさん、おじさんっておじさんなのに残念だね」
「ミーツさん、本気で言ってます?」
アミが恋してるって言うから彼女の恋してる対象を考えて言ったのに、二人の女の子と士郎に残念な子を見るかのように見られてしまった。
シーバスとヤスドルはどうなのだろうかと、二人を見たらシーバスは地面に横になったまま寝ていて、ヤスドルはまだ一人黙々と笑顔でカレーを食って、我関せずといった感じだ。
何かおかしなことでも言ったかと考えながらも、欠伸を一つしてキャンピングカーに戻り、そのまま眠ってしまった。
自然と目を覚ましたら、辺りは真っ暗になっており、明かりを付けずに手探りで外に出ると、地面が微妙に光を放っていて、そのまま地面の光に触れようとしたそのとき…。
「ミーツくん!起きなさい!もう行くよ!」
シロヤマの声が聴こえハッとしたら、目の前にシロヤマだけではなく、仲間たち全員が俺を覗き込むように横になっている俺を見ていた。
どうやらアレは夢だったようだが、何も怖いことなかったはずだが、身体中汗でびっしょり濡れていた。
窓の外を覗くと、夜はまだ明けてないものの、うっすらと明るくなり始めているところ、あれから随分と眠っていたようだ。
「ミーツくんだいぶ寝てたね。それに怖い夢見てたの?うなされてたよ」
「ミーツさんでも夢とはいえ、怖いものがあるんだな」
「きっとおじさんは、アミに言い寄られてる夢見たんだよ」
「ちょっと!アマ、私がミーツさんに言い寄ったら怖いってなによ!」
「ほらほらアマちゃんにアミちゃん、こんなところで喧嘩しないで、ミーツさんが起きたんだから行こうよ」
「早く行こう」
怖い夢でもなかったのにうなされてたってのに気になるものの、たかが夢に気になってこの先、大怪我でもしたら大変なことになってしまうため、気にしないようにしようと思い、俺のことで心配してくれている仲間たちに、何でもないよと笑顔で返して、それぞれに朝メシとして色んな具が入った握り飯を、想像魔法で出して手渡した。
握り飯を食べ終わったあと外に出て、キャンピングカーをI.Bに収納し、準備運動としてラジオ体操を始めたら、士郎に懐かしいですねと言われながらも一緒にやった。
「最後に確認するけど、ここから険しくて困難な道でダンジョンボスが弱いルートと、簡単だけどボスが強いルートのどちらかを選んでいいんだけど、パーティリーダーのミーツくんはどっちが良い?」
「俺はどちらでもいいけど、仲間たちがどちらがいいかで決めるよ」
準備運動が完了し、シロヤマが真面目な顔でこれからのルートは本当に険しくてボスが弱いルートか、強いルートかの質問をしてきたが、俺は正直本当にどちらでもよかったため、仲間たちはどちらがいいか視線を向けると、リーダーが決めてくれとシーバスを始め、皆んなが俺の決定を任せると言ったことで、当初の予定通りに険しくてボスが弱いルートにしようってことで決まった。
「分かったよ。ここからは階層としてはあまり上らないけど、厄介な敵がいる階とちょっと面倒な階層が二回続いたあと、罠が多数ある階があるから細心の注意を払って行くよ」
これから行く道は、本当に厄介な所なのだろう。いつもふざけているシロヤマが真面目な顔をして注意した。
だが今一番の問題は休憩している広場の周りを、ギガ暴食竜がウロウロして俺たちが出てくるのを待っているようだ。
パーティとしての戦闘の連携の練習が出来なかったため、ぶっつけ本番となるが、こいつでやろうと思って仲間たちに行こうと言うと、既に戦う気満々のシーバスとヤスドルを先頭にギガ暴食竜に向かっていた。
あんなに初めて見たときは震えていたシーバス兄妹も、レベルアップした今では恐れもなくギガ暴食竜に攻撃を与えている。
士郎は素早い動きで暴食竜の足元で、シーバスとヤスドルの邪魔にならない程度に動いて、暴食竜を翻弄して気を散らしている役割を持っていて、攻撃されそうになると素早く避けている。
暴食竜が士郎に気を取られると、すかさずシーバスとヤスドルも攻撃を喰らわせ、アマとアミによる魔法もうまく彼らに当たらないように暴食竜の顔や身体に当たって弱らせていく。
「ミーツくんも戦わなきゃ、このままじゃ倒せないよ!」
俺が手を出さなくても倒せると思って、傍観していたら、同じく傍観しているシロヤマに怒られた。
「俺が手を出さなくても勝てると思って、あとシロヤマも傍観してるじゃないか」
「ボクは士郎くんに素早さアップの魔法を掛けてるよ。それにシーバスとヤスドルにも魔法掛けてんだからね。あと後方にいるアマとアミを守るように周りに気を配ってんだよ!」
何もしてないと思っていたのに、意外とシロヤマは周りに気を使って役割が多いことをやっていた。 確かに彼女の言う通り、俺も参戦しないとギガ暴食竜を倒す決定打を与えられないようだ。
時間を掛ければ倒せるだろうが、常に動き回っては攻撃をしている士郎や、攻撃を防いでいるシーバスに体当たりを受け止めるヤスドルの負担が大きく、段々と辛そうにしていくのを見て、俺も動き出す。
「うん。これは俺も出ないと勝てないね」
「いいから早く行って!」
彼女の言葉と同時に飛び出して、シーバスの肩を踏み台にして跳んでギガ暴食竜の身体に降り立つと、暴食竜もやられまいと首や身体を振って更に暴れだす。
そんな暴食竜を抑えようとヤスドルが前に出てきて、暴食竜の鼻先の刃によって両脚が斬り落とされてしまった。
それに怯んだシーバスまでもが、爪によって腕と手首を斬り落とされてしまい、シロヤマの叫びのなか、士郎までもがギガ暴食竜に足で踏み潰されて、グッタリとしていて小刻みに痙攣しているなか、ギガ暴食竜の首を斬り落とした。
「ミーツくんが早く倒さないから、シーバスにヤスドルがもう戦えない身体になっちゃったじゃないか!」
彼女は俺が手脚を再生させられることを知らないからか、憎しみのこもった目を向けてきた。
「まあ、死んでなければ大丈夫だよ」
「何が大丈夫だよだ!こんなのエリクサー以外で治せるわけないじゃない!」
「ミーツさん、兄様が兄様がぁ。
お願いします!兄様を!ヤスドルさんを!士郎さんを助けて下さい」
「そこまで言わなくても助けるよ。ヤスドルはと、見た感じもう少し待ってても大丈夫そうだね。シーバスはそれ以上、無駄に血を流さないように寝そべって腕を上にあげて待ってな。
できないならシロヤマとアマとアミ、腕を上げて持ってて」
ヤスドルは斬られた脚の血を止めようと、自身が持っていた紐で脚を縛って止血しているが、シーバスは腕が腕がと叫びながら暴れているため、俺の指示も聞かずに叫び続けていたものの、吹き出す血が多過ぎて気を失った。
気を失った彼を彼女たちが寝かせて腕を持ち上げた。
「じゃあ、サクッと治しますかね」
俺はそう言うと、想像魔法でシーバスとヤスドルの両腕両脚に手首が元に戻って生える想像をした。前に同じように想像魔法使ったこともあってか、いとも簡単に彼らの失った両腕と両脚に手首が生えてきた。
ただ、シーバスは血を流し過ぎたのだろう。
腕は元に戻ったのに、ぐったりとして青ざめた顔で今にも死にそうにしている。
このままでは彼は出血多量で死んでしまうかもしれないと考え、彼の流し出た血は元に戻せないけど、俺の想像魔法で彼の体内の血を増やせるのではないかと考えて、前にやった体内の透視をして、彼の体内の流れる血が増える想像をしながら想像魔法を使う。
そうしたら、青ざめた顔も次第に元の血色のいい顔色に戻って、気を失っていた彼は目を覚ました。次にヤスドルはどうだろうと彼を見たら、ケロッとした顔で脚を元に戻してくれてありがとうと礼を言えるほどになっていた。
小刻みに痙攣していた士郎にも、回復する想像魔法をやると、頭を振ってフラフラしながらでも支えられることなく、自分で立ち上がってこちらに近付いてきた。
「ミーツくんは神さまなの?それとも異世界の聖女さまの息子?こんな失った身体の部位をいとも簡単に治せるなんて、聞いたことも見たこともないよ。 そりゃあ、ヤマトにはエリクサー以外に失った身体の部位を生やせる薬はあるけど、アレはまだヤマト以外には無いし、ヤマトでも市場には出回ってないから、高額で取引されてるし、いったいどうやったの?」
「うゔゔ、ミーツさんありがとうございます。
兄様を兄様を助けてくれて」
「うわあぁぁん、兄ちゃんが助かって良かったよ~」
「何が起こったかよく分からないけど、ミーツさんが助けたのは間違いないみたいですね。
シロヤマさんにアマちゃんとアミちゃん良かったね。ミーツさんの魔法って創造料理だけじゃないですよね。他に何を隠しているのか分かりませんけど、僕たちは仲間なんですから、そろそろ他に隠してること教えてくれてもいいんじゃないんですか?」
流石に想像魔法を駆使して使い過ぎたからか、今回シロヤマと士郎に怪しまれ、今の仲間たちにも想像魔法について言うかどうかを悩む。
「ミーツくんは、まだボクらのこと信用してないんだね。だからミーツくんが持ってる特別なスキルを隠してるんだ」
士郎の言う通り、そろそろ想像魔法について打ち明けるべきか悩んでいたら、シロヤマが信用されてないと言ったことで、アマとアミも寂しそうな表情をして、俺の顔をジッと見つめたまま黙っている。
俺のパーティの仲間として加入してもらって、日は浅いが、もうここで言うべきだろうと判断した。
「実は想像魔法というスキルを持っているんだ。
いつから無くなっているか分からないけど、前はステータス成長というスキルもあった。
それについてはレベルアップしたとき、とんでもなくステータスが上昇するってことだったんだけど、無くなったスキルについての説明はどうでもいいよね。
で、想像魔法についてだけど、俺の頭の中で想像した物を自身のMPを消費して、現実に出すことができるというものなんだ。
ただし、これも万能というものではなく、剣や服などは、素材から想像しないと出せないことが今のところ分かっている。
それともう一つ、今の俺では問題ないけど、魔力が低い時はエリクサーなど効果が高いものは作れなかった。今では多分、作ることができるだろうけど、まずエリクサーがどんなものかを知らなきゃダメだ」
俺は想像魔法についてを意を決して、仲間たちの顔を見ないように下を向いて説明したら、しばらく反応がなく、俺を化物でも見るかのような目で見ているのだろうと思って、反応がない仲間たちがどのような顔をしているのだろうかと、恐る恐る顔を上げて見てみると、皆んなポカーンと口を半開きにして固まっていたが、突然シロヤマが笑いだした。
「キャハハハハ、もうミーツくんったらそんな『俺が考えた最強魔法』みたいな説明されても困るよ。 真面目な顔で話すから危うく信じちゃうとこだったよ。で、本当はなんなの?」
「そ、そうだよな。シロヤマの言う通りだ。
いくらなんでもそんな魔法がある訳がない。
俺も危うく信じてしまうところだったぜ」
「兄ちゃん、でもおじさんがこんな嘘言うかな?」
「私もアマと同意見です。ミーツさんが、そのようなことを今私たちに言いますかね」
「ミーツさん、そのことを証明できることって何かありますか?僕も信じたいですけど、現状を考えるとどうしても信じられないことですから」
「俺はミーツさんだったら、どのようなことも信じる。父さんの兄者だからな」
シロヤマとシーバスは全く信じてないが、アマとアミに士郎は信じたいと思っているが、あまりにあり得ない魔法に困惑しているようだ。
ヤスドルは尊敬する親父の兄者となった、俺の言うことはどんなことでも信じると言うのはありがたいが、危うさを感じる。
「士郎、俺が出した料理の数々はこの世界で食べたことあるかい?それに、キャンピングカーでもそうだ。 この世界で見たことないだろう。
俺もキャンピングカーなんて、イベントの展示会場でしかまともには見たことがない」
士郎の証明して下さいとの言葉に俺は、今まで想像魔法で出した物について聞いた。
「た、確かに、僕が今までこの世界で食べた料理は海外の味気ない料理みたいなのが多かったです。では、本当にミーツさんはそんな魔法を使えるんですか?」
「士郎くん!そんなこと信じちゃダメだよ!
流石に思った物が出せるなんて、神さま以外で出来るわけないじゃない!」
士郎が信じかけたとき、シロヤマがそんな訳ないと士郎を怒鳴った。
「分かった。信じてもらえないならもう信じなくてもいい。この話はここで終わりだ。でも、俺が想像魔法について話したことは他言無用で頼む。
これのせいでどんなトラブルが発生するか考えたくもないから、もし、他の他人に言えば、話した者と相手を許さない」
「ミーツくん、そこまで言わなくてもいいんじゃないかな?そんなに『俺の考えた最強魔法』のことが知られたくないの?
もしもね、ミーツくんが本当にそんな魔法を使えるっていうならね。ボクが今から使う魔法と同じ物を使ってみてよ」
シロヤマはそう言うと、休憩広場に移動して長い詠唱を唱え出し、数十分ほど時間が経ったころに広場の外側に向かって魔法を発動させた。
その魔法は超特大の竜巻で、広場の外にいた小物の恐竜たちを巻き上げて、遠くの森に向かっていき、森の木々をも巻き上げてしまって、森の一部が竜巻によって無くなった。
「ハァハァハァ、こ、これができるなら信じてもいいよ」
「シロヤマ姉様、これと似たものを私と兄様とアマで見たことがあります。ですよね?兄様」
「あ、ああ、あのときは死ぬかと思ったな」
「あー!あのときね!沢山のゴブオークとゴブオーガが現れたときでしょ!」
シロヤマは息を切らしながらこれをできならと言ったあと、すぐにアミが同じ物を見たことがあると彼女に言うと、シーバスにアマと同意した。
シロヤマは鼻水を垂らしてマヌケな顔をして、え?といった顔で俺の顔を見た。
彼女にアレをやれと言われたからには同じ物ではつまらないと思ったものの、一つだけ出すのではなく、あのときと同じように幾つもの竜巻を出して一つに纏めようと思って、彼女が出した竜巻を想像魔法で幾つも出したあと一つに合体させて、彼女が出した魔法の竜巻が一部しか破壊出来なかった森に向かわせたら、森を丸ごと巻き上げて、左程大きな森では無さそうだったが、森が消えた。
「はははは、ボクは夢でも見てるのかな?
ちょっとシーバス、ボクの頰を抓ってくれる?
って、あ、ダメだMP不足で倒れる」
彼女は先程使った魔法によってだろうか、MPが足りないと言ってフラリと倒れそうになったところをシーバスより先に動いて支え、俺のMPを彼女に分け与えるように彼女の頭に手を置いて、MPを流し込んだら彼女の目がカッと見開いた。
「え?え?なに?大量にMPが流れてくるよ。こんなのMP回復薬飲んでもこんなに回復しないよ。
あー、もうこれは、ミーツくんを信じるしかないかもね。ミーツくん、あの魔法はね。本来なら数人で使う魔法なんだよ。それをボク一人でも出せるくらい、詠唱を改良して頑張ったんだけど、それを幾つも出して、更に大きくて威力のある物にしちゃって、しかも時間掛けずに出しちゃったから信じるしかないね」
シロヤマは先程の魔法一つで信じた。
士郎は俺がさっき言ったキャンピングカーと料理の数々で信じかけたが、まだ納得してないようだったため、他に何かないだろうかと竜巻の魔法を使っているときに考えて出したのは、シオンのブロマイドだ。ついでにシオンとダンク姐さんのフィギュアも想像魔法で出した。
「こ、これはシオンさんとダンクさんの人形!?
それにシオンさんの写真まで」
「へえ、これがミーツくんと離れ離れになってる仲間たちかぁ。どちらも格好いいね。で、士郎くんの恋敵がこっちか、なるほどなるほど。これは士郎くんに勝ち目ないね」
「ミーツさん凄いです!こんな精巧な人形見たことないです!」
「おじさん、この肖像画もすごいよ。まるでこの人が閉じ込められてるみたい」
「ほう、ミーツさんの想像魔法というのは凄いな。ミーツさん、これは人と人の関係性や性別も変えれたりできるのか?」
シーバスの質問に考えたものの、実際に変えることができた場合、大変なことになってしまうと思い、これについては出来たとしてもやらないと答えた。
そうして、俺の想像魔法については仲間だから教えたことで、絶対に他言無用ということを念を押して言ったら、仲間たち全員がもちろん言わないと言ってくれた。
なんならヤマトに無事に着いたら、誓約書を書いてもいいとシロヤマを中心に言ってくれた。
俺の運の悪い所為でか、滅多に現れないというギガ暴食竜によって仲間たちが傷つき、それを癒し、俺が仲間たちに隠していた想像魔法の説明のことを教え終わり、日が傾きかけていたことでもう一晩休むことを提案するも、俺のチート過ぎる魔法の存在の秘密を知れたことにより、仲間たちのヤル気が漲って、次の階層に行く気満々だ。
シロヤマが言うには、別にこれから次の階層に行っても問題ないが、次の階層からは時間の感覚もおかしくなるらしく、それぞれの階層での注意点はその階層ごとの入口で言うとかで、シロヤマに付いて次の階層の道のりを歩み進んで行く…。
「おじさんおじさんったら、おじさん起きてー。
お腹空いたよ~」
アマの声が聴こえ、声と共に身体を揺らされているのが分かり、目を開けようとしたとき、彼女は揺らすのを止めて俺から離れる気配を感じて車から降りていったようだ。
目を開けて窓の方に視線を向けると、眩しいくらい晴れた空が見える。
「やっぱりアミじゃないとダメみたいだよ。
ほら、おじさん中々起きないし、キスするなら今のうちだよ」
再度アマの声が外から聴こえ、車の中にアミを連れて戻ってきた。
「あー!おじさん起きたの!なんで起きてるの!まだ寝てていいのに、そしたら面白いものが見れたのに」
「ホッ、よかったです。でも少し残念のような…」
何故かアマは頰を膨らませて怒っており、アミはホッとしているようだが、少し残念そうにしている姿に、俺は首を傾げてソファから降りると、ベッドに寝ていたはずのシーバスとヤスドルの姿はなく、外から打撃音が聞こえてくるところ、彼らは俺が寝る前にもしていた組み手をしているようだ。
「あ、ミーツくん。お腹空いちゃったよ。早く約束通りの美味しい物食べさせてよ」
「ミーツさん酷いですよ!僕を女の子たちの所に追いやるなんて!あれからしつこい質問責めだったんですからね!」
「おうミーツさん、起きたか。ヤスドルミーツさんが起きたから訓練は中止だ。メシにしようぜ」
「俺はカレーが良いです」
キャンピングカーから降りて直ぐに干し肉を齧りながら、組み手を見ていたシロヤマに詰め寄られ、士郎も嫌がっていたところを無視して彼女たちと一緒にさせたことを抗議され、シーバスたちも組み手を中断させて、メシだメシだと笑顔で俺の元にやってきた。
「ふぅ、俺が起きなくてもシロヤマが齧ってる干し肉みたいに、勝手に何か食べてたらよかったのに」
「何言ってんのさ!ミーツくん約束したよね?
起きたら美味しいものを食べさせるって!
ミーツくんは約束を破るの?それだったらボクも考えがあるんだけど…」
俺がそう言うと、シロヤマが真っ先に突っかかってきたものの、彼女は食事を食べさせてくれないと考えがあると冷めた目で見つめてきた。
どんな考えがあるか気になるが、寝る前に約束したのも事実なため、仕方なくヤスドルには、おかわりを連続でされると面倒なため、彼には鍋いっぱいのカレーと同じくらいの米を出してやり、他のメンバーには寝起きとしてはどうだろうと思いつつも、こってり系の色んな種類のラーメンと米を出してやると、シロヤマを始め、俺の背後で見ていたアマとアミも目をキラキラとさせて俺の出したラーメンを見つめている。
「ミーツさん、寝起きで家系ラーメンって重いですよね。ミーツさんの魔法ですけど、何となく分かった気がします。ズバリ、創造料理魔法ですよね?」
士郎は寝起きでラーメンは重いと言いつつも、俺の魔法が創造料理と言ったものの、ここで違うとも言えなく、魔法のことは苦笑いで誤魔化して、食べていい?と質問してくるメンバーたちに、フォークとレンゲを持たせて食べさせたら、美味いと大絶賛してスープまで飲み干した状態でおかわりをしだして、シーバスは五杯、アマとシロヤマは三杯、アミと士郎は一杯でお腹いっぱいだと言って大満足した様子で地面を大の字になって寝っ転がった。
俺は寝起きでカレーやラーメンなんかを食べられる胃袋を持ってないため、味付け塩のみの握り飯を出して黙々と食べてたら、俺の食べてる握り飯が気になったのだろうシロヤマが、今お腹いっぱいだと言って倒れたのに、それが食べたいと握り飯を指差して食べかけの手に持っている握り飯を一口で食べてしまった。
「ん~、これはこれで美味しいね。
シンプルに塩味だけど、奥深い味で美味しい~」
「シロヤマ姉ちゃんズルイ!でも、お腹いっぱいで!もう食べられないから悔しー!」
「シロヤマ姉様ズルイです!私もミーツさんの食べたかったです!」
うちのパーティの女の子たちは食い意地が張っているなと思いつつも、アミが食べたいと言っている握り飯を新しく出して一個手渡したら、明らかに残念そうな顔をしてありがとうございますと言って、ハムスターのようにちびちびと食べ出した。
「ふふふ、ミーツくん、アミはミーツくんの食べかけが欲しかったんだよ」
「シロヤマ姉様、そ、そそそそんなことないです!」
何故かアミは焦っているようだが、なんで焦っているのだろうかと首を傾げた。
「俺の食いかけって、どれだけ食い意地張ってんだよ。全く、うちのパーティの女の子たちは…」
同じ握り飯でも新しい握り飯を貰うより、人が食べてる物の方が美味しそうに感じるものだ。
シロヤマはアミはそれが欲しかったのだと、教えてくれたが、やっぱりシロヤマとアマと同様にただ食い意地が張ってるだけだろう。
仕方ないなあと思いながら、アミがちびちびと食べてる握り飯を取り上げて、俺がまた一口食べた握り飯を手渡したら、真っ赤な顔をしてちょっとニヤけた顔をしたあと、走ってキャンピングカーの中に入って行った。
アミが食べてた握り飯は一口で食べてしまったら、シロヤマとアマはニヤニヤした顔で見つめてアミ味はどうだった?と意味の分からないことを聞いてきた。
「普通の握り飯だよ。アミ味って普通にアミの食べかけを食べただけだろ」
「ふふふ、それは違うよ。年頃の恋してる女の子の食べかけの食べ物は特別な味がするんだよ。
「恋って?アミは恋してるのかい?
へえ、アミは誰に恋してるんだろう。
うちのパーティならヤスドルとかかな。
男でだと、士郎は恋愛対象は男だし、シーバスは兄だし、俺はおっさんでありえないしで、考えたらヤスドルしかないね。それなら応援してあげないとね」
「ミーツくんは馬に蹴られて死ねばいいのに」
「おじさん、おじさんっておじさんなのに残念だね」
「ミーツさん、本気で言ってます?」
アミが恋してるって言うから彼女の恋してる対象を考えて言ったのに、二人の女の子と士郎に残念な子を見るかのように見られてしまった。
シーバスとヤスドルはどうなのだろうかと、二人を見たらシーバスは地面に横になったまま寝ていて、ヤスドルはまだ一人黙々と笑顔でカレーを食って、我関せずといった感じだ。
何かおかしなことでも言ったかと考えながらも、欠伸を一つしてキャンピングカーに戻り、そのまま眠ってしまった。
自然と目を覚ましたら、辺りは真っ暗になっており、明かりを付けずに手探りで外に出ると、地面が微妙に光を放っていて、そのまま地面の光に触れようとしたそのとき…。
「ミーツくん!起きなさい!もう行くよ!」
シロヤマの声が聴こえハッとしたら、目の前にシロヤマだけではなく、仲間たち全員が俺を覗き込むように横になっている俺を見ていた。
どうやらアレは夢だったようだが、何も怖いことなかったはずだが、身体中汗でびっしょり濡れていた。
窓の外を覗くと、夜はまだ明けてないものの、うっすらと明るくなり始めているところ、あれから随分と眠っていたようだ。
「ミーツくんだいぶ寝てたね。それに怖い夢見てたの?うなされてたよ」
「ミーツさんでも夢とはいえ、怖いものがあるんだな」
「きっとおじさんは、アミに言い寄られてる夢見たんだよ」
「ちょっと!アマ、私がミーツさんに言い寄ったら怖いってなによ!」
「ほらほらアマちゃんにアミちゃん、こんなところで喧嘩しないで、ミーツさんが起きたんだから行こうよ」
「早く行こう」
怖い夢でもなかったのにうなされてたってのに気になるものの、たかが夢に気になってこの先、大怪我でもしたら大変なことになってしまうため、気にしないようにしようと思い、俺のことで心配してくれている仲間たちに、何でもないよと笑顔で返して、それぞれに朝メシとして色んな具が入った握り飯を、想像魔法で出して手渡した。
握り飯を食べ終わったあと外に出て、キャンピングカーをI.Bに収納し、準備運動としてラジオ体操を始めたら、士郎に懐かしいですねと言われながらも一緒にやった。
「最後に確認するけど、ここから険しくて困難な道でダンジョンボスが弱いルートと、簡単だけどボスが強いルートのどちらかを選んでいいんだけど、パーティリーダーのミーツくんはどっちが良い?」
「俺はどちらでもいいけど、仲間たちがどちらがいいかで決めるよ」
準備運動が完了し、シロヤマが真面目な顔でこれからのルートは本当に険しくてボスが弱いルートか、強いルートかの質問をしてきたが、俺は正直本当にどちらでもよかったため、仲間たちはどちらがいいか視線を向けると、リーダーが決めてくれとシーバスを始め、皆んなが俺の決定を任せると言ったことで、当初の予定通りに険しくてボスが弱いルートにしようってことで決まった。
「分かったよ。ここからは階層としてはあまり上らないけど、厄介な敵がいる階とちょっと面倒な階層が二回続いたあと、罠が多数ある階があるから細心の注意を払って行くよ」
これから行く道は、本当に厄介な所なのだろう。いつもふざけているシロヤマが真面目な顔をして注意した。
だが今一番の問題は休憩している広場の周りを、ギガ暴食竜がウロウロして俺たちが出てくるのを待っているようだ。
パーティとしての戦闘の連携の練習が出来なかったため、ぶっつけ本番となるが、こいつでやろうと思って仲間たちに行こうと言うと、既に戦う気満々のシーバスとヤスドルを先頭にギガ暴食竜に向かっていた。
あんなに初めて見たときは震えていたシーバス兄妹も、レベルアップした今では恐れもなくギガ暴食竜に攻撃を与えている。
士郎は素早い動きで暴食竜の足元で、シーバスとヤスドルの邪魔にならない程度に動いて、暴食竜を翻弄して気を散らしている役割を持っていて、攻撃されそうになると素早く避けている。
暴食竜が士郎に気を取られると、すかさずシーバスとヤスドルも攻撃を喰らわせ、アマとアミによる魔法もうまく彼らに当たらないように暴食竜の顔や身体に当たって弱らせていく。
「ミーツくんも戦わなきゃ、このままじゃ倒せないよ!」
俺が手を出さなくても倒せると思って、傍観していたら、同じく傍観しているシロヤマに怒られた。
「俺が手を出さなくても勝てると思って、あとシロヤマも傍観してるじゃないか」
「ボクは士郎くんに素早さアップの魔法を掛けてるよ。それにシーバスとヤスドルにも魔法掛けてんだからね。あと後方にいるアマとアミを守るように周りに気を配ってんだよ!」
何もしてないと思っていたのに、意外とシロヤマは周りに気を使って役割が多いことをやっていた。 確かに彼女の言う通り、俺も参戦しないとギガ暴食竜を倒す決定打を与えられないようだ。
時間を掛ければ倒せるだろうが、常に動き回っては攻撃をしている士郎や、攻撃を防いでいるシーバスに体当たりを受け止めるヤスドルの負担が大きく、段々と辛そうにしていくのを見て、俺も動き出す。
「うん。これは俺も出ないと勝てないね」
「いいから早く行って!」
彼女の言葉と同時に飛び出して、シーバスの肩を踏み台にして跳んでギガ暴食竜の身体に降り立つと、暴食竜もやられまいと首や身体を振って更に暴れだす。
そんな暴食竜を抑えようとヤスドルが前に出てきて、暴食竜の鼻先の刃によって両脚が斬り落とされてしまった。
それに怯んだシーバスまでもが、爪によって腕と手首を斬り落とされてしまい、シロヤマの叫びのなか、士郎までもがギガ暴食竜に足で踏み潰されて、グッタリとしていて小刻みに痙攣しているなか、ギガ暴食竜の首を斬り落とした。
「ミーツくんが早く倒さないから、シーバスにヤスドルがもう戦えない身体になっちゃったじゃないか!」
彼女は俺が手脚を再生させられることを知らないからか、憎しみのこもった目を向けてきた。
「まあ、死んでなければ大丈夫だよ」
「何が大丈夫だよだ!こんなのエリクサー以外で治せるわけないじゃない!」
「ミーツさん、兄様が兄様がぁ。
お願いします!兄様を!ヤスドルさんを!士郎さんを助けて下さい」
「そこまで言わなくても助けるよ。ヤスドルはと、見た感じもう少し待ってても大丈夫そうだね。シーバスはそれ以上、無駄に血を流さないように寝そべって腕を上にあげて待ってな。
できないならシロヤマとアマとアミ、腕を上げて持ってて」
ヤスドルは斬られた脚の血を止めようと、自身が持っていた紐で脚を縛って止血しているが、シーバスは腕が腕がと叫びながら暴れているため、俺の指示も聞かずに叫び続けていたものの、吹き出す血が多過ぎて気を失った。
気を失った彼を彼女たちが寝かせて腕を持ち上げた。
「じゃあ、サクッと治しますかね」
俺はそう言うと、想像魔法でシーバスとヤスドルの両腕両脚に手首が元に戻って生える想像をした。前に同じように想像魔法使ったこともあってか、いとも簡単に彼らの失った両腕と両脚に手首が生えてきた。
ただ、シーバスは血を流し過ぎたのだろう。
腕は元に戻ったのに、ぐったりとして青ざめた顔で今にも死にそうにしている。
このままでは彼は出血多量で死んでしまうかもしれないと考え、彼の流し出た血は元に戻せないけど、俺の想像魔法で彼の体内の血を増やせるのではないかと考えて、前にやった体内の透視をして、彼の体内の流れる血が増える想像をしながら想像魔法を使う。
そうしたら、青ざめた顔も次第に元の血色のいい顔色に戻って、気を失っていた彼は目を覚ました。次にヤスドルはどうだろうと彼を見たら、ケロッとした顔で脚を元に戻してくれてありがとうと礼を言えるほどになっていた。
小刻みに痙攣していた士郎にも、回復する想像魔法をやると、頭を振ってフラフラしながらでも支えられることなく、自分で立ち上がってこちらに近付いてきた。
「ミーツくんは神さまなの?それとも異世界の聖女さまの息子?こんな失った身体の部位をいとも簡単に治せるなんて、聞いたことも見たこともないよ。 そりゃあ、ヤマトにはエリクサー以外に失った身体の部位を生やせる薬はあるけど、アレはまだヤマト以外には無いし、ヤマトでも市場には出回ってないから、高額で取引されてるし、いったいどうやったの?」
「うゔゔ、ミーツさんありがとうございます。
兄様を兄様を助けてくれて」
「うわあぁぁん、兄ちゃんが助かって良かったよ~」
「何が起こったかよく分からないけど、ミーツさんが助けたのは間違いないみたいですね。
シロヤマさんにアマちゃんとアミちゃん良かったね。ミーツさんの魔法って創造料理だけじゃないですよね。他に何を隠しているのか分かりませんけど、僕たちは仲間なんですから、そろそろ他に隠してること教えてくれてもいいんじゃないんですか?」
流石に想像魔法を駆使して使い過ぎたからか、今回シロヤマと士郎に怪しまれ、今の仲間たちにも想像魔法について言うかどうかを悩む。
「ミーツくんは、まだボクらのこと信用してないんだね。だからミーツくんが持ってる特別なスキルを隠してるんだ」
士郎の言う通り、そろそろ想像魔法について打ち明けるべきか悩んでいたら、シロヤマが信用されてないと言ったことで、アマとアミも寂しそうな表情をして、俺の顔をジッと見つめたまま黙っている。
俺のパーティの仲間として加入してもらって、日は浅いが、もうここで言うべきだろうと判断した。
「実は想像魔法というスキルを持っているんだ。
いつから無くなっているか分からないけど、前はステータス成長というスキルもあった。
それについてはレベルアップしたとき、とんでもなくステータスが上昇するってことだったんだけど、無くなったスキルについての説明はどうでもいいよね。
で、想像魔法についてだけど、俺の頭の中で想像した物を自身のMPを消費して、現実に出すことができるというものなんだ。
ただし、これも万能というものではなく、剣や服などは、素材から想像しないと出せないことが今のところ分かっている。
それともう一つ、今の俺では問題ないけど、魔力が低い時はエリクサーなど効果が高いものは作れなかった。今では多分、作ることができるだろうけど、まずエリクサーがどんなものかを知らなきゃダメだ」
俺は想像魔法についてを意を決して、仲間たちの顔を見ないように下を向いて説明したら、しばらく反応がなく、俺を化物でも見るかのような目で見ているのだろうと思って、反応がない仲間たちがどのような顔をしているのだろうかと、恐る恐る顔を上げて見てみると、皆んなポカーンと口を半開きにして固まっていたが、突然シロヤマが笑いだした。
「キャハハハハ、もうミーツくんったらそんな『俺が考えた最強魔法』みたいな説明されても困るよ。 真面目な顔で話すから危うく信じちゃうとこだったよ。で、本当はなんなの?」
「そ、そうだよな。シロヤマの言う通りだ。
いくらなんでもそんな魔法がある訳がない。
俺も危うく信じてしまうところだったぜ」
「兄ちゃん、でもおじさんがこんな嘘言うかな?」
「私もアマと同意見です。ミーツさんが、そのようなことを今私たちに言いますかね」
「ミーツさん、そのことを証明できることって何かありますか?僕も信じたいですけど、現状を考えるとどうしても信じられないことですから」
「俺はミーツさんだったら、どのようなことも信じる。父さんの兄者だからな」
シロヤマとシーバスは全く信じてないが、アマとアミに士郎は信じたいと思っているが、あまりにあり得ない魔法に困惑しているようだ。
ヤスドルは尊敬する親父の兄者となった、俺の言うことはどんなことでも信じると言うのはありがたいが、危うさを感じる。
「士郎、俺が出した料理の数々はこの世界で食べたことあるかい?それに、キャンピングカーでもそうだ。 この世界で見たことないだろう。
俺もキャンピングカーなんて、イベントの展示会場でしかまともには見たことがない」
士郎の証明して下さいとの言葉に俺は、今まで想像魔法で出した物について聞いた。
「た、確かに、僕が今までこの世界で食べた料理は海外の味気ない料理みたいなのが多かったです。では、本当にミーツさんはそんな魔法を使えるんですか?」
「士郎くん!そんなこと信じちゃダメだよ!
流石に思った物が出せるなんて、神さま以外で出来るわけないじゃない!」
士郎が信じかけたとき、シロヤマがそんな訳ないと士郎を怒鳴った。
「分かった。信じてもらえないならもう信じなくてもいい。この話はここで終わりだ。でも、俺が想像魔法について話したことは他言無用で頼む。
これのせいでどんなトラブルが発生するか考えたくもないから、もし、他の他人に言えば、話した者と相手を許さない」
「ミーツくん、そこまで言わなくてもいいんじゃないかな?そんなに『俺の考えた最強魔法』のことが知られたくないの?
もしもね、ミーツくんが本当にそんな魔法を使えるっていうならね。ボクが今から使う魔法と同じ物を使ってみてよ」
シロヤマはそう言うと、休憩広場に移動して長い詠唱を唱え出し、数十分ほど時間が経ったころに広場の外側に向かって魔法を発動させた。
その魔法は超特大の竜巻で、広場の外にいた小物の恐竜たちを巻き上げて、遠くの森に向かっていき、森の木々をも巻き上げてしまって、森の一部が竜巻によって無くなった。
「ハァハァハァ、こ、これができるなら信じてもいいよ」
「シロヤマ姉様、これと似たものを私と兄様とアマで見たことがあります。ですよね?兄様」
「あ、ああ、あのときは死ぬかと思ったな」
「あー!あのときね!沢山のゴブオークとゴブオーガが現れたときでしょ!」
シロヤマは息を切らしながらこれをできならと言ったあと、すぐにアミが同じ物を見たことがあると彼女に言うと、シーバスにアマと同意した。
シロヤマは鼻水を垂らしてマヌケな顔をして、え?といった顔で俺の顔を見た。
彼女にアレをやれと言われたからには同じ物ではつまらないと思ったものの、一つだけ出すのではなく、あのときと同じように幾つもの竜巻を出して一つに纏めようと思って、彼女が出した竜巻を想像魔法で幾つも出したあと一つに合体させて、彼女が出した魔法の竜巻が一部しか破壊出来なかった森に向かわせたら、森を丸ごと巻き上げて、左程大きな森では無さそうだったが、森が消えた。
「はははは、ボクは夢でも見てるのかな?
ちょっとシーバス、ボクの頰を抓ってくれる?
って、あ、ダメだMP不足で倒れる」
彼女は先程使った魔法によってだろうか、MPが足りないと言ってフラリと倒れそうになったところをシーバスより先に動いて支え、俺のMPを彼女に分け与えるように彼女の頭に手を置いて、MPを流し込んだら彼女の目がカッと見開いた。
「え?え?なに?大量にMPが流れてくるよ。こんなのMP回復薬飲んでもこんなに回復しないよ。
あー、もうこれは、ミーツくんを信じるしかないかもね。ミーツくん、あの魔法はね。本来なら数人で使う魔法なんだよ。それをボク一人でも出せるくらい、詠唱を改良して頑張ったんだけど、それを幾つも出して、更に大きくて威力のある物にしちゃって、しかも時間掛けずに出しちゃったから信じるしかないね」
シロヤマは先程の魔法一つで信じた。
士郎は俺がさっき言ったキャンピングカーと料理の数々で信じかけたが、まだ納得してないようだったため、他に何かないだろうかと竜巻の魔法を使っているときに考えて出したのは、シオンのブロマイドだ。ついでにシオンとダンク姐さんのフィギュアも想像魔法で出した。
「こ、これはシオンさんとダンクさんの人形!?
それにシオンさんの写真まで」
「へえ、これがミーツくんと離れ離れになってる仲間たちかぁ。どちらも格好いいね。で、士郎くんの恋敵がこっちか、なるほどなるほど。これは士郎くんに勝ち目ないね」
「ミーツさん凄いです!こんな精巧な人形見たことないです!」
「おじさん、この肖像画もすごいよ。まるでこの人が閉じ込められてるみたい」
「ほう、ミーツさんの想像魔法というのは凄いな。ミーツさん、これは人と人の関係性や性別も変えれたりできるのか?」
シーバスの質問に考えたものの、実際に変えることができた場合、大変なことになってしまうと思い、これについては出来たとしてもやらないと答えた。
そうして、俺の想像魔法については仲間だから教えたことで、絶対に他言無用ということを念を押して言ったら、仲間たち全員がもちろん言わないと言ってくれた。
なんならヤマトに無事に着いたら、誓約書を書いてもいいとシロヤマを中心に言ってくれた。
俺の運の悪い所為でか、滅多に現れないというギガ暴食竜によって仲間たちが傷つき、それを癒し、俺が仲間たちに隠していた想像魔法の説明のことを教え終わり、日が傾きかけていたことでもう一晩休むことを提案するも、俺のチート過ぎる魔法の存在の秘密を知れたことにより、仲間たちのヤル気が漲って、次の階層に行く気満々だ。
シロヤマが言うには、別にこれから次の階層に行っても問題ないが、次の階層からは時間の感覚もおかしくなるらしく、それぞれの階層での注意点はその階層ごとの入口で言うとかで、シロヤマに付いて次の階層の道のりを歩み進んで行く…。
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