底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂

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第5章

第21話

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第21話

「か、勝った。ミーツさんが勝ったぞー!」

 爆発による水蒸気が段々晴れてきたところで、俺が族長に勝ったのを発見したシーバスがそう声を張り上げた。それにより、シーバス兄妹が俺の元に駆け寄って抱きついて来て、シロヤマは後方からゆっくり歩いてきており、士郎は馬車の御者席で待機しているみたいだ。

「おじさん凄い凄~い!族長のあんな魔法に打ち勝つなんて」
「ホントです!ミーツさんがお強いのは知ってましたけど、こんなに強いなんて、ますますミーツさんのことが…」
「ちょっと~、アミ~、おじさんのことが…ってなんて~?最後のが聴.こ.え.な.い!」

 アミが最後に何かを呟いたことをアマが茶化すように言うと、アミは恥ずかしそうに手で顔を覆って馬車の方に走り去ってしまった。
 そんなアマをシーバスが拳骨して、アミに謝ってこいと言ってアマも退かせた。


「ミーツくん、お疲れ様。そしてありがとね。
族長のあの魔法を対処できるなんて、流石ボクが見込んだだけあるよ。 これから鬼人族のことはボクに任せていいから、ミーツくんは休んでなよ。休められるところは、そこで呆けてるヤスドルに案内してもらうといいよ」


 シロヤマは感謝の言葉を言ったあと、ヤスドルに頼んだよと言って、族長が飛んで行った方向に向かって行き、俺はヤスドルの案内で休憩する場所に連れてもらうと、硬い土の上にゴザが引いてある所に案内されてしまったものの、贅沢は言ってられない立場な上、昨夜は寝てなかったこともあってか、ゴザの上に寝そべると瞼が重くなって眠ってしまった。
 眠っているときでも耳だけはなんとなく機能しているみたいで、眠っている間にシロヤマが族長と俺の元に来て今後の相談をしているようだ。


「族長、外部の者でしかも人族に負けたんだから、ボクの提案する規則に変えてもらうよ」
「うむ。伝統だがそれについては仕方ない。そして族長も引退するつもりだ」
「なんでさ!族長は別に引退しなくてもいいんだよ」
「それは皆に示しがつかない。侮っていた相手、しかも人間に負けたとなれば族長は続けられんよ。次の族長はそこで寝ておる人間にやってもらうとしよう」
「それはダメだよ。ミーツくんは別に族長になりたくて戦った訳じゃないんだからさ。ミーツくんには目的地があって、そこに向かうのに偶々ここに立ち寄った程度なんだよ。だから、族長は今まで通り、族長が続ける方針で行きなよ」

 彼女がそう言うと、族長はしばらく沈黙した。

「分かった。だが、この話はこの者が起きたときに改めて話し合うとしよう。敗者は勝者の言うことは聞くものだからな。この人げ…ミーツもお前と同じ考えだとしたら、そのとき改めて言うことを聞こう」

 族長は勝った俺のことの言うことは聞くが、戦ってもいない彼女の言うことは聞かないと言うと、立ち上がってこの場を後にした。
 族長の後を追うように彼女は「同じ仲間のボクが言うんだからボクの言葉はミーツくんの言葉だよ」と言いながら遠ざかって行った。

 それからは遠くの方で騒ぐ声が聴こえるだけで、そのまま眠り続けていたら耳元で起きろー!っと大声を出されて飛び起きると、目の前に笑顔のシロヤマが立っていた。


「もう、ミーツくんはいつまで寝る気?
もう夕方だよ?あとちょっとしたらすぐ夜になっちゃうんだよ。子供たちが大人になった祝いと、族長が外部の者に負けた記念の宴が始まるのに寝てたら勿体ないよ。あと、鬼人の皆んなが怖がるといけないから、これ貸してあげるから被ってなよ」
「ですです。まだ身体が辛いなら私たちで支えますから、行きましょう」
「ちょっと!アミ~、いくらおじさんが好きだからって、あたし達だけでおじさんを支えるの無理じゃないの?」
「もう!なんでアマがそれを言うの!あ、あのミーツさん、アマが言ったのは、えと」

 満面の笑顔のシロヤマは猫耳のカチューシャを俺の頭に被せて、彼女のすぐ背後にはアマとアミがいるが、アミが俺のことを好きだとアマが言ったことでアミが怒り、アマを睨んだあと、俺に向かってなにやら弁明しようとしているようだが、なにを今更好きだということを隠そうとしているんだと思って、しどろもどろなアミの頭に手を置いて、俺もアミが好きだよと言うと、アマとシロヤマは何故か、口に手を当てて目を見開いている。

「何を驚いているんだ。仲間なんだから好きなのは当然じゃないか。もちろん、アミだけじゃなく、アマにシーバス、シロヤマに士郎も好きだよ」
「な~んだ。ミーツくんの好きはそういう意味だったんだね。でも、あんまりアンポンタンなことを言っていると愛想つかれちゃうよ」

 彼女は意味の分からないことを言って、何故かホッとしている二人を連れて出て行った。
 今度は出て行った彼女らと入れ替わりで族長が入ってきた。彼からは酒臭い匂いしかしないものの、無言で地面に胡座をかいて座り、底の浅い大きな器に幾つか腰に付けた瓢箪(ひょうたん)の中身をドボドボと注いで手渡してきた。

「え、これを飲めと?」

 意味が分からず、そう彼に尋ねたら無言で頷いた。仕方なく器を受け取って全部は無理だろうが、飲めるだけ飲もうと思って、飲んでいくと器に入っていたのは酒ではないようで、水のようだがほんのり甘い味が付いてて、飲みやすくて全部は無理だと思った並々と注がれた器全てを飲み干していた。飲み干した器を彼に返すと、今度は別の瓢箪を開けて器に注いで自身で飲み干した。


「これで俺たちは義兄弟だ。俺に勝ったお前、ミーツは義兄で負けた俺は義弟。そこで本題に入るが、兄者は何が望みだ。俺の族長引退か?それとも規則の変更か?兄者が決めてくれ」
「ちょっと待て!俺と族長が義兄弟?今のを飲んだから?何の説明も無しにこんなことしていいのか」
「む、シロヤマから既に説明はしたと聞いたが、聞いてなかったのか?聞いてなかったとしても、もう遅い。俺たちは義兄弟だ」
「そうか。ま、義兄弟になったからといって不利益があるわけじゃないし、ま、いっか。
族長はそのまま族長を続けてもらっていいよ。
規則だけ少し変えて貰えればね。現状のままだと、ヤスドルも可哀想だし、これからも心優しい若者たちが損をすると思う。でも昔からの伝統だから変えたくないって族長の気持ちも分かるけど、そろそろ族長が新しい規則を取り入れて変えても良いんじゃないかなっと俺は思うんだ。多分、この話は散々シロヤマがしたと思うけどね」


 彼は腕を組んで項垂れて、しばらく考えたものの、辺りが暗くなって彼の姿が段々と見えなくなってきた頃、突然立ち上がって自身の頰を両手でバチンと叩いて分かったと一言だけ言った。


「分かったって規則を変えることが、分かったってことで良いのかな?」
「無論だ。兄者よ、どのように変えるといいと思う?俺では何も考えが思い付かないのだ」
「うーん、そのことについてはシロヤマに聞いた方がいいんじゃないかな。俺もどうやればいいか、よく分からないからさ。あとで族長とシロヤマで話合ってよ」
「うむ、ミーツ兄者よ。俺の事は族長ではなく、今後はドズドルと呼ぶがいい」

 彼の顔が完全に見えなくなったことで、明かりを照らすライトを想像魔法で浮かさせて出したら、彼は真っ直ぐ俺を見つめていた。

「ああ、分かったよドズドル。でも、俺のことは兄者と呼ばないでくれよ。恥ずかしいし、普通にミーツでいいからさ」
「それは断る。兄者は兄者だからな。俺の元々いた兄弟の兄たちは、試練のときや、魔物との戦いに、前族長との戦いにて命を落としたのだ。だから俺には兄と呼べる者はいないのだ」
「そんな話を聴いたらダメだよとは言えなくなるじゃないか。あーもー!いいよいいよ。どうせ明日には此処を発つし、好きに呼んだらいいよ」
「うむ。それでは宴と新しい規則と若者たちの試練合格を祝おうぞ」
「じゃあ、息子のヤスドルも許してあげるってことでいいよね」
「愚息については宴の後にでも話そう」


 彼はまだ息子のことは許してないのか、宴に行こうと微笑んでいたのが、息子の話になった途端に不機嫌そうな表情になった。
 彼の地雷を踏んでしまったかと思ったものの、気持ちを切り替えて、族長の特別な席でドズドルにアルコールの度数が高い酒を飲まされながらも宴を楽しんだ。
 流石に宴のときにまで、シロヤマに酒呑むなとは言えず、ほどほどになら呑んでもいいよ。と一言添えて言ったら、鬼人たちが輪になっている所に飛び込んで行った。

 宴は夜遅くまで続き、俺と酒の飲めないアマとアミ以外の全員が酔い潰れるまで宴は続いた。
 宴はドズドルを含めた鬼人たちが酔い潰れないと終わらないことに途中から気付いて、鬼人が用意した酒以上に強い酒を、俺も想像魔法で出して振る舞った。
 俺はというと、途中から想像魔法で酒を口にした途端に、アルコール成分が蒸発するようにして、ほぼ水をひたすら飲んでいたのだ。

 皆んなを酔い潰したあと、疲れと眠気でフラフラと自分の馬車で休もうと荷台に登って横になったら、アマたちが毛皮でも敷いていたのだろうか、ふわふわで柔らかくて何も考えられず、直ぐに意識がなくなった。
 耳には何やらキャーキャー声が聴こえていたものの、考える力がなくて眠気に身を任せた。



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