周変軌道のプラネトロイド

さとう たなか

文字の大きさ
12 / 13

3−2

しおりを挟む
運転席。
暖房の音だけが車内に聞こえる。正面に見える歩道に植えられた木々も葉っぱがないから寂しいし、曇り空も相まって景色はしんみりと映った。
デパートなどのショッピング施設が並ぶ大通りは休日のせいもあって、車が渋滞していた。
信号が青に変わり止まっていた車が待ってましたと次々に動き出す。もうすぐ信号の前を通り過ぎれる、という所で信号が黄色、赤に変わり、スイの車は信号前で停止した。
長く渋滞に巻き込まれていたのか、スイは重くため息をつく。
やっとまた信号が青に変わり、スイはハンドルを回す。
向かったのは広い駐車場が併設されたこの地域の中では大きいデパート。車が止められるところが無いかとウロウロし、車を駐車させる。
車から降りたスイ。
大型チェーン店のデパートの看板を見上げ、入り口の自動ドアから漏れ出る店内BGMが耳に入りスイは肩をすくめる。
意を決してデパートの中に入ると自動ドアの入り口から家族連れや学生の若者の集団、カップルが多く行き交う。デパートの中一面クリスマス一色の様子にスイは口を尖らせ、頬を掻く。
入り口の壁に貼られていたデパートのチラシが目に入り、近づくと、クリスマス用にチラシが作られ、ケーキや、チキンの値段、おもちゃの値段が書かれていた。
「おもちゃ高っかいよねえ」と後ろから声が聞こえ、やっぱりそうだよなとスイは共感する。

「ねえ、スイ」

突然、後ろから聞こえてきた声に名前を呼ばれ、チラシを見ることに没入していたスイは我に帰り、「なんだ」とお隣さんに聞いた。
…。
…ん?
…いや、おかしい、いるはずがない、と、驚いたスイは慌てて後ろを振り返る。デパートの入り口から入ってきた家族と目が合う。その家族の顔が怪訝そうだったのにスイは眉をしかめる。

「スイ、こっち」

下から声がし、スイは顔を下に向けた。
そこに白髪の小学生くらいの子供がいた。
季節大外れの白の半ぞでTシャツ。
スイは見覚えがあった。

「お前!」

スイは慌ててしゃがみ込み、子供、いや、お隣さんを睨みつけた。

「なんでここにいるんだ!」

「ウフフ、きちゃった」

アポなしで来た彼氏彼女のように愛らしく言うお隣さん。

「いつの間に、」

「ハルちゃんの忘れ物なんてなかったの。後ろの席に首をちぎって忍ばせて置いたんだー」

「バケモンかよ、お前は」

「ちょっとー、それ宇宙人に対して失礼でしょ。頭部を変形させて人の形にしたから、少々背は縮んだけどねえ」

と、お隣さんは片手を頭の上で上下させる。

「それより君さ、なんでプレゼント買いに行くって言ってくれないの」

両手を腰に当て、ぷんすかと口を膨らませながらスイに聞くお隣さん。
聞かれたスイは分が悪そうに顔をそむけ、頬を掻いた。

「タイヤ交換しに行くって言ったろ」

口先でブツブツと言うお隣さん。

「デパートでタイヤ交換できんの?」

「うっ」とお隣さんは口を紡ぐ。

「プレゼントを買いにわざわざ街まで出向くなんて、君はほんとにハルちゃんのこと
が…」

好きなんだねとお隣さんが言いかけた途端にスイは「ああああーっ!!」と赤面させながらお隣さんの頭部めがけて手をかけようとした。

「おっと、首はぶっ飛ばすなよ。ここでやったらどうなるかな?」

すんでの所でお隣さんに脅され、スイは周りを見渡す。
苦い顔をしてこちらを見ながらデパートを出入りする客が目に入る。

「ぐぬぬ…」

周りから見たら、子供を怒鳴りつける大人である。
スイは行き場を失ったこそばゆさを閉じ込めた拳を震わせ、ゆっくりと拳をおろした。

「…家にハルを一人置いてきたのか」

冷静になったスイがお隣さんに言う。

「まさか、ちゃんと胴体は置いてきたよ。遠隔でハルちゃんを見ているから安心して」

するとハルは今首無し胴体と一緒に家にいるのかと、そう思うとスイは呆れて「あそ」と返事を返した。

「ハルちゃんのプレゼント。決めるの手伝ってあげる」

いつも来ている半袖シャツをひるがえしてお隣さんは言う。その時、半袖の下が素足だということに気づき、スイは恐る恐る聞く。

「…お前、下履いてんのか」

「え?履いてないけど」

スイは小さくなったお隣さんを担ぎ上げ、急いで子供服売り場に向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

デコボコな僕ら

天渡清華
BL
スター文具入社2年目の宮本樹は、小柄・顔に自信がない・交際経験なしでコンプレックスだらけ。高身長・イケメン・実家がセレブ(?)でその上優しい同期の大沼清文に内定式で一目惚れしたが、コンプレックスゆえに仲のいい同期以上になれずにいた。 そんな2人がグズグズしながらもくっつくまでのお話です。

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

孤独な蝶は仮面を被る

緋影 ナヅキ
BL
   とある街の山の中に建っている、小中高一貫である全寮制男子校、華織学園(かしきのがくえん)─通称:“王道学園”。  全学園生徒の憧れの的である生徒会役員は、全員容姿や頭脳が飛び抜けて良く、運動力や芸術力等の他の能力にも優れていた。また、とても個性豊かであったが、役員仲は比較的良好だった。  さて、そんな生徒会役員のうちの1人である、会計の水無月真琴。  彼は己の本質を隠しながらも、他のメンバーと各々仕事をこなし、極々平穏に、楽しく日々を過ごしていた。  あの日、例の不思議な転入生が来るまでは… ーーーーーーーーー  作者は執筆初心者なので、おかしくなったりするかもしれませんが、温かく見守って(?)くれると嬉しいです。  学生のため、ストック残量状況によっては土曜更新が出来ないことがあるかもしれません。ご了承下さい。  所々シリアス&コメディ(?)風味有り *表紙は、我が妹である あくす(Twitter名) に描いてもらった真琴です。かわいい *多少内容を修正しました。2023/07/05 *お気に入り数200突破!!有難う御座います!2023/08/25 *エブリスタでも投稿し始めました。アルファポリス先行です。2023/03/20

もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?

藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。 なんで?どうして? そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。 片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。 勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。 お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。 少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。 (R4.11.3 全体に手を入れました) 【ちょこっとネタバレ】 番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。 BL大賞期間内に番外編も完結予定です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...