上 下
203 / 314

第203話 女子バスケットボール部のIH⑧

しおりを挟む
 高校女子バスケットボールインターハイ3回戦。光野高校女子バスケットボール部の対戦相手はいよいよ強豪校の一角といえる寒山高校。自信に満ちた表情、それでいて初出場の光野相手でも真剣な態度、その全てが油断はしないと言っている。
「んん、やっぱりこのクラスになると相手がどうでも油断はしてくれないわね」
初出場の光野相手だからと緩んでくれたら初っ端だけでも楽が出来たのにと桜が苦笑する。
「3回戦。勝つつもりで行くわよ」
「いい、地力が上のチームに勝つには先取点よ」
「光野ファイ!!」
円陣を組み末成が気合を込め、桜が声をあげた。
審判の合図で両チームがコートに出てくる。一列に並びホイッスルと共に礼をしお互いに軽い握手を交わしポジションについた。
主審がボールをトスアップする。桜たち光野高校女子バスケットボール部はこのジャンプボールは確保不能と判断していた。そのため、センターサークルに末成が立つものの見せかけだけのジャンプで引きディフェンスに動く。その中で桜だけが相手ポイントガードに向かって走る。データではボール確保後このチームはポイントガードにボールを渡す確率が100パーセント。そこに相手がマークしに走るとこのポイントガードはスモールフォワードにパスを出す傾向があった。その確率83パーセント。そのため、あえて桜はスモールフォワード側を僅かに開けてポイントガードをマークに走る。
桜の動きに気付いた寒山チームポイントガードはスッとパスを出した。その先はデータ通りのスモールフォワード。当然のように桜は横っ飛びに飛びパスカットに成功する。そのままスピード重視のドリブルでゴール下に入り込みレイアップシュートをというところで、さすがは強豪校の一角寒山高校、桜のシュートをブロックに入った。桜もそれに対応し右手で上げていたボールを左手に持ち替えブロックを躱しシュートを放つ。バックボードに一度当たったボールが”パサリ”ゴールに吸い込まれた。
先制点を挙げ味方コートに走る桜。
「Give me Five!」
「Year!!」
いつも通りの動きでハイタッチを交わしチームメンバーを鼓舞する。
先取点を取れたことでメンバーの緊張もほぐれる。
「マーク確認!ディフェンス1本」

事前の検討で相手の動き癖を把握している光野メンバーは地力が上の相手に食らいつき簡単には抜かせない。パスカットを成功させ、速攻を決める。桜もインサイドにアウトサイドに八面六臂の活躍をする。それでも
ファーストクォーター22対23、セカンドクオーター42対47と抵抗しつつもジリジリと離される。
ハーフタイム、さすがにやや疲れの見える桜に末成が声を掛けた。
「桜、大丈夫?」
「まだまだ、いけるわよ。得点だってまだ5点差。スリーポイント2回で逆転できる程度よ」
折れない桜にチームメンバーもまだ気炎を上げる。
「そうよね、私達がんばれてるよね」
「充分にチャンスあるって」
愛翔の差し入れたスポーツドリンクを口にしながらやる気をみせている。

「あの光野の5番、なんで光野なんかにいるのよ。あんな無名校にいるような選手じゃないわ」
「光野の5番、どこかで見たような気もするのよね。なんて名前だっけ」
「えーと、華押桜ね。華押?私もどこかで聞いた気が……」
「そうよ、華押桜、中学時代全国常連だった。中学時代もあのこやりたい放題だったわ。なんで光野なんかに」
寒山高校のベンチが騒がしくなっている。
「とにかく光野では、あの5番がキーパーソンなのは間違いないわ。他のメンバーも悪くは無いけど感じとしてこちらが上よ。あの5番さえ抑えれば……」
「あと、あの子のスリーは気をつけて、フェイドアウェイで絶妙にバスカン狙ってくるわ」
結局寒山高校はハーフタイムを桜対策で終わっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

本の虫令嬢は幼馴染に夢中な婚約者に愛想を尽かす

初瀬 叶
恋愛
『本の虫令嬢』 こんな通り名がつく様になったのは、いつの頃からだろうか?……もう随分前の事で忘れた。 私、マーガレット・ロビーには婚約者が居る。幼い頃に決められた婚約者、彼の名前はフェリックス・ハウエル侯爵令息。彼は私より二つ歳上の十九歳。いや、もうすぐ二十歳か。まだ新人だが、近衛騎士として王宮で働いている。 私は彼との初めての顔合せの時を思い出していた。あれはもう十年前だ。 『お前がマーガレットか。僕の名はフェリックスだ。僕は侯爵の息子、お前は伯爵の娘だから『フェリックス様』と呼ぶように」 十歳のフェリックス様から高圧的にそう言われた。まだ七つの私はなんだか威張った男の子だな……と思ったが『わかりました。フェリックス様』と素直に返事をした。 そして続けて、 『僕は将来立派な近衛騎士になって、ステファニーを守る。これは約束なんだ。だからお前よりステファニーを優先する事があっても文句を言うな』 挨拶もそこそこに彼の口から飛び出したのはこんな言葉だった。 ※中世ヨーロッパ風のお話ですが私の頭の中の異世界のお話です ※史実には則っておりませんのでご了承下さい ※相変わらずのゆるふわ設定です ※第26話でステファニーの事をスカーレットと書き間違えておりました。訂正しましたが、混乱させてしまって申し訳ありません

望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした

結城芙由奈 
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】 男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。 少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。 けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。 少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。 それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。 その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。 そこには残酷な現実が待っていた―― *他サイトでも投稿中

【完結済】病弱な姉に婚約者を寝取られたので、我慢するのをやめる事にしました。

夜乃トバリ
恋愛
 シシュリカ・レーンには姉がいる。儚げで美しい姉――病弱で、家族に愛される姉、使用人に慕われる聖女のような姉がいる――。    優しい優しいエウリカは、私が家族に可愛がられそうになるとすぐに体調を崩す。  今までは、気のせいだと思っていた。あんな場面を見るまでは……。      ※他の作品と書き方が違います※  『メリヌの結末』と言う、おまけの話(補足)を追加しました。この後、当日中に『レウリオ』を投稿予定です。一時的に完結から外れますが、本日中に完結設定に戻します。

【完結】転生したら侯爵令嬢だった~メイベル・ラッシュはかたじけない~

おてんば松尾
恋愛
侯爵令嬢のメイベル・ラッシュは、跡継ぎとして幼少期から厳しい教育を受けて育てられた。 婚約者のレイン・ウィスパーは伯爵家の次男騎士科にいる同級生だ。見目麗しく、学業の成績も良いことから、メイベルの婚約者となる。 しかし、妹のサーシャとレインは互いに愛し合っているようだった。 二人が会っているところを何度もメイベルは見かけていた。 彼は婚約者として自分を大切にしてくれているが、それ以上に妹との仲が良い。 恋人同士のように振舞う彼らとの関係にメイベルは悩まされていた。 ある日、メイベルは窓から落ちる事故に遭い、自分の中の過去の記憶がよみがえった。 それは、この世界ではない別の世界に生きていた時の記憶だった。

怒れるおせっかい奥様

asamurasaki
恋愛
ベレッタ・サウスカールトンは出産時に前世の記憶を思い出した。 可愛い男の子を産んだその瞬間にベレッタは前世の記憶が怒涛のことく甦った。 日本人ので三人の子持ちで孫もいた60代女性だった記憶だ。 そして今までのベレッタの人生も一緒に思い出した。 コローラル子爵家第一女として生まれたけど、実の母はベレッタが4歳の時に急な病で亡くなった。 そして母の喪が明けてすぐに父が愛人とその子を連れて帰ってきた。 それからベレッタは継母と同い年の義妹に虐げられてきた。 父も一緒になって虐げてくるクズ。 そしてベレッタは18歳でこの国の貴族なら通うことが義務付けられてるアカデミーを卒業してすぐに父の持ってきた縁談で結婚して厄介払いされた。 相手はフィンレル・サウスカールトン侯爵22歳。 子爵令嬢か侯爵と結婚なんて…恵まれているはずがない! あのクズが持ってきた縁談だ、資金援助を条件に訳あり侯爵に嫁がされた。 そのベレッタは結婚してからも侯爵家で夫には見向きもされず、使用人には冷遇されている。 白い結婚でなかったのは侯爵がどうしても後継ぎを必要としていたからだ。 良かったのか悪かったのか、初夜のたったの一度でベレッタは妊娠して子を生んだ。 前世60代だった私が転生して19歳の少女になった訳よね? ゲームの世界に転生ってやつかしら?でも私の20代後半の娘は恋愛ゲームやそういう異世界転生とかの小説が好きで私によく話していたけど、私はあまり知らないから娘が話してたことしかわからないから、当然どこの世界なのかわからないのよ。 どうして転生したのが私だったのかしら? でもそんなこと言ってる場合じゃないわ! あの私に無関心な夫とよく似ている息子とはいえ、私がお腹を痛めて生んだ愛しい我が子よ! 子供がいないなら離縁して平民になり生きていってもいいけど、子供がいるなら話は別。 私は自分の息子の為、そして私の為に離縁などしないわ! 無関心夫なんて宛にせず私が息子を立派な侯爵になるようにしてみせるわ! 前世60代女性だった孫にばぁばと言われていたベレッタが立ち上がる! 無関心夫の愛なんて求めてないけど夫にも事情があり夫にはガツンガツン言葉で責めて凹ませますが、夫へのざまあはありません。 他の人たちのざまあはアリ。 ユルユル設定です。 ご了承下さい。

【完結】大好きな貴方、婚約を解消しましょう

凛蓮月
恋愛
大好きな貴方、婚約を解消しましょう。 私は、恋に夢中で何も見えていなかった。 だから、貴方に手を振り払われるまで、嫌われていることさえ気付か なかったの。 ※この作品は「小説家になろう」内の「名も無き恋の物語【短編集】」「君と甘い一日を」より抜粋したものです。 2022/9/5 隣国の王太子の話【王太子は、婚約者の愛を得られるか】完結しました。 お見かけの際はよろしくお願いしますm(_ _ )m

欠陥姫の嫁入り~花嫁候補と言う名の人質だけど結構楽しく暮らしています~

バナナマヨネーズ
恋愛
メローズ王国の姫として生まれたミリアリアだったが、国王がメイドに手を出した末に誕生したこともあり、冷遇されて育った。そんなある時、テンペランス帝国から花嫁候補として王家の娘を差し出すように要求されたのだ。弱小国家であるメローズ王国が、大陸一の国力を持つテンペランス帝国に逆らえる訳もなく、国王は娘を差し出すことを決めた。 しかし、テンペランス帝国の皇帝は、銀狼と恐れられる存在だった。そんな恐ろしい男の元に可愛い娘を差し出すことに抵抗があったメローズ王国は、何かあったときの予備として手元に置いていたミリアリアを差し出すことにしたのだ。 ミリアリアは、テンペランス帝国で花嫁候補の一人として暮らすことに中、一人の騎士と出会うのだった。 これは、残酷な運命に翻弄されるミリアリアが幸せを掴むまでの物語。 本編74話 番外編15話 ※番外編は、『ジークフリートとシューニャ』以外ノリと思い付きで書いているところがあるので時系列がバラバラになっています。

誰の子か分からない子を妊娠したのは私だと義妹に押し付けられた~入替義姉妹~

富士とまと
恋愛
子爵家には二人の娘がいる。 一人は天使のような妹。 もう一人は悪女の姉。 本当は、二人とも義妹だ。 義妹が、私に変装して夜会に出ては男を捕まえる。 私は社交の場に出ることはない。父に疎まれ使用人として扱われているから。 ある時、義妹の妊娠が発覚する。 義妹が領地で出産している間、今度は私が義妹のフリをして舞踏会へ行くことに……。そこで出会ったのは ……。 ハッピーエンド!

処理中です...