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四章 リタイの町
第六十四話・一番安全で安い宿屋
しおりを挟む「いい事!良く聞きなさい、レンヤ!あたしがあんたの側にいる限り、
今後そんなハレンチな場所に行くのは絶対に禁止だから!いいわねっ!」
「ええぇぇぇ――――――っ!?」
「ん......何?もしかして、何か不満でもあるの?あるんだったら、
聞くけど?」
レンヤの不満に対し、ルコールが威圧感タップリのニコニコ笑顔で
そう言い放つと、両手の指をワキワキと動かして何かを握り潰す
ポーズをして見せる。
それを見て、
「はひぃぃぃぃ!?イ、イヤだな...ふ、不満なんてあるわけがないじゃ
ないですかっ!あは...あははは♪」
先程ルコールによって食らわされた、クロー攻撃による恐怖と痛みを
思い出したレンヤは、ニガ笑いをこぼしながら、ルコールへの不満を
即座に心の奥へと引っ込めた。
ぐぬぬぬ...おのれぇぇい!
なにが...「ハレンチな場所にいくのは絶対に禁止だから!」...だぁっ!
齢、うん百歳のババアの癖に、カマトトぶりやがってぇぇぇぇぇっ!
「......ん?その表情...やっぱ、あたしに何か言いたい事があるんじゃないの?」
「はうぅぅっ!?も、文句なんてありませんってば!ルコールさんの気のせい、
気のせいっ!あははは♪」
「そう?だったら、いいんだけど?」
ふうっ!
あぶねぇ、あぶねえっ!
流石はドラゴンだな。
何て直感力の高さだよ。
やれやれ...こいつの前では、迂闊な事も考えられないようだ。
しょうがない。これ以上足掻いても、あいつのクロー攻撃が飛んで
くるだけだろうし、今回はギルマスの隠れ家は諦めるとするか。
そんじゃ、そういう事で......
「......なぁ、ミュミュ。この辺にさ、一番安くて、尚且つ安全に
泊まれる宿屋ってないかな?」
ルコールからまたクロー攻撃を食らいたくなかった俺は、取り敢えず
ギルマスの申し出を無念だが諦める事とし、今夜泊まる宿屋の情報を
ミュミュに訊ねる。
「えっと、一番安くて安全に泊まれる宿屋...ですか?それでしたら、
レンヤ様!我がギルド御用達の宿屋を是非、御利用下さいませっ!」
「ギルド御用達の宿屋?」
「はい!そこの壁に貼ってある紙に、今申し上げた宿屋の場所が
記載されてありますので、ご覧になられて下さい!」
ミュミュがニコリと微笑み俺にそう伝えると、俺の少し横の壁の
中央に貼ってある、一枚の紙へ指を差した。
「あ、これがそうだね?どれどれ......」
うむ、宿屋の名前は『冒険者の憩い』で宿屋の値段は一泊、
銀貨が三枚か。
で...一食付くごとに銅貨がプラス三枚で、三食なら銀貨が
プラス一枚か。
「うん、うん。値段に文句はないね。でも肝心の中身...安全は
どうなんだろう?」
「そこも心配無用だ、レンヤ。ハッキリ言って、そんじょそこいらの
宿屋よりもずっとリッパで、かつ安全も文句無しの良い宿屋だぜ!」
値段が安いのでレンヤが宿屋の安全性を疑っていると、ギルマスが
胸をドンと叩き、ギルド御用達の宿屋をドヤ顔で誉めちぎる。
「ふ~ん。このおっさんの評価はともかく、ミュミュが薦めるんなら、
まず間違いはなさそうだね!」
「うぐぐぅぅ...こ、この娘、レンヤと一緒で中々いい性格をして
いやがるな!」
あっけらかんとした態度で、ギルマスを軽くディスッてくるルコールに、
悔しさを滲ませるギルマスがぼやきを口からこぼす。
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