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三章 おっさん勇者の初めての人命救助
第二十四話・盗賊が馬車を襲う理由
しおりを挟む――レンヤが盗賊退治を決めたその頃。
「あ、貴方達は何なんですかっ!私達をフォーラム帝国の王族の者と
知ってこんな狼藉を働いているのですかっ!」
綺麗な装飾に身を包まれた貴族と見られる女性が、恐怖に脅えながらも
盗賊へと叫声を上げてその行為を非難する。
がしかし、
「ぐへへへ...なぁにをほざくかと思えば...そんなのはよぉ、この馬車の
立派な紋章を見れば、一目瞭然だろうがぁっ!」
強気な貴族の女性の態度を嘲笑うかの様に、盗賊が下卑たガラ声で
馬車の紋章をバンバンと叩く。
「な、なら、貴方達はそれを知っても尚、このような愚行を行うと
いうのですか!」
自分の身柄も素性も知って全く動じない盗賊達に、流石に貴族の女性も
動揺を見せてしまう。
「知っても何も、貴様らがフォーラム帝国の王族だと知って、ここで待ち
構えて襲っているんでなっ!」
「な!し、知っていた...ですって!?そ、それじゃ貴方達は、もしかして
義兄様...ヴィレン義兄様の命令でこのような事を!?」
元々自分達の事を知って襲ったと言ってくる盗賊に、貴族の女性が身に
覚えのあるひとつの仮定を想像してそれを口にする。
「ぐふふふ...さぁて、それはどうだったかな?見ての通り、俺達みたいな
下賎な輩は、そんな事は直ぐに忘れちまうからなぁ~!」
盗賊がワザとらしい声と行動をして、貴族の女性を小馬鹿してニヤニヤ
してくる。
「それに知らない方が幸せって事もあるぜ。もしそれを知ってしまったら、
お前ら死んでも死にきれねぇかもしれねぇぜぇ。おっと、いかんいかん。
少し喋りが過ぎたようだな、カカカ!」
「くぅ、はやり...そうなのですね......!」
苛立つ程にニヤニヤ、ニヤニヤしてくる盗賊達の言動を見て、貴族の女性が
ある程度の確信を得る。
しかし参りましたね...まさかこのタイミングで、ヴィレン義兄様が動くとは...
今回の行事にはギガン城が一枚噛んでいますので、安堵しておりましたのに、
スッカリ油断してしまいましたわ。
しかしここで私達が行方不明にでもなったと知れば、ギガン城の人達も一番
最初にヴィレン義兄様を疑うでしょうに。
ヴィレン義兄様には王家の調査力をくぐり抜けられる、何かがあるという事で
しょうか?
「おいおい、何をボーッとしているんだ、キサリ様?まさか今の状況が夢か
幻かと思っているんじゃねぇだろうなぁ?まぁ気持ちはわかるがよ、現実を
直視するんだなっ!」
考え事をしている貴族の女性...キサリの頬を盗賊が持っているナイフで
ペチペチと叩き、その考え事から現実に引き戻す。
「なぁ~リーダーよぉ。本当にこのまま、こいつらを消しちまうのか?
こんな上玉...消すには、ちと勿体ないと思うんだが?」
「俺だってお前と同じ気持ちだ。こんな上等品、味わうか、奴隷として
売って儲けたい所だ!だがそれをやると、俺達の方が消されてしまう!」
「ああ...そうだったな。クソッ!悔しいが、ここは我慢するか......」
盗賊達はこの二人の女性を消すのは、勿体ないと考えはするものの、
やはり自分達の命がズット大事なので、ここはグッと我慢するのだった。
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