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新たなる始まり
第282話-探すべき道-
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「ユリィ、貴方には悪いけどフランソワの言う通りだと思う」
「それでも実際に魔法を使うことでの影響が出ていると聞きます。それなら少しでもそれを減らすための行動を起こすべきじゃないですか!」
ユリィはこの状況でも引かなかった。味方として呼んだつもりの私が相手側についても。
「そうね。でもそれは貴方個人が努力する事でもないと思うの。然るべき組織が、集団でやるべき事じゃないかしら。もちろんその組織を貴方が立ち上げるならそれでもいい。そんな組織があるなら貴方がそこに賛同して、参加するのはさっきも言ったけど止めないわ」
フランソワは諭すような言い方を選んだ。否定するだけでなく、どうするべきかをこの場で考えてユリィへ向けて言った。
否定だけなら簡単だ。ただ、それでは意味がない。話は衝突して終わらない。
だからフランソワはこんな言い方をしたのかも知れない。
歳は私と変わらないはずなのに手慣れているのは領主としての経験か。
ユリィはフランソワに対して何かを言おうとして、飲み込んだように見えた。
「貴方が私を頼ってくれたのは嬉しい。だけど、そのために領民の今の豊かな生活を奪うことは出来ない。分かって欲しい」
「やっぱり魔法は生活の根幹になってるの?」
私はこの世界をまだ知らない。歩いているだけでは特に感じなかったけど、そこまで魔法は根付いているのか。
「勿論。火を起こすのも一瞬で出来る。水だってそう。使い方さえ間違わなければ便利なものよ」
そう言ってフランソワは人差し指に火を灯して見せてくれた。
初めてみた魔法の姿に私は食いつくように見入った。
「これが魔法か……すご……」
もっとこう気の利いた言葉があったかも知れないけど、今の私にはこんな簡単な言葉しか出てこなかった。
「初めて見たの?」
「そうなの。だからなんて言うんだろう。感動しちゃった」
「そうよね私もあの日はびっくりして混乱してた。私だけじゃない、この世界に生きるみんなそうだと思う」
ユリィから聞いていた魔法が生まれた日、いや魔法を思い出した日。
本来知っていたはずの魔法を突然皆んなが思い出したらしい。その感覚がどんなものなのかは私には理解出来ないけど、混乱は誰しもがするだろう。
「最初はびっくりしたけど、この便利さは知ってしまったら手放せない」
恐らく私もそうだ。仮に元の世界で電気を使わないなら、石油を使わないならとなると我慢出来ないだろう。
「そうよね。便利さは捨てられない」
ユリィは今どんな顔をしているだろうか。下を俯いているから見えない、だけど少なくとも笑ってはいないはずだ。
唇を噛み締めているかも知れない。行き場のない怒りを溜め込んだ苦悶の表情かも知れない。
「だけど、確かにユリィの言い分も一理あるのよね」
ユリィには感謝してるここにまた連れてきた事。私を頼ってくれた事。だから……私はユリィの味方でもある事を選んだ。
「それでも実際に魔法を使うことでの影響が出ていると聞きます。それなら少しでもそれを減らすための行動を起こすべきじゃないですか!」
ユリィはこの状況でも引かなかった。味方として呼んだつもりの私が相手側についても。
「そうね。でもそれは貴方個人が努力する事でもないと思うの。然るべき組織が、集団でやるべき事じゃないかしら。もちろんその組織を貴方が立ち上げるならそれでもいい。そんな組織があるなら貴方がそこに賛同して、参加するのはさっきも言ったけど止めないわ」
フランソワは諭すような言い方を選んだ。否定するだけでなく、どうするべきかをこの場で考えてユリィへ向けて言った。
否定だけなら簡単だ。ただ、それでは意味がない。話は衝突して終わらない。
だからフランソワはこんな言い方をしたのかも知れない。
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「やっぱり魔法は生活の根幹になってるの?」
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「勿論。火を起こすのも一瞬で出来る。水だってそう。使い方さえ間違わなければ便利なものよ」
そう言ってフランソワは人差し指に火を灯して見せてくれた。
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「これが魔法か……すご……」
もっとこう気の利いた言葉があったかも知れないけど、今の私にはこんな簡単な言葉しか出てこなかった。
「初めて見たの?」
「そうなの。だからなんて言うんだろう。感動しちゃった」
「そうよね私もあの日はびっくりして混乱してた。私だけじゃない、この世界に生きるみんなそうだと思う」
ユリィから聞いていた魔法が生まれた日、いや魔法を思い出した日。
本来知っていたはずの魔法を突然皆んなが思い出したらしい。その感覚がどんなものなのかは私には理解出来ないけど、混乱は誰しもがするだろう。
「最初はびっくりしたけど、この便利さは知ってしまったら手放せない」
恐らく私もそうだ。仮に元の世界で電気を使わないなら、石油を使わないならとなると我慢出来ないだろう。
「そうよね。便利さは捨てられない」
ユリィは今どんな顔をしているだろうか。下を俯いているから見えない、だけど少なくとも笑ってはいないはずだ。
唇を噛み締めているかも知れない。行き場のない怒りを溜め込んだ苦悶の表情かも知れない。
「だけど、確かにユリィの言い分も一理あるのよね」
ユリィには感謝してるここにまた連れてきた事。私を頼ってくれた事。だから……私はユリィの味方でもある事を選んだ。
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